第7話 まずはしっかりした食材探しです、ハイ。

前回のあらすじ:何か短時間でもの凄い家が完成してました、、、。



 テシテシ、テシテシ、ポンポン。これは、マーブルとジェミニの可愛いお手々、通称肉球と呼ばれる部位で、私を起こしている擬音である。ちなみに、ポンポンの擬音は、これまた可愛らしいうちのライムが私の胸の上で跳ねているものである。


 言うまでもなく、私を起こすためのものであるから、かなりソフトに扱ってくれるし、これがないと私は起きられないのも事実である。どんなに寝不足な状況でも、この猫(こ)達がこうして起こしてくれる限り、一日元気に過ごせるのである。


 とはいえ、最初は今のように起こすためだけではなく、ご飯の催促の意味が強かった背景がある。というのも、以前いた世界では、私は夜型人間であったため、朝は弱く、昼頃にのんびりと起きて、仕事やら何やらをしていた生活を30年近く過ごしていたから、朝早くなんか起きることは無理であった。


 最初はマーブルだけと一緒だったのだけど、マーブルは、私とは真逆の生活習慣であったため、早く起きる。でも、メシがない、だったら、起こすしかないっしょ、ということで、マーブルがご飯の催促のため、私を起こすようになった。


 以前いた世界では、どれほど強く願っても叶えられなかった、猫との生活。一緒に暮らすことを選択してくれ、私の願いを叶えてくれたマーブルのお願いなのだ。断る方が無理というもの。


 そんなわけで、マーブルがこうして毎日欠かすことなくテシテシと私を起こすようになった結果、後日一緒になった、ジェミニやライムもそれを真似るようになったということである。ジェミニは問題なかったのだけど、ライムは最初の数日は私の顔に乗っかってきたので、肉球の感触よりも、呼吸困難の苦しさで起こされていた。自分で気付いたのか、マーブル達に言われたのかはわからないけど、最初の数日以降は胸の上で可愛く跳ねるようになったのだ。


「おはよう、マーブル、ジェミニ、ライム。これからどうしようか全く考えていないけど、今まで通り、楽しく過ごしていこう。」


「ミャア!」


「アイスさん、おはようです!!」


「あるじー、おはよう!!」


 マーブル達に起こしてもらい、朝の挨拶を済ませて、これから顔を洗ったりして心身共にサッパリしてから、朝食の準備である。水球を作り、水球の温度をぬるま湯程度に温めてから顔、というか頭部か、に当てて、頭部に当てた水球に流れを加えて洗浄。2、30秒くらい洗浄してから、水をとばして頭部を乾燥させて完了。水術1つでこれだけのことができる。もちろん風呂も選択も水術を使っているし、これらよりも大がかりなことができる。というか、これからその大がかりなことをやる予定ではあるのだけど。


 さて、朝食の準備であるが、現状ではできることは少ない。今あるのは、昨日狩ったストレイトウルフ達の肉と、マーブルが採取してきてくれた植物のみである。一応は大麦と小麦があるけど、食事として出すには心許ない量なので、これらは使えないし、マーブルが採取してくるのは基本甘いものである上に、満足に調味料もないため肉に合わせるのが難しい。一応料理スキルは高レベルにはなっているけど、元々は料理人ではないので、そこまでレシピを数多く持っている訳でもないので、今所持しているものでは、限られてしまう。


 というわけで、朝からステーキでございますよ。朝からステーキというのは、こっちに来て再び35歳となってしまった身からすると、ちょっと厳しいものがあるけれど、背に腹はかえられない。今しばらくは妥協するしかない。


 で、出来上がったのは、ステーキと、スープという困ったときの定番メニューである。もちろんメニューの名前も存在しない、というか、メニューにする価値のないものである。それでも、マーブル達は喜んで食べてくれたのでよしとしますか。


 朝食も食べ終わって、少しマッタリしてから、この家について、少し心配していたことがあったので、聞いてみた。


「そういえばさ、この家って、食堂やトイレにしてもそうだけど、水回りってどうなっているの?」


「安心するです! その辺はしっかりと考えて作っておいてあるです!」


 ジェミニがそう答えると、「アイスさん、こっちです。」と3人で移動し始める。どうやら、案内してくれるようだ。


 マーブル達に案内されるまま付いていき、ここはこう、そこはそうなっている、とか細かい説明を受けた。正直に言います。「なるほど、わからん!」そんな心境だね。というか、君達にそこまでの建築に関しての知識があるのは驚いたよ。ちなみにその原因となっているのは、あちらの世界で未だ完成する気配のないフロスト城からヒント、いや、経験済みだという。君達も絡んでいたのね、、、。


