第18話 幸運にも道中でいいお肉が手に入りました、ハイ。
前回のあらすじ:この国の大都会は物価が高かった、、、。
クルンの街を出て、先程とは反対方向を目指す。もちろん、私は把握出来ていないからマーブル達の案内に従っているだけですが、何か?
ケンプファーの4人といい、ケントさんといい、向かう先のハンバークは寒村とのことだったけど、どれだけ寒村なのだろうか? 港町? なのだから、工夫次第では超大都市に変貌する可能性だってあるよね? 私が以前いた世界では、東京しかり横浜しかり、といったところかな。
そんなことを思いつつ、マーブル達のじゃれ合いとモフプヨに癒やされつつ進んでいたが、警戒で気配探知をかけるのを忘れずにいたこともあり、少人数がせわしなく動いている気配を感じた。マーブルが空を見ていたので、ほぼ間違いなく空からの魔物の襲撃に慌てふためいている感じだろうか。
「空からの襲撃か、空からだと鳥系の魔物かな?」
「ミャッ?」「鳥肉?」「おにくー?」
鳥という単語に即座に反応する3人。可愛いからいいんだけど、君達肉という言葉に反応し過ぎ。しかも、私、肉という言葉一切出してないんだけど、、、。とは言うものの、3人がやる気満々なので、水を差すのもどうかと思いつつも、自分自身でも新たな肉の出会いに期待している感は否めない。
「では皆さん。肉狩、いや、救援に向かうとしましょう!」
「ミャッ!」「了解です!」「おにくー!」
3人は即座に敬礼して戦闘準備完了。あ、ライムさん、一応戦闘になるのですから、おにく、ではなく違う言葉でお願いしたいのですが、、、。
と私達は暢気に戦闘現場へと移動しているわけですが、襲われている方はたまったものじゃないでしょう。動き回っている人数だけど、減ってはいないものの動き自体は鈍くなってきている感じか。ということは、強い魔物である可能性は高い。少し急ぐとしますか。
水術で足下と接地面を凍らせる感じを作り出す、いわゆる加速移動を使用してできるだけ速く移動した。戦闘現場が視界に入ったので確認してみると、上空にいる魔物は少し見慣れたものであったことに少し残念な気持ちを抱いたけれども、フロストの町で倒したものは絶品だったことを思い出し、食えるか食えないかの鑑定だけしておく。頼む、ここでも美味い食材であってくれ!!
アマさんにすがりながら鑑定をしてみると、やはり結果は倒したことのある魔物だった。ワイバーンというやつである。肉は、と、よし! こっちでも上質な肉なんだな! これは気合を入れないとな。数は、と、5体、ね。
移動をしながら3人に今回の戦術を伝える。
「3人とも、今回の肉、いや、相手はワイバーンです。あ、ライム、嬉しいのはわかるけど、跳びはねないで、頭にズシンとくるから、、、。で、今回の作戦なんですが、少し試したいこともありますので、マーブルは2体を倒してください。ジェミニは私が撃ち落とした肉にトドメを刺す役割です。ライムは、襲われて怪我をした人達の治療です。とはいえ、一応相手に討伐の許可をもらってから戦闘開始です。」
「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」
肩に乗った状態だったので、姿こそ見えなかったけど、前足が動いたのは感じたのでしっかり敬礼で応えてくれたのだろう。見たかったけど、見えないものは仕方がない。
あっという間に現場に到着したので、一応許可を求める。
「大丈夫ですか? よろしければ手助けしますが?」
「済まない、助かる、って、君達逃げなさい! ここは俺たちが食い止めるから!」
ありゃ、そういえば、私通常の服だし、お伴は猫とウサギとスライムだもんな。そりゃ、そう返事されるよな。まあ、いい。倒す許可は得られた。それに、自分たちが危ういにもかかわらず、こちらに気を遣う人達、、、。助けるしかないでしょう!
