第5話 とりあえず、ここを拠点にします、ハイ。
前回のあらすじ:うちのマーブルは超甘党です。
マーブルの案内の元、私達は水場へと向かっており、道すがら、何か食べられるものが見つかれば、採取していく感じで進んでいる。魔物についてだけど、この辺りは先程倒したストレイトウルフの縄張りだったようで、特に他に遭遇していない。
「マーブル、ビナナの他にも美味しそうなもの見つけた?」
もちろん! と言わんばかりの可愛い鳴き声で「ミャア!」と声を出しながら、採取したものを収納魔法でしまったものを取り出しては渡してくれた。というのも、マーブルの収納魔法は、闇魔法と重力魔法を組み合わせたものらしく、容量は大きいものの、収納限界があるらしく、できるだけ空にしておきたいそうだ。そんな感じのことを以前聞いたことがある。後は、どうせ調理してもらうから、自分で持っていても仕方がないという理由もあるらしい。
マーブルはご丁寧にも種類毎に纏めて渡してくれたので、鑑定も比較的楽だったけど、あの短時間でどれだけ集まったんだよ、と少々ツッコミたくなった。いや、嬉しいんだけどね。
で、渡してくれたものは、流石はマーブルというか何というか、ほとんどが甘い食べ物、というより果物ばかりだった。例えば、どうみてもイチゴの「わらベリー」とか、レモンは「ラモン」だった。ハード何とかじゃないんだし、これ「フォー」とか叫んだりしないよな!? そういえば、「わら」って「ストロー」じゃん。これ以上は控えるけど。他にも、ブドウ、モモ、スイカなど、定番のものを渡してくれた。
あと、意外なものとして、コーヒーの実があったのには驚いた。マーブルはその実が甘酸っぱくて美味しかったので採ってきたらしい。実の味にも気になったけど、私が必要としているのは実を食べた後に残る種である。種を焼いて(焙煎して)砕いてお茶のように飲むものがコーヒーである。それなりの量を採ってきてくれたようだけど、それでも大量に飲むのはまだ不可能なので、集める必要があるかな。
数少ない甘くないもので採ってきてくれたのは、小麦と大麦だった。フロストの町にある大麦ではないので、成長速度は普通だろうから、さっさと植えてできるだけ早く栽培する必要があるだろう。
「美味しそうなものが多いね、ありがとう、マーブル。」
これだけたくさんの種類と量を集めてくれたマーブルに、感謝のスリスリをする。どっちがご褒美となっているのかについては突っ込まない方向で。
しばらく進んでいくと、マーブルが「ミャア!」と鳴いた。いやあ、可愛いねぇ、と言っている場合ではなかった。何かを発見したのだろう。いや、この場合だともうすぐ水場に到着するのかな? ぬか喜びしないように確認だけでもしておくか。
「ん? どうしたの、マーブル? 水場が近くにあるの?」
「ミャア!」
その通り! と言わんばかりの力強い鳴き声である。可愛いのは当然だけど。
「おお! ついに水場を発見したか。で、その水場って川か何か?」
「アイスさん、川ではないようです。」
「そっか。まあ、マーブルが見つけた場所だから、小さい水たまりというわけではなさそうだし、ちょっと楽しみかな。」
マーブルしか感づいていないとなると、やはり川ではない様子。でも、マーブルが見つけたということは、それなりに水量はありそうだから、そこは問題ない。もちろん水質も大丈夫だろう。また、ライムが感づいていないということは、距離はまだありそうかな。詳細はライムが教えてくれるでしょう。
どんな感じなのか期待半分不安半分の状態でこのまま進んでいくと、予想通りライムが教えてくれた。
「あるじー、ボクもわかったー。おいしそうなおみず!」
「ほう、ライムがそこまで言うのだから、いい水場なんだろうね。」
「ミャア!」
マーブルもその通り! と言わんばかりに元気に鳴く。
さらにしばらく進んでいくと、池を発見した。ライムとマーブルのお墨付きもあるけど、念のため鑑定。一番気になるのは水量である。うん、膨大に湧き出てくる水のようだな。水質もこの世界ではかなり高い、か。
「うん、いい水だね。それに水量もバッチリだね。よし、ここをキャン、、じゃなかった、拠点とする!!」
「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」
・・・いや、喜んでくれているのは何よりだけど、マーブルはともかく、ジェミニもライムも普通に話して、、、。
拠点といったら、家、いや、小屋レベルでもいいから何か建てないとね。まあ、ここに住むのは私達だけだから、雨風さえしのげれば十分かな。接着部分は水術でどうにかするしかないか。木材は馬鹿みたいに手に入るから問題なさそうだ。開拓も含めて広範囲で整地しますかね。
「では、みなさん。これより拠点作りに入ります。マーブル隊員は、この池の周りに生えている木々を伐採して、皮も削って木材にしてください。ジェミニ隊員は、マーブル隊員が伐採した木を掘り返して下さい。ライム隊員は、マーブル隊員が削った木材をキレイにして下さい。」
「ミャア!!」「了解です!!」「がんばるー!!」
