第14話 街までの案内をお願いしました、ハイ。
前回のあらすじ:ボロネーゼは好評だった。
お試しで出した各種ボロネーゼ+追加で個別に出したパスタも完食し、一緒に出しておいた果実水を飲みながらマッタリしている4人。
「ふーっ、まさか絶体絶命の危機から、今まで食べたことのない美味い食事にありつけるとは思わなかったな、、、。」
「そうね、、、。」
「おっと、いろいろあったせいで、自己紹介を忘れていたな、俺たちは、、、。」
話を聞いてみると、この4人は『ケンプファー』という名のパーティで、Bクラスの冒険者だそうだ。4人で一番話してくれている男性がリーダーのカインで、槍が得意な前衛職らしい。他のメンバーだと、もう1人の男性はアルトという名で、タンクを担当しているそうだ。獲物はメイスとかの鈍器のようだ。
このパーティには2人女性がいるが、1人は背が低いのだが、ハーフリングという小人族らしい。そのハーフリングの女性はミトンという名だそうで、その小柄な体格を活かして斥候職を務めているようだ。得意武器は弓とのこと。もう1人の女性はヒルダという名前らしい。回復や補助の魔法を得意としているようだ。獲物は杖をもっているね。
ちなみに、カインとヒルダが21歳、アルトは23歳で、意外なことにミトンが25歳と最も高齢だった。お返しということで、こちらも自己紹介しておきますか。
「改めて自己紹介ありがとうございます。私はアイスと申します。こちらには来たばかりで右も左も分からない状態なので、いろいろと教えて頂けると助かります。」
ついでに、この世界のこともある程度教えてもらった。私達がいまいる場所は、魔の森と呼ばれる凶悪な魔物が住んでいる場所らしい。この場所でもかなり危険なのだが、奥に進むと更に危険な魔物が生息しているようだ。
また、このケンプファーの4人は、バロイセン帝国内のクルンという都市に所属する冒険者のようだ。折角だから、クルンの街まで案内してもらうことにしよう。
クルンの街は、バロイセン帝国でも交通の要衝なため、この世界でも有数の大都市のようだ。そのため、いろいろな物が手に入るらしい。また、魔の森に近いせいか、クルンの街で登録している冒険者の数も多く、質も結構高いそうだ。
もちろんこの世界について話を聞くだけじゃなく、私と一緒にいる可愛い猫(こ)達の紹介も忘れない。
「なるほど、あのミートパスタの名前は、この子達の好みの味から付けたのか、納得した。」
「まあ、好みというより、この3種類の中で、どれが一番気に入ったかを聞いたら、みんながそれぞれ異なったから、丁度良かっただけなんですけどね。」
「確かに一番好きなのは分かれるけど、正直どれも美味しかったしね。」
「でもさ、アイスさんって、35歳だよね? ここはこんな世界だから、そんな口調で話していたら、相手に舐められるよ?」
「お気遣いありがとうございます。でも、商会に入って買い物をしますと、店員さんってみんなこんな口調じゃないですか?」
「んー、それは、そうなんだけどさ、食べ物を扱っている人達はそんな口調じゃないよ。」
「まあ、癖というのもありますので、一朝一夕では治りませんし、このままで行きますよ。この程度で人を舐めてくるようでは、大した相手でもありませんしね。」
「アイスさん達の強さを知ってしまうとな、、、。そうだ! アイスさん達も冒険者登録しないか? 冒険に付き合ってくれると非常に助かるのだが、、、。」
「ありがたいお誘いですが、私はここでノンビリとマーブル達と食堂を経営していきたいので。本音を言うと、お金って必要ないんですよ。ただ、お金をもらわないと、新たな食材を手に入れることができないので。」
「!? そんな理由なの!? 道理で安い値段を付けると思ったら、、、。」
「だったら、俺たちがちょくちょく手に入れてきてやろうか?」
「それもありがたいですね。たまにで構いませんのでお願いできますか?」
