第16話 クルンの街へと到着しました、ハイ。

前回のあらすじ:特に何事もなく道中を進んでいく一行。



 テシテシ、テシテシ、ツンツン、、、。朝か。


「マーブル、ジェミニ、ライム、おはよう。」


 3人に挨拶をすると、3人とも挨拶を返しながら飛びついて来た。うん、元気になるな。再び35の中年に戻ってしまったので、グッスリ寝られたとしても完全に回復できない状態になってしまったが、マーブル達のモフプヨのおかげで気力がみなぎってくる。さあ、今日も1日頑張りますか!


 テントから出ると、ケンプファーの4人はまだ寝ているらしく、誰一人出てきていなかった。まあ、どちらにせよ朝食の準備が終わるまではノンビリして欲しいから別にいいか。


 朝食だけど、仕込みを忘れてしまったので、ナンとボロネーゼと適当にスープにしますか。肉は大量にあるし、ナンも簡単に焼けるしね。この中で一番時間が掛かるのはスープか。骨っていい出汁は採れるけど、時間が掛かってしょうがない。とはいえ別に急ぎの旅でもないし気長にいきますかね。


 肉のカットやら火起こしやらをマーブル達に手伝ってもらいながら楽しく調理していき、もう少しで完成というくらいにケンプファーの4人が起きてきた。


「アイスさん達、早いな。もう朝食の準備ができたのか? すまねぇな。」


「カインさんか。おはようございます。もうすぐ出来上がりますので。ところで他の3人は?」


「あいつらも起きて支度しているところだよ。もうすぐこっちに来るさ。」


 カインさんの言った通り、他の3人も少ししたら出てきた。3人は私達に挨拶とお礼を言ってきた。丁度スープも出来上がったので、これから朝食タイムである。


「では、頂きます。」


「「「「いただきます!!」」」」


 食事前の頂きますをして、食べ始める。昨日の夕食で私が「頂きます」を言ってから食べ始めたのを不思議に思ったようで、理由を聞かれたので、この食事を食べる前に、食材となった生き物や魔物、調理を手伝ってくれたマーブル達などに感謝を捧げているから、と言ったら納得したのか、彼らも同じように「いただきます」と言うようにすると決めたらしい。作ったのは私だけど、私には別に感謝しなくてもいいから、食材となった植物や動物、魔物には感謝の気持ちを捧げて欲しいとは思う。やはり感謝の気持ちは大事なのである。


 朝食も大好評で、ケンプファーの4人も美味い美味いと食べていたし、マーブル達も嬉しそうに食べてくれていた。喜んでくれて何よりである。


 朝食も食べ終えて、テントを片付けて空間収納にしまいこむ。


「アイスさんは収納持ちなんだなぁ。一体どれだけ入るんだ?」


「さあ、どれだけ入るかはわからないですね。」


「マジか、分からないほど大容量なのか!?」


「にわかには信じられないけど、今のテントといい、昨日の魔物の数といい、確かにわからないかも、、、。」


 まあ、ぶっちゃけるとほぼ無制限なんだけど、別に言う必要はないだろう。


「こちらでも、マジックバッグは存在しますよね?」


「一応、あるにはあるけど、今の私達では、馬車一台分が精一杯なのよね。しかもそれでも金貨50枚かかるし、、、。」


「そうね、安いものもあるけど、重量がそのままだから、結局意味がなかったりするし。高難度のダンジョンで極まれに高性能なものが手に入るらしいけど、アイスさんの技能ほどではなかったと思う。」


「だな。アイスさんがケンプファーに加わってくれると非常に助かるけど、逆にあのマジックボックスのおかげで俺らも美味いメシが食べられたんだからな、ハハッ!」


 そんなことを話ながら道中を進んでいく。流石に街道だけあって、特にこれと言った問題はなくクルンの街へと向かうことができた。


 それにしても、大都市クルンに向かう街道なだけあり、街道を歩く人は多く、多くの行商人+護衛や、冒険者のパーティとすれ違っていた。軽い程度ではあったが、挨拶は欠かさず行っていたが、彼らは私よりもマーブル達に釘付けだった。何せ、私が手を軽く上げると、マーブル達もそれに合わせて軽く手を上げるのだ。可愛くないわけがないだろう。


 そんな状態なので、もちろんマーブル達を撫でたいと言ってきた人達は結構いたけど、断った。流石に急いでいないとはいえ、こんなので足止めを食いたくなかったからだ。意外だったのは、顔が凶悪そうでゴリマッチョな、いかにも冒険者的な人達の方がマーブル達を撫でたそうにしていたのだ。いっそのこと店にも、モフモフ達との触れ合いスペースも作ってしまおうか? 彼らは腕も立ちそうだし、うちの常連になってくれるかもしれない? そんなことを思いつつ、私達はクルンの街へと進んでいった。


「ところで、アイスさんは冒険者登録はしないのかい?」


「正直今のところは考えておりませんね。食堂最優先でいきたいですしね。」


「いや、冒険者ではなく、身分証として持っておいた方がいいと思ってね。」


「なるほど、身分証ですか。」


「そうね、身分証として是非とも持っておくべきだわ!」


 そんな感じで冒険者登録をしろと、強く迫られてしまった。正直面倒なんだよね、一々顔を出さないといけないし、こっちではノンビリと生活していきたいからねぇ。


「まあ、候補として考えておきますよ。」


 そんなこんなでクルンの街へと到着した。入り口の門では流石大都市である、行列となっていたので、素直に並んでおく。その間にも4人から冒険者になれと強く迫られていた。


 そんなこんなで、私達の番になった。


「おお、カイン達か? 何だか危険な任務だったようだが無事で良かった。一応規則だから、冒険者カードを出してくれ。・・・よし、確認した。ところで、そこの人は初めて見るな。」


