セレナちゃんの素顔! 〜クールビューティーの謎に迫ります!〜

「いったいどげんしたと!?」


「レーヴくーん! 私を街に帰してー!」


 不思議そうなミルクちゃんに構わず、私は空中に向けて叫ぶ。レーヴくん聞いてるかな? 早めに戻らないといけないの、どうしても――彼女に聞かないといけないことが――


 祈りが通じたのか、すぐに私の身体は光に包まれ――




 ――気づいたら例の噴水広場にいた。


 噴水広場には試合の配信を観戦していたと思われる人だかりがあり、闘技場から続々と転移してきたと思われる人達もいる。


 幸い目的の人物はすぐに見つかった。闘技場から転移してきた一団に紛れて、私は美しい銀髪を追いかける。案の定、銀髪さんは勢いよく走り始めた。あっ、待って!


「待ってくださいセレナちゃん!」


 私が叫ぶと、銀髪さん――セレナちゃんがこちらを振り向く。碧と金色のオッドアイがすごく魅力的で――思わず見とれてしまった私は、何もないところで躓いて大きくバランスを崩してしまった!


「うわぁぁぁっ!!」


 この身体バランスがとりづらいよ! おっぱい大きくするんじゃなかった!

 私はそのままセレナちゃんの前で無様に転ぶ――前に、セレナちゃんに抱きとめられた。うわぁ! 美人さんのお胸に突っ込んでしまったよぉ!

 セレナちゃんのお胸はハリがあってとても気持ちよかったです。


「――大丈夫ですか?」


「は、はいっ! 大丈夫でしゅっ!」


 大丈夫なわけないよ! セレナちゃんのおっぱいの感触が顔面に……ってなにやってんの私は! ばかばかっ!


「そろそろ離れてもらえませんか? 私、急がないといけないので」


 あ、そういえば、魔導族は街の中にいるとNPCさんたちに……



「魔導族だ! 魔導族がいるぞ!」


 ほらぁ!


「ま、待ってください! 私、セレナちゃんに話したいことが!」


「マジですか。では後で聞きます」


「あ、あの! 私素早さが――」


「――チッ」



 ――し


 舌打ちされたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?


「ご、ごめんな――うぉぉっ!?」


 すると、私の身体を唐突に襲う浮遊感。――私、またセレナちゃんにお姫様抱っこされてるぅぅぅぅぅぅ!? セレナちゃんはそのまま私を抱えて猛スピードで走り始めた。――あれ、ちょっと待って、何か大事なものを忘れてない!? あっ、み、ミルクちゃん!!!! レベルの低いミルクちゃんがセレナちゃんのスピードについてこられるわけがないよ!


「ミル――んっ!?」


「喋らないでください。舌噛みますよ?」


 み――


 ミルクちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!


 私は銀髪の美人さんに抱っこされながら、心の中で絶叫したのだった。



 ◇ ◆ ◇



 そのまま街を出て、私は人気のない場所に連れてこられた。数日前にレイプされたような場所だけど、セレナちゃんはそんなことはしないだろうし、万が一されたとしても相手がセレナちゃんならそれはそれで……ごにょごにょ。


「――ここなら大丈夫でしょう。で、話とは?」


 セレナちゃんは私を地面に下ろすと、尋ねてきた。


「あの、ミルクちゃんは――」


「ミルクちゃん?」


「――一緒にいた黒髪のメイドっ子なんですけど!」


「あ、あれ、連れだったんですか」


 あ、あれ、連れだったんですか――じゃないよ! 嫁だよ私の!

 頬を膨らませている私の顔を見てクスッと笑ったセレナちゃん。あっ、セレナちゃんが笑ったところ初めて見たかも! めちゃくちゃ可愛い! ――じゃなくて、笑うなー! ぷんぷん!


「ふふっ、それは失礼しました」


「全く、そうですよ? 今回はセレナちゃんの可愛さに免じて許しますけど」


 何様なんだ私?



「話がそれだけなら私はもう行きま――」


「ちょっと待ってください! 確かめたいことがあるんです」


「確かめたいこと?」


 セレナちゃんが首を傾げる。サラサラの銀髪が揺れてとても綺麗で――私はそんなセレナちゃんについこう声をかけてしまった。


「身体、触らせてください!」


「……通報します」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ違くて! 手! 手でいいんですちょっとだけ!」


 それならと、右手を差し出してくれたセレナちゃん。私は彼女の手に自分の手を重ねて、小声で魔法を唱える。


「――【看破】」


「――なっ!?」


 魔法の発動を感じ取ったであろうセレナちゃんは、慌てて手を引く。しかし、【看破】は成功した。私の目の前に、セレナちゃんのステータスが映し出される。



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 名前︰セレナ

 性別︰『女』

 種族︰『魔導族』

 ジョブ︰『マジックシューター』


 ステータス

 レベル︰53

 HP︰?

 MP︰4800

 STR︰56

 VIT︰63

 INT︰71

 RES︰?

 AGI︰70

 DEX︰?

 RUK︰33


 スキル

【即死回避】 【射程強化+】 【?】 【自動迎撃】 【?】


 魔法

【リフレクション】 【?】 【開放】 【自動回復】 【修復】 【マナアブソーブ】 【?】 【?】 【看破】 【幻惑】


 装備

 武器︰ビームスナイパーライフル / 三式魔導盾

 頭︰?

 体︰バトルパワースーツ

 腕︰?

 足︰バトルパワーブーツ

 装飾品︰?


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 ほら、やっぱり【即死回避】を習得してるし! でも、私が一番見たかった肝心のところは見えないなぁ……。ていうかすごいMPの量! 私もレベル50くらいになったらこれくらいのHPになるのかな?


「ちょっ! おま……何をするかと思えば……勝手に人のステータスを見ないでください!」


 あら、バレてた? セレナちゃんも【看破】を持っているから、あっ今看破されたな、とか何となくわかるのかもしれないね。


「だって……聞いても答えてくれなさそうだったから……でも大丈夫です。肝心なところは分かりませんでした」


「いや、どこが大丈夫なんですか! こんなスキルを持っていることが広まったら私のイメージが崩れ……」


「――へ?」


 私が思わず聞き返すと、セレナちゃんは露骨にしまったといった表情になった。私が見た限りではそこまでまずそうなスキルはなかったから、多分隠れてるところに何かあるな!?


「別に変なものはなかったで――」


「忘れてください。いいですね?


 セレナちゃんはいつになく慌てた様子で私に詰め寄ると、私の手に何かを握らせてきた。



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 5000ゴールドを手に入れました!


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 というメッセージが浮かぶ。手を確認すると何やら紙切れのようなお札が5枚握らされていた。セレナちゃん……トレードとかじゃなくて問答無用で押し付けてきて……これで見逃せってことだろうか。うーん、そんなに嫌がってるってことがわかってしまうと余計気になる。


「気になるなぁ……」


「……お金が足りませんか? それなら――」



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 3000ゴールドを手に入れました!


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 セレナちゃんは私の手にさらに数枚の紙幣を握らせてきた。いやいや、いくら積まれても私は――確かに気になるけどそこまで頑なに隠そうとされると、なんか可哀想な気分になってくる。そして、セレナちゃんのステータスを確認していた私はあることに気づいた。



 ――そう


 セレナちゃんのスキルや魔法の構成が、私と被る部分が多かったのだ!

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