マーブルが風魔法で次々と木を木材にしていく。ジェミニは切り株となってしまった場所に土魔法でその切り株を掘り返していく。ライムは木材となった木を次々とキレイにしていく。私はというと、木材と切り株を収納しつつ水術で氷の塊を作り、それを落としては土を固めてく作業をした。それを見越してか、ジェミニは掘り返しても固めやすいように土の場所を調整してくれていた。流石はできる子達である。
結構その作業が楽しかったので夢中になっていたら、気がついたら池を中心におよそ100メートル四方が更地になっていた。さてと、どんな感じで作ろうかと考えていたら、ジェミニがこう言ってきた。
「アイスさん、どんな感じで作るか考えてるですか?」
「いや、全く。だから、今考えていたんだよね。生憎私は建築なんてできないから、雨風さえしのげればいいやって思っている程度かな。」
「なるほど、でしたら、ワタシ達が作るです!!」
「へ? ジェミニ達って建築できるの?」
「大丈夫ですよ、あっちの世界で職人さん達に教えてもらったり、一緒に手伝ったりしたです!!」
「ミャア!」
「ボクたちにまかせてー!!」
いつの間に、、、。いや、頼もしいといえば頼もしいんだけど、君達、基本的には私とずっと一緒だったよね? まあ、いいや。私がやるよりも確実にしっかりとしたものが作れそうだし。
「じゃあ、お願いしようかな。で、私はその間、何をしていればいいのかな?」
「何を言っているですか!? アイスさんには、木材の水を抜くという大事な仕事があるですよ!! アイスさんがいないと、家は作れないです!!」
「そ、そう? じゃあ、この伐採した木材の水分を抜けばいいのね?」
「はい! お願いするです! あ、それと、どの辺りに作ればいいか教えて欲しいです。」
「了解。一応場所は考えているけど、大きさや間取りは任せるから。」
「はい! ワタシ達に任せるです!!」
とりあえず、場所は池からあまり離れていない所に決めた。方角だけど、方向音痴の私がそんなもの知っている訳がないので、近くとだけ。ってか、綺麗に整地してしまった状態なので、池の真ん中に立つと、どこも同じに見えるくらい周りって何もないんだけど、、、。
一応、拠点を設置したら、最低限人の住む集落程度の場所、できれば街レベルの場所へ行けるように道も作っていく予定なので、その当たりを特定できたら、他の場所に畑を作っておきたい。マーブルが手に入れてきてくれた、大麦や小麦を栽培していきたいからね。そんなことを3人に伝えると、3人とも頷いた。ライムは頷けないから、その場をピョンピョンしたけどね。
「なるほど、わかったです。では、アイスさんは木材をそこに置いてくれるとありがたいです。」
伐採した木材を、指定された場所に、それぞれ数十本単位で置いていく。
「じゃあ、手前から順に水抜きをするけど、試しにここのやつを水抜きするから、どの位がいいか教えて。」
木材の水抜きを始めた。確か抜きすぎてはダメなんだよな、これって。あ、忘れてたけど、木材って、水を抜いてから皮を削るんじゃなかったか? まあ、いいか。その辺は3人とも上手くやってくれるだろう。とりあえず、このくらいでどうかな。木材に水術をかけて水分を抜いた。2割以下くらいまで減らせば大丈夫かな?
最初は何も考えずに水を抜いてしまったため、木材が変形してしまったので、驚いて元に戻した。幸いにも形も元に戻ってくれたので、今度は慎重に水分を抜いていくと、ほとんど変形せずに水抜きができた。水分を抜くと、やはりその分だけ小さくなるんだねぇ。種類も考えずに伐採しまくったので、木によって大きさが変わったのは改めて勉強になった。
「こんな感じでどうかな?」
「流石はアイスさんです! とても良い感じですよ!! これなら、立派な家ができるです!! さあ、ワタシ達も始めましょうか!!」
「ミャア!」
「がんばるぞー!」
ジェミニ達は、水抜きを完了した木材を広げては、大きさや種類によって改めて分類しているようだ。ってか、木材だって、1本1本が結構な重さなんだけど、全く重たそうな表情も見せずに、というか、軽々と運んでいるんですが、、、。だってさ、3人とも、私の肩や頭に乗るくらい小さいんですけど、、、。日々の戦いによる成長は伊達ではないということなんだね、頼もしいやら不思議やら何か複雑ですな。
私が水抜きを終えたそばから、3人は木材を分類していき、全ての木材の水抜きが完了して間もなく、分類も終えてしまった。
「アイスさん、お疲れ様でした。今日は歩き通しでしたから、お疲れだと思うですので、このままワタシ達が家を作るのをゆっくり見ていて下さい。」
「ジェミニ、気持ちは嬉しいけど、夕食はまだだからね。私は夕食の準備をしたいから、少し森で採集してくるよ。どんな感じになるのか楽しみにしているよ。」
「はい! 夕食楽しみにしてるです!!」
「はは、調味料とか揃っていないから、今はあまり期待はしないで。」
そう言って、森へと調味料や普通に食べられそうな植物を探しに行く。もちろん迷わないように、一々目印をつけるのは忘れない。
それなりの時間探索して、なかなか満足のいく採集ができ、拠点に戻ってきて目にしたのは想像以上に立派に仕上がった家の姿だった、、、。
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