 ということで、水回りの心配は全くしなくてもいいことがわかったので、まずはしっかりとしたものを作りたいので、素材の確保が必要、ということで、周辺の探索、ではなく、最初に行ったことは、大麦と小麦の栽培である。幸いにもかなり広めに整地したおかげで、畑となる場所はしっかりと確保できているので、とりあえず畑として確保した場所を掘り起こして土を作る。もちろん、大麦用の畑と小麦用の畑にそれぞれ分けることも忘れない。


 土作りが完成したら、それぞれ種を蒔く。それぞれ農法があるようだけど、そんなものは知らない。あと、肥料も今のところはないので、水を蒔くときにライムに光魔法を付与してもらったものを蒔く。今のところはこれでよし、というか、これ以上のことはできないので、あとは結果を待つばかりである。もちろん、この場所を狙ってくる魔物もいるだろうから、水術で罠を仕掛けておくことも忘れずに行った。愚かにも足を踏み入れたら氷の罠が発動するやつである。氷のドラゴンですら凍るほどの強力なやつを用意しておいた。今日は引っかからなくても、後日掛かるやつはいるはずである。掛かるのを楽しみに待つとしましょうかね、ククッ。


 さて、外出準備も整ったことだし、これから探索と参りましょうかね。マーブルが私の左肩に、ジェミニが右肩、ライムが頭の上にそれぞれ飛び乗って出発。当てもなく探索するのは無意味なので、とりあえず量が必要な大麦や小麦、あるいはコーヒーの実があった場所へ行くついでに、他に見つかるものがあったら、それを採取していくつもりだ。


 この森には、ヤバい魔物が多数生息しているだけあって、土の栄養分? 魔分? が豊富のようで、あちこちに利用できそうな植物が生えていた。特にありがたかったのは、コショウの木があったことだ。鑑定をかけてみると、しっかりとコショウとして使えることがわかったので、一部を除いてガッツリと採取させてもらった。ちなみに名前だけど、コショウは「ケショウ」とか一部違うだけでややこしいので、必要な部分以外では割愛する。聞かれたら答える程度で十分だよね。


 その他にも、クミンやターメリック、チャツネなど、おなじみのスパイスがちょこちょこ見つかったので、こまめに採取していく。ただ残念なのは、これらは群生せずに1本だけだったり、多くても数本程度しか生えていなかったので、量を集めるにはあちこち探し回らなければならない。週に2日くらいは定休日を設けないと厳しいかも知れないかな。まあ、その日は冒険日ということで、楽しく探索すればいいだけの話かな。


 また、見つかったのはスパイスだけではなく、野菜類もかなりの種類を見つけることができた。注意しておきたいのは、あくまで種類である。やはりスパイス類と同様にこちらも1カ所だけでは十分な量を手に入れられなかった。それでも、これだけの種類が手に入るだけでも全然違う。特に嬉しかったのは、大豆、ジャガイモ、トマトが見つかったことだ。これらは使い途が特に多いので量も必要となってくるので、一部は畑で栽培しようとも考えている。


 あちこちを探索しまくったおかげで、かなりの量の植物を採取できた。もちろん今回の主目的である大麦や小麦、コーヒーの実に関しても沢山手に入れることができたのは言うまでもない。


 あ、もちろん広範囲に探索した分、遭遇した魔物達も沢山いましたねぇ。能力リセットなら危険でしたけど、能力そのままで転生できてしまえば、マーブル達の相手にすらならなかったけど。ヘルボアとかダークブルとか、かなり物騒な名前の魔物でしたけど、マーブル達から見ると、豚さんや牛さんでしかないわけで、呆気なく仕留められて、ありがたく食材として頂戴いたしました。


 豚さんや牛さんからは、肉や皮だけでなく、内臓もありがたく素材として頂けることがわかったので、ソーセージ用の腸詰めに、モツやガツといった用途に利用しようと思います。


 と、ここまで順調に食材を調達できていたので、そっちの嬉しさに肝心なものが手に入っていないことに気付いたのは家に戻ってきてからだった。


 ・・・塩って確か、まだ手に入れてないよな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る