第15話 はじめてのやえいです、ハイ。

前回のあらすじ:町への道案内をお願いしました。



 家を出て、ケンプファーの4人を先頭に進んでいく。道中では度々魔物が襲ってくるけど、マーブルとジェミニがさっさと仕留めて戦利品をこちらに持ってきてくれる。たまに返り血などが付いている時もあるけど、そのときはライムが綺麗にしてくれて、いつも通りのピカピカモフモフの状態に早変わりと。


「ヘルボア3体もいるのに、何で一瞬で倒せるんだ、、、。」


「ダークホーンの首って、こんな簡単に切れないよな、、、。」


「ブラックアントが凍ったまま破壊されているわ、、、。」


「普通に移動しているのに、何でこんなに採集できているのよ、、、。」


 最初こそ、こんな話し声が聞こえていたけど、しばらくそうしているうちに何も言わなくなってしまった。どうやら落ち着いてきたようだな。


「ところで、クルンの街はあとどのくらいかかりますかね?」


「このまま進めばクルンの街は明日の昼頃になるが、街道に出るだけなら夕方遅くには着くと思う。まさか一直線に進むとは思わなかったけど、ここの魔物を簡単に倒せるなら、これが一番かな、ハハッ、、、。」


 カイン君が遠い目をして答えてくれた。


「ということは、街道と我が家への道を繋げば、来てくれるお客さんも増えてくれる、ということですね。」


「いいえ、アイスさん、そこまで簡単ではないですよ。アイスさん達は、ここの魔物でも簡単に倒せてますけど、普通は遭ったら逃げる必要があるくらい強い魔物ですからね!」


「なるほど。別に来る人を強さで選びたいわけではないですからね。そうすると、道中で魔物に遭遇しないよう工夫する必要があるわけですね。」


「最低限、それが必須かな。私達もさっき襲われた魔物から逃げようとしたけど、結局囲まれた訳だし。ただでさえ、この森に近づくということは、よほどのことでもない限りないし。私達も今回はどうしても断れない依頼があったから、ここに来たけど、普段なら遠慮願いたいくらいだしね。」


「ふむふむ、では、道を作って、その道を通っている限りは襲われないようにしてみますか。というわけで、マーブル、ジェミニ、ライム、できるかな?」


「ミャア!」「もちろんできますよ!」「ピー!」


 うん、マーブル達ができるというのであれば大丈夫でしょう。


「ア、アイスさん? アイスさんはあの子達と会話ができるの?」


「マーブルは何となく、ジェミニは問題なく、ライムも何となくと言うレベルですかね。ただ、あの3人は私の言っていることはしっかりと理解しておりますよ。もちろんみなさんの言葉もしっかりと理解できてますので。」


「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」


 マーブル達も、その通りと言わんばかりに返事をする。やはり癒やされる可愛らしい声ですなぁ。ケンプファーの4人もマーブル達の可愛らしさに目尻が下がっている。


「しかし、テイマーってのもなかなか良いな。マーブルちゃん達を見ていると、普段俺らでも狩れる魔物をこうして鍛えることができれば、普段の生活でも戦闘の面でもいろいろと楽しいんだろうなぁ。」


「何言ってるの!? 確かに可愛いのは認めるけど、私達では、あんなに強く育てられないわよ!」


「・・・確かにその通りか、スマン、夢見すぎたかな。」


「でも、マーブルちゃん達を見ていると、そういう夢を見たくなるのもわかるわね、アイスさん、どうやってそこまで強く育てられたの?」


「うーん、正直、いつの間にか強くなってたという感じですかね。そもそも、私はマーブル達を癒やし枠として見ており、戦闘面は二の次ですからね。たまたま倒せる相手だから仕留めてもらっている感じですかね。」


「「「「は!?」」」」


 ゴメン、そもそも、私はテイマーじゃないんだよ、ポーター、つまり運び屋なんだよね。よく驚かれるけど、事実モフプヨという癒やしの面で非常に重要な役目をマーブル達にお願いしているんだ。仮に弱かったら、私がどうにかすればいいだけの話だしね。


 会話したり、魔物を倒したりしながら、夕方遅く、暗くなり始めた頃についに街道に到着することができた。


「おお、これが街道!!」


「ミャア!」「ついに人の良そうな場所に到着しましたね!」「ピー!」


 私だけでなく、マーブル達も喜んでいた。街道、特に大都市につながる道なんて今まで来たことがないのだ。しかも石畳だよ石畳! これ、土魔法で作ったものではなく、天然の石で構成されているんだよ!