「まあまあ、大丈夫ですから。では、マーブル、ジェミニ、ライム。作戦開始と行きましょう!」
その合図にライムが飛び出した。マーブルとジェミニは待機状態である、といってもマーブルは魔法を繰り出すだけだからね。ジェミニも私が撃ち落とすのを今や遅しと待ち構えている状態である。
ライムは一番ダメージを負っているであろう鎧姿の格好をした人の元へと向かっていき、丁度、ワイバーンがトドメを刺そうと突進したところを体当たりで迎撃。吹き飛んだところをマーブルが放った風魔法で首を刎ねて一丁上がり。お見事!! ライムはワイバーンがどうなったかを気にすることなく鎧姿の人を治療している。おっと見とれている場面ではないか、私もやるとしますかね。
私はといえば、水術で氷の輪っかを作り上げ、それをワイバーンめがけて投げつけた。狙いは翼である。咄嗟に思いついたものだから、いきなり首を狙ってもうまく投げられない可能性があるので、当たる面積が大きい翼を狙うことにしたのだ。今回は確実に翼を切り裂きたいので、巨大種のドラゴンでも通用する位の鋭いものにしてある。その分デカいから速度が犠牲になってはいるけど、ワイバーン程度なら大丈夫だろう。今回はこれが主力武器になりそうかな。
最初に作って投げた2つは、狙い通りにそれぞれ2体のワイバーンの翼を根元から切断し、翼を切られたワイバーン達は地面に落ちた。ジェミニが私の肩から飛び出して、落ちたワイバーンの首ををアッサリと切断する。マーブルも丁度2体目の首を刎ねて残るは1体のみとなった。
1体となったワイバーンだけど、力の差を感じて逃げだそうとしたけど、もちろん逃がすわけがない。こんな上物を逃がすほど私は人間ができていないのだ。先程の投擲でどの位の鋭さや重さが必要か少し分かってきたので、先程の半分以下の重さの輪っかを作り投げつけると、予定通りに切断できたので、ジェミニが向かって行き、首を切断して戦闘完了。やはり戦闘経験って大事だよね。
襲われた人達で、意識がある者達は、突然現れたスライムに最初は驚いたけど、ライムが治療してくれていることが分かると、警戒することなくライムの回復魔法を受け入れていた。マーブルとジェミニは、倒したワイバーンを私のところに次々に運んでくれていたので、来る度にナデナデしてはマーブル達を労った。いや、この場合労われているのは私の方かもしれないけと、一応そういうことにしておいて。
倒したワイバーンをしっかりと回収し、ライムも治療が終わったのであろうか、私に飛びついて来たので、しっかりとキャッチしておにぎりの刑に処してあげると、ライムも嬉しそうに「ピー!」と言って答える。マーブルとジェミニも負けじと飛びついて来たけど、ライムをおにぎり状態にしている手を放さなかったので、両腕の輪っかの中にスッポリ入る感じになった。これもまた至福なり、、、。
襲われていた一行は、この遣り取りに唖然としていたが、先程ワイバーンに襲われたショックからは落ち着いてきたみたいなので、こちらから話しかけることにした。
「みなさん、大丈夫ですか? 一応回復魔法はかけておいたのですが。」
「危ないところを助けて頂き感謝する。貴殿達を見くびっていたことをお詫びする。」
「いやいや、こんな軽装の上に、お伴が猫とウサギとスライムでは、そう考えるのが当然でしょう。無事なようでホッとしました。」
「お気遣い済まない。おっと、紹介が遅れたな。私はレープ・ヴァン・ヴィル。ここバロイセン帝国の第二近衛兵団長を務めている。今回はクルンの街へとさるお方の護衛任務でここまで来たのだ。」
「おお、御貴族の方でしたか。私はアイスと申します。一緒にいる猫(こ)達は、猫がマーブル、ウサギがジェミニ、スライムはライムという名前です。いずれも私のかけがえのない家族でございます。私は庶民であるので、このような口調で申し訳ありません。」
「いや、気にする必要はない。確かに、ヴィル家は子爵家ではあるが、私は次男であり、私自身には爵位がないから、そこまで畏まる必要はない。しかし、アイスよ。君もそうであるが、お伴の者達もかなりの強さだな。」
「恐れ入ります。私自身強いかどうかはわかりませんが、この猫達が強いのは間違いないですね。」
「ところでアイスよ。君は庶民といったな? これほど強い者が我が国にいるとは知らなかったが、他国から来た冒険者なのか?」
「いえ、私は魔の森と呼ばれる場所で小さな食堂を営んでいる者に過ぎません。」
「あの魔の森で食堂を営んでいるだと!? ・・・なるほど、その強さもそうであるが、私が知らなかったのも納得だ。ところで、君達はこれから魔の森へともどるのであろうか?」
「いえ、これからハンバークへと食材を求めに向かっております。」
「ハンバークだと!? ううむ、確かにあの村は港はあるが、残念ながら君達が望む食材は期待できんぞ。」
「まあ、その時はその時です。では、これよりハンバークへと向かいますので、これにて失礼致します。」
「いや、少し待って欲しい。助けてもらった上に治療までしてもらい、このまま返すわけにはいかんのだよ。」
「お気持ちだけ頂いておきます。貴族の矜持がそれを許さないのであれば、ワイバーンの襲撃はなかったことにしていただければ問題はないかと。幸いにも私達以外にはこの場所にはおりませんし、見たものもいない感じですので。とにかく道中のついでですので、お礼は不要です。では、これにて。」
これだから貴族絡みだと面倒なんだよね、、、。このレープという人物は人格的には見事かもしれないけど、それでも貴族だからなぁ、、、。捕まらないようにさっさとハンバークへと向かって、さっさと食材探しに勤しみますかね。追いかけようにも追いつかないだろうし。仮に追っ手が来たら敵対行為として返り討ちにしてやるか。
そんなことよりも、肉だ肉。本当は道中で休憩がてら食べようと思ったけど、先にハンバークへと行ってからゆっくり頂きましょうかね。
そんなことを考えていると、顔に表情が思いっきり出ていたのか、マーブル達も賛成とばかりに頷いてくれた。
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