キマイラ討伐! 〜私、被虐体質に目覚める!?〜

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 スキル【即死回避】が発動しました!


 スキル【究極背水】が発動しました!


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 ――ドガガガガガッ!!!!



 凄まじい音と共に、黒い光が辺りを包み込む。私は、周囲に自分のHPの640×4さらに【マジックブースト】の強化(バフ)がかかった必殺の一撃をばら撒いた。うぁぁぁぁぁぁぁぁ痛い! でも、気持ちいい!



 ――グォォォォォォォォッ!!



「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「うぅぅぅあぁぁぁぁっ!!」


「ひゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「うぎゃぁぁぁぁあああ!!」


 キマイラと、私たち三人+ミルクちゃんはそれぞれ断末魔の叫びを上げた。



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『エンゲージリング』により、ミルクはスキル【即死回避】を発動しました!


『エンゲージリング』により、ミルクはスキル【究極背水】を発動しました!


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 えー、巻き込んでしまった皆さんには心からお詫びを――



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 スキル【殺戮者】が発動しました! HPが回復しました!


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 あれ、スキルが発動した。そういえばこのスキル、敵を倒す度にHPが回復するとかそんな感じのスキルだった気がする。回復量が微妙だったから今まで気づかなかったけど、例えば一気に大量のモンスターを巻き込んで自爆したら、全快までもっていけるかもしれない。


 よからぬ事を考え始めた私の目の前に、再びメッセージが浮かぶ。メッセージが出すぎて忙しいなぁ。



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『ダークキマイラ』を撃破しました!


 素材アイテム『合成魔獣の毛皮』を手に入れました!


 レアモンスター討伐報酬獲得! 10000ゴールドを手に入れました!



 ココアはレベル13になりました!



 スキル【被虐体質】を習得しました!


【被虐体質】

 自分の魔法によって受けたダメージに応じてHP、MP以外の全ステータスが大幅に上昇する。

 習得条件︰自分の魔法によって合計で一定数値以上のダメージを受ける。



 魔法【ディストラクション】は【ディストラクション+】に強化されました!


 ダメージ︰消費したHPの1倍 ⇒ 1.5倍

 詠唱時間︰60秒 ⇒ 50秒


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 やった! キマイラ撃破! そして【ディストラクション】が強化されてる! ダメージが上がって詠唱時間が減っている。これは大きな強化だ。でも――


 でもなによこのスキルはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!



【被虐体質】だって? 私、もしかして、もしかしなくてもドM認定されてない!? でもちょっと、ほんのちょっと自爆することに快感を覚えてるだけで……あ、それってやっぱりドMなのかな? そうか私って――



 ――M



 そっかぁと新たな気づきを得たところで、私はやっと身体を起こして周囲を見渡すことができた。爆発のせいで霧が吹き飛ばされたのか、視界はクリア。相変わらず空いてしまったクレーターの穴と、吹き飛んでしまった周囲の木々によって、だだっ広い空間ができている。オマケに日が差し込んでいる。あんなに巨木が生い茂っていたのに……環境破壊も甚だしい。


 ふと、隣に目を向けた私は、目を見張った。



 ――美少女だ


 ――裸の



 またこのパターンですか? キマイラの擬人化美少女の登場ですか? と思ったけれど、うつ伏せに倒れているその子をよく見ると水色のサイドテールのユキノちゃんで、さらによく見るとちゃんとパンツは穿いている。黒い紐パンだけど。


 全裸の私が言うのもなんだけど、あんなお尻丸出しで恥ずかしくないのかな?


 仕方ないのでユキノちゃんの魅惑のお尻を叩いて起こしてみる。



 ――ペシッ!