 私達が大規模な人工物に感動している姿を見て、ケンプファーの4人は驚くやら呆れるやら。


「何でそっちに驚いているんだよ、、、。」


「いや、まさか、ここまで感動するとはね、、、。」


「普通、逆じゃねぇか?」


「だよね。あんな凶暴な魔物には平然としてるのに。」


「いやあ、みなさん、素晴らしいところに住んでいるのですねぇ。そろそろ危険も少なくなっておりますし、空も暗くなってきましたので、野営の準備でも。」


「そうだな。アイスさんは野営は初めてか?」


「いえ、野営には慣れておりますのでご安心を。あ、テントは別にしましても、食事についてはこちらで用意しますので。」


「いいのか!?」


「ええ、案内と護衛のお礼です。」


「・・・案内ならともかく、俺らが護衛されている状況なんだよな、、、。」


「私達って、Bクラスの冒険者だよね?」


「アイスさん達と一緒にいると、その自信も吹き飛んでしまったわ、、、。」


「だな、どうあがいても手が届きそうもない場所にいる感じだな。」


「魔物相手にも相性というものがありますからね。たまたま、あの魔物達が私達と相性の良い魔物だったのでしょう。お気になさらず。」


「お言葉に甘えましょう。向こうに野営に適した場所があるから、そこで一泊すればいいと思うわ。」


 ミトンさんの案内に従って、後を付いていくと、見晴らしの良さそうな場所に到着した。では、これから野営の準備に入りたいが、生憎テントというものは作っていない。もちろん、忘れていたわけではなく、どうとでもなるからだ。さて、準備を始めようと思ったら、アルト君が声を上げた。


「ああっ! しまった!!」


「どうした、アルト!?」


「あ、私達、逃げ出したときにお金以外荷物、放っておいたよね!?」


「そうかぁ、、、。テントもそっちだよねぇ、、、。」


 なるほど。逃げるときにテントを置いていってしまってそのままか。そういえばそうだったね。私達がそっちに行ったときは荷物らしい荷物って周りになかったしね。そんな状況でも武器防具もそうだけど、お金だけはしっかりと確保しておいたのは流石といえよう。伊達に高ランクの冒険者ではないな。こういった冒険者達だからこそ救いの手を差し伸べないとね。


「みなさん、よろしければ、こちらでテントではないですが、提供しましょうか? 下手なテントよりも居心地は保証しますよ。」


「頼ってばかりで申し訳ないが、お願いしてもいいだろうか?」


「ええ、構いませんよ。事情が事情ですからね、あの状況では仕方がないと思いますよ、それに、前途ある若者を教え導くのも年長者の役割ですからね。」


「アイスさん、ありがとう。」


「では、早速準備しますか。みんな、お願いね。」


「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」


 マーブル達は敬礼をしてから任務に就く。4人が寝られるスペースの敷物を2枚、空間収納から取り出し、その敷物をまずライムが綺麗にする。その四方にジェミニが土魔法で柱を作り上げる。高さは1メートルくらいあればいいかな。柱を作ったら、別の大きな敷物を2枚用意して、それぞれの場所にかぶせる。しっかりとかぶせることができたら、水術でそれらを固定して、マーブルの空間魔法を使って内部を広げて完成。


 強度を確かめてもらって、試しに中に入ってもらう。最初に入ったのはヒルダさんだが、入ってすぐに出てきてしまった。何か不備があったのかな?


「ちょっと待って! 何このテント!? いろいろとおかしいんだけど!!」


「落ち着け、ヒルダ。何がおかしいんだ?」


「みんなも入ってみればわかるって!! とにかく、中に入ればわかるから!!」


 ヒルダさんに急かされて他の3人が入ると、ヒルダさんが詰め寄ってきた。


「アイスさん!? 何、あれ? どう見てもおかしいんだけど!?」


「あれですか? あれはマーブルが空間魔法で拡張してあるので、あんな感じになりましたね。どうです? 広くて快適でしょう?」


 私の横で、可愛い我が猫(こ)達が得意げな表情をしている。控えめに言って可愛いすぎる!! あとみんなゴメンね。君達のテントは空間を広げているだけで、あとは何もない普通のテントなんだ。私達のテントには風呂場と洗濯場が完備されているんだけど、それは内緒にしておく。


「いやいや、いろいろとおかしいって!! あんなの見たことないよ!!」


「まあまあ、道中お疲れのようでしたし、これから食事の準備もしますので、ノンビリ寛いでいてくださいね。」


 そう言って、私達は食事の準備を始める。とはいえ、特に仕込んでいる訳でもないので、こったものは作れない。無難にステーキ丼とオニオンスープがいいかな、ということで作成開始。


 空間収納からテーブルと椅子を取りだし、配置も完了させ、料理が完成したところで、ライムに呼びに行ってもらった。


 すぐに4人は出てきたが、「もう、驚かないぞ」とかいった言葉が出てきたけど私の耳には入ってこなかった。


 「いただきます」の挨拶をしてから、食事を始めたが、みんないい勢いで食べていたので気に入ってくれたのだろう。


 夕食も終わり、ケンプファーの4人から話があった。


「アイスさん、ここまでしてくれて申し訳ない。お礼といっては何だけど、今夜の見張りは俺たち4人に任せてくれないか?」


「見張りですか? それについては大丈夫です。結界を張っておきますので、皆さんもぐっすりと休んで明日に備えて下さい。ここの魔物程度なら防ぎますので。どれだけ結界の罠にはまるか楽しみですねぇ。」


 そういうと、4人は納得したのかしてないのかわからないけど、テントに戻った。私達も2つのテントの周りに水術で氷の結界を張ってテントの中に入る。


 その後は、風呂と洗濯を済ませてからモフプヨを堪能して眠りについた。


 明日はついにクルンの街へと到着すると考えると少しワクワクしてしまった。マーブル達も同じくワクワクしているようだ。

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