「おお、紹介するぜ。こちらの方はアイスさん、俺たち4人を助けてくれた恩人だ。一緒にいるのはマーブルちゃんとジェミニちゃんとライムちゃんだ。そこにいるアイスさんの従魔だよ。こいつらもかなり強い、正直俺らではまったく歯が立たないんだ。」


「お前らより強いだと!?」


「初めまして、アイスと申します。強いか弱いかはわかりませんが、身分証は持ってないので、どうすれば入れますか?」


「おお、済まない。お前さん、クルンに来るのは初めてか。お手数だが、そこの珠に触れてみてくれ。・・・よし、問題ないな。重ねて済まないが、身分証を持たない者には入場料を払ってもらうことになっている。人は1人につき銀貨1枚、従魔は1体につき銀貨3枚だ。合計で金貨1枚だがいいか?」


 ありゃ、金貨1枚か。ケンプファーのみんなから受け取った食事代が合計で金貨2枚分くらいだから、あまり買い物ができないぞ、困ったな。仕方ない、場所はわかったから、もう少し食堂で稼ぐとしますか。道作っておけは、ケンプファーのみんなが本当に気に入ってくれたなら、また来てくれるかもしれないし、誰かしら来るだろうからそうしようか。


「うーん、仕方ない、今回は引き返「待って! 私達が払うから!!」」


「というわけで、今回は俺たちが支払うよ。」


「いやいや、支払ってもらうのは申し訳ないですし。」


「何言ってるんだ? 俺らが支払ったのは食堂での食事代だけであって、道中の安全と野営での食事など提供してくれただろ。」


「いや、それは、この町への案内料ですから。」


「そうは言ってもよ、アイスさん達がいなかったら、俺ら全員、あの森で全滅していたんだよ。そのお礼もあるんだ、ここは俺たちに支払わせてくれよ。というわけで、ほら、金貨1枚だ。」


 アルトさんが門番に金貨1枚を渡す。


「確かに金貨1枚受け取った。このケンプファー4人が、ここまでするんだ。アイスさんと言ったっけ? ようこそ、クルンの街へ!! ここはいい街だから、ゆっくり見ていってくれ! それと、これは俺の紹介状みたいなものだ。これを冒険者ギルドでも商業ギルドでもいいから見せてくれれば、登録できるから、登録してくれ。登録してくれれば、以後この街は無料で出入りできるようになるから。あと、カインとアルト。夜にその依頼の話を聞かせてくれよ! ミトンとヒルダも気が向いたら頼むぜ! っと済まんなアイスさん、俺はケントという名だ、覚えておいてくれ。」


「助言ありがとうございます。」


 無事クルンの街に入ることができた。一言で言うと「凄い」に尽きる。下手な国の首都よりも栄えている。人も多く町並みも綺麗である。


「おお、これがクルンの街か、、、。」


「ミャア!」「凄いです、凄いです!!」「わー!!」


 3人とも同じ気持ちらしく、その場を跳びはねているライムを中心にマーブル達が走り回っている。非常に可愛らしい。周りの人達はマーブル達に注がれていた。もちろんホッコリとした視線である。


「ア、アイスさん、嬉しい気持ちは伝わるけど、そ、そんなに嬉しいか?」


「いやぁ、これだけの大都市って初めて来ましたからねぇ、そりゃ、テンションも上がるでしょ。」


「そ、そうか、俺は、あの森の魔物を苦もなく倒すアンタ達に驚いたけどな。」


「私、気付いたんだけど、アイスさん達は私達と同じ感覚をもっていない。」


「そうね、確かにそうだわ。」


「言われてみるとそうだな。」


「ま、まあ、それは置いといて。アイスさん、俺らはこれから冒険者ギルドへと報告に行くから、一緒に来るか? 報告が終わったら、知っている限りだけど案内するぞ。」


 カインさんに声をかけられて我に返る。マーブル達も我に返り、私に飛び乗った。


「大変お見苦しいところをお見せしました。折角なので案内してもらいますか。」


「い、いや。周りの様子を見ると、見苦しくはなかったと思うぞ、驚いたけど。」


「そ、そうね、問題なかったと思うわ。・・・驚いたけど。」


 ケンプファーの4人の後を付いていき、冒険者ギルドへと入った。ギルド内はやはり大勢の冒険者達がおり、喧噪に包まれていた。冴えないオッサンが猫とウサギとスライムを引き連れて来れば、カモを見つけたとばかりに絡んでくるかと多少身構えていたものの、特に何かがあるわけではなくすんなりと事は進んだ。・・・つまらん。


 ケンプファーの4人が報告をしている間に登録を済ませておこうということで、ここから別行動となった。もちろん、気に入らなければ登録しなければいいだけの話だし。


「冒険者ギルドへようこそ! どういったご用件でしょうか?」


「冒険者登録をお願いします。」


「し、失礼ですが、新規登録でございますか!?」


「ええ、新規登録です。」


 驚いているのも無理はない。冒険者登録は基本若い者が行うものであり、こんなオッサンが手続きをすることはまずない。受付の人の表情が微妙に、大丈夫かこいつ? みたいな感じになっていた。ああ、こりゃ断られるかと思ったので、登録はしないで戻ることに決定。


「いや、無理そうなら別に登録できなくても構わないですが。そういえば、こんなものを預かってきたのですが、これはもう必要ないですね、それでは。」


 ケントさんからもらった紹介状みたいなものを受付の人に渡して、その場を離れることにした。途中で声が聞こえたけど、断られたのなら仕方がない、ということで冒険者ギルドから出た。このギルドの入り口でケンプファーの4人と落ち合う約束があったけど、まだ向こうは時間がかかっているのか来ていないので、折角だから周辺を見て回ることにした。

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