ベストマッチ! 〜私お嫁に行けなくなる!〜
◇ ◆ ◇
――数十分後
「で、結局お嬢ちゃんはセレナに弟子入りすることになったのか!」
「はい。なんかセレナちゃん。私が【看破】で変なものを見てしまったと思い込んでるみたいで……あっさりお願いをきいてくれました」
私とクラウスさん、キラくんの三人は、イベントを観戦せずに暇していたアオイちゃんと、街中で不貞腐れていたミルクちゃんと共に、いつものカフェで談笑していた。
ちなみにミルクちゃんは、私が美人さんのお胸にダイブし、お姫様抱っこされながら連れ去られたということでかなり怒っており、私が話しかけても無視するようになってしまった。――悪いのは私だけれど、さすがに傷つく。
「いいなぁ、僕もセレナさんの弟子になってみたいです」
キラくんは相変わらずだ……。
「俺もお嬢ちゃんに教えられることは限られてるから、強いやつに弟子入りするのはいいと思うぞ。……少し寂しいけど」
クラウスさん、背中を押して送り出してくれるなんてめちゃくちゃ寂しそうじゃん! でも何か勘違いしてない?
「え、クラウスさん。私、クラウスさんのパーティを離れる気はありませんよ?」
「は――?」
「少し修行して、強くなって戻ってきますから」
「……」
……。
…………。
あれ? いきなりシーンとしないでください! 私、何か変なこと言いました!?
「お、お嬢ちゃぁぁぁぁぁんっ!」
「はぶっ!?」
クラウスさんが突然私を抱きしめてきたのでびっくりした。やったイケメンとハグできた! と喜ぶよりも前に、クラウスさんのハグは装備している鎧のせいでかなり痛いということに気づいた。
「いたっ、痛いから離してください!」
「っと、悪ぃな。嬉しくてつい……」
あっさりと私を解放してくれたクラウスさん。そんなクラウスさんを、私の隣で机に突っ伏して不貞腐れていたミルクちゃんがじーっと睨みつけていた。怖い。
「まあなんだ、それはいいとしてお嬢ちゃん、おめでとう!」
「ん? なにがですか?」
私、セレナちゃんに弟子入りしたこと以外に祝われるようなことしたかな? ミルクちゃんと結婚したこと? それはだいぶ前だしなぁ……うーん、分からない。
「ココアさん、プレゼントボックスに何か入ってませんか?」
「うん?」
キラくんの言葉に、私は慌ててメッセージを確認する。すると、少し前に運営からメッセージが来ていることがわかった。
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運営からプレゼントが届いています。
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えー、なんだろう? 私何かやらかした? それともイベントの参加報酬かなにかかな? 私はウィンドウを操作してプレゼントとやらを受け取ってみる。
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第1回 トロイメ杯 ベストマッチ賞 受賞おめでとうございます!
『ユメ装備一式』を受け取りました!
『闇霊の杖』を受け取りました!
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ベストマッチ賞……? あー、確かにそういうのがあるってイベント告知の時にユメちゃんに言われたことあったなー。ってことは私の試合がベストマッチだとみんなが投票したということだろう。へぇ、ユメちゃんの装備が貰えるのか、ちょっと見てみよっと。
私はストレージを覗いてみた。えーっと、『夢魔の竪琴』、『聖霊の強弓』、『ユニコーンの角』、『輝夜の羽衣』、『セイントグローブ』、『魔獣の毛皮のブーツ』、『創造神の加護』……。えーっと、これってみんな私装備できないやつじゃん! せっかく可愛い装備なのにもったいないよ……また誰かにあげよっと。
問題はこっち『闇霊の杖』! これは明らかに『闇霊使い』の装備だ。実際に装備してみると、今まで装備していた『精霊の杖』よりも明らかにステータスが上昇しているのがわかった。これは素晴らしいアイテムを貰ってしまった。私のステータスはこうなった。
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名前︰ココア
性別︰『女』
種族︰『ホムンクルス』
ジョブ︰『闇霊使い』
ステータス
レベル︰11
HP︰640
MP︰80
STR︰8
VIT︰11
INT︰16
RES︰15
AGI︰8
DEX︰14
RUK︰30
スキル
【即死回避】 【幻惑】 【自動反撃】 【究極背水】 【初心者の証】 【殺戮者】
魔法
【完全脱衣】 【ディストラクション】 【看破】
装備
武器︰闇霊の杖 / 混沌精霊龍・カオスフェアリードラゴン
頭︰生命のサークレット
体︰精霊のワンピース
腕︰生命の腕輪
足︰生命のアンクレット
装飾品︰エンゲージリング
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「どうやら、ベストマッチ賞は投票の結果、ココアさんと僕の試合になったみたいで……」
「えっ!?」
嬉しそうなキラくんに私はとある疑問を投げかけた。
「それは――私がすっぽんぽんになったから――?」
「多分……」
――あ
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
本日何回目かの絶叫。おっと、店の中で騒ぐのはやめないと……。
このイベントで私がすっぽんぽんになったのは後にも先にもこの試合だけ。その中でこの試合が選ばれたということは……恐らく私のすっぽんぽんをみんな求めているということだろう……恐ろしい。
「私、変態だと思われたらどうするのよぉ!」
「ご主人様は変態ばい!」
「うぁぁぁぁぁぁぁぉぉぉぉっ!! こんなんじゃあお嫁に行けないよぉぉぉぉぉっ!!」
ミルクちゃんにまで見捨てられた私は、しばらくその場で絶望に暮れていた。
やがてキラくんがこんなことを言い始めた。
「――大丈夫ですココアさん! ココアさんがお嫁に行けなくなったら僕が責任をもって――」
…。
……。
………。
――あ、ポチッと
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キラさんを通報しました!
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