「了解した。ところで、少し気になったのだけど、あの牛とか豚の肉って魔物だよな? 一体どの魔物の肉を使っているんだ?」
「ああ、あの肉ですか? えっと、確か牛の方はダークホーンだったかな。豚は何だっけ? あ、ヘルボアとかいう種類だったな。」
それほど強くもなかったにもかかわらず美味い肉だったなぁ、と思いながら答えると、4人は一斉に吹き出した。
「え? ダークホーンにヘルボア? え? アイスさん達、あんなのを倒したの?」
「ええ、それほど強くもなかったですし、肉質も美味しそうだったので、マーブル達も張り切って倒していましたしね。」
「ダークホーンにしろ、ヘルボアにしろ、俺ら4人でも倒せないのに、、、。」
ありゃ、驚かれたな。まあ、仕方ない。マーブル達はドラゴンも余裕で倒せる程強いし、その状態でそのまま転生したからねぇ。
「そういえば、ミートパスタの値段聞いてなかったな。1ついくらになる?」
「食堂では1食分はどのくらいになりますかね?」
「そうね、通常の所だとパンとスープだと銅貨5枚かな。今みたいなメニューだと銀貨1枚といったところね。ただ、パスタにしても、肉の素材って、ホーンラビットとかビッグラットとかの材料になるから、ヘルボアやダークホーンとかだと、想像もつかないわね、、、。」
「だったら、銀貨1枚でいいでしょう。ホーンラビットにしても、ビッグラットにしても、手に入れやすさなどを考慮した値段でしょうし、私達の場合は、それがヘルボアやダークホーンというだけのことですしね。」
「いやいや、おかしいからね! ヘルボアやダークホーンなんて、クルンの街や帝都でさえほとんど出回らないんだから、、、。毛皮や牙でも金貨数枚でも安いくらいなんだけど、、、。」
「なるほど。もし、よろしければ、毛皮や牙、いくらかお持ちしますか? 初めてのお客さんということで、無料で進呈しますよ。」
そう言いながら、空間収納からヘルボアやダークホーンの毛皮や牙などを人数分取り出す。まだまだ在庫もあるし、少し消費させてもらいましょうか。
「は!? いやいや、ありえないでしょ? 何でいきなり出てくるの!?」
「まあ、収納持ちですからねぇ。少しでも減らしておきたいので受け取ってもらえませんかね? 食事代も頂きましたし。」
「いやいや、1頭分で食事代以上の値段になるんだよ!? 何で当たり前のように人数分出すんですか!!」
そんな遣り取りをしながら、2頭分のダークホーンとヘルボアの素材を手渡した。
「そういえば、アイスさん、クルンの街に行ってみたいって言ってたよな?」
「ええ、ここで手に入る素材だけですと、ボロネーゼと他数品くらいしか作れませんしね。他の食材も欲しいところですしね。」
「では、素材のお礼として案内させてもらうよ。」
「それはありがたい。では、案内料として残り2体分も受け取ってください。」
「「「「いや! さっきの2頭分で十分だからね(な)!!」」」」
うーむ、全力で断られてしまったぞ。まあ、いいか。
「それで、出発なんだけど、アイスさん、どの位待てばいい?」
「出発するんでしたら、今すぐでも構いませんよ。」
「俺らは構わんが、片付けとかあるだろう?」
「片付けですか? 今マーブル達がやってくれたので、もう終わってますよ。」
「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」
いつものかけ声で、マーブルは左肩に、ジェミニは右肩に、ライムは頭の上にそれぞれ飛び乗った。いつものこととはいえ、可愛くてしょうがないですな。
「マーブル、ジェミニ、ライム。片付けありがとう。ということで、皆さん、いつでも出発できますよ。」
ケンプファーの4人は驚いていたが、同時に呆れてもいたようだ。彼らがこのまま常連客になってくれるのなら、いずれ慣れるでしょう。
ということで、クルンの街へと出発です。
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