 いい音がしました。感触も良好。鍛えている人のお尻はやはりハリが違うね。


「う、うぅ……そ、装備を全て犠牲にしないと防げませんでした……」


 ユキノちゃんは開口一番そんなことを口にした。それはなんというか……悪いことをしてしまったと思う。高価な装備もあっただろうに。でも、レアモンスター討伐報酬で10000ゴールドも手に入ったから、なんなら私が買い直してあげることもできるよ。


「ごめん、ユキノちゃん」


「あっ、いいんです全然! ココアさんのおかげでキマイラを倒せたんですから! しかもあれ、『ダークキマイラ』といって、キマイラの上位種です。……まず倒せる相手じゃないですよ。ソラさんでも討伐にはかなり時間かかると思います」


 身体を起こしたユキノちゃんが興奮した様子でまくしたてる。そんなに凄いモンスターだったんだ……。


「ソラさんが前に話してくれましたけど、キマイラは獅子、山羊、蛇のうちどれか一つを仕留めるだけじゃ倒せなくて、すぐに再生してしまうので、三つを一気に仕留める必要があるんです。範囲魔法でそんなに威力の高いものは、自爆魔法しかない――と思います」


「ゆ、ユキノちゃん分かった。分かったから服着よ? ユキノちゃんってブラつけないタイプなんだね!」


 私はウィンドウを操作して自分の装備を身につけながら言う。ユキノちゃんのおっぱいは小さくて、謎の光によって大事なところは隠されているとはいえ、ほぼ全裸の美少女が私の目の前で興奮(意味深)しているというのは、よくないと思う。――私の暴走を招き、事案になりかねない。


 近くでぼーっとしていたミルクちゃんを引き起こしながら放った私の言葉に、ユキノちゃんは「しまった!」という表情をして慌てて腕で胸を隠し真っ赤になってしまう。そんなことしてないで早くウィンドウ操作しなよー!




「わ、私その――代わりの装備持ってきてません……」


「えぇっ!?」


 まるで服を汚した子供が「着替え持ってきてません」と言うような。そんな可愛らしい反応だけれど、まさかほぼ全裸のユキノちゃんをこのまま連れて帰る訳にもいかない(私が通報されてしまう)ので、なんとかしないと! ……あったかなー? 余ってる装備は……あっ!!!!


「ユキノちゃんって、なんでも装備できるんだよね? だったらこれ使って? ベストマッチ賞で貰ったんだけど、なんかエクストラジョブの装備みたいで知り合いは誰も装備できないから!」



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 ユキノさんにトレードを申請しました!


『ユメ装備一式』 ⇔ 114514ゴールド


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「私、そんなお金持ってるわけないじゃないですか。高すぎぃ! です」


「ごめん間違えた!」



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 ユキノさんにトレードを申請しました!


『ユメ装備一式』 ⇔ 0ゴールド


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 私が慌ててウィンドウを操作しなおすと、ユキノちゃんはトレードを承認して、私が贈ったユメちゃんの装備を身につけてくれた。 『夢魔の竪琴』、『聖霊の強弓』、『ユニコーンの角』、『輝夜の羽衣』、『セイントグローブ』、『魔獣の毛皮のブーツ』、『創造神の加護』。

 今のユキノちゃんの見た目は、ヒラヒラスケスケのドレスのようなものを身にまとい、茶色いブーツを履いて、白い手袋を身につけ、額から白いツノを生やしている。そして背中には豪華な装飾を施された弓を担ぎ、手には小ぶりの竪琴を持っている。


 人間離れした姿だけれど、ユキノちゃんの綺麗な水色の髪とのカラーリングはバッチリ! すごく似合っている。あの服の下に黒いえっちな紐パンを穿いているという一点を除けば、まるで天使か何かのようだ。


「すごい……この装備ステータスの上昇、特に魔法防御力の上昇が著しいですね! おまけに『セット装備スキル』も付与されています! 伝説級の装備ですね……確かにこれなら114514ゴールドの価値はあるかもしれません!」


「えっ、あ、そうなの?」


 レーヴくんの装備といい、ユメちゃんの装備といい、サポートNPCの装備はどれもチート級に強いらしい。114514ゴールドはふざけて入れてしまった値段だけれど、そんなに強い装備なら、多少お金払ってくれても――チラッ


「これ、ほんとに貰っちゃっていいんですか!?」


「あー、いいよ。持ってても使えないし。使えるユキノちゃんが使うといいよ」


「ありがとうございます! お金、ちゃんと後で払いますから! 足りない分は身体で!」


 ……。


 …………。


 天然なユキノちゃんの発言に、冗談抜きで場の空気と時間が凍結した。

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