負けました! 〜最強プレイヤーの弟子は最強だった!〜

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 スキル【即死回避】が発動しました!


 スキル【究極背水】が発動しました!


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「あぁぁぁぁぁうっ!!」


 うへぇっ、やっちゃった……。どうかな? 勝ったかな私? ミルクちゃんは? 【即死回避】が発動しなくて、もしかしたら死んじゃった……?

 快感に包まれながらその場にうつ伏せに倒れたままの私。そこにすっと影が差した。


「危ない危ない、死ぬかと思いました」


 私が恐る恐る顔を上げると、そこにはなんとユキノちゃんが立っていた。が、彼女も無事ではなくて、装備のところどころが焦げたり破れたりしている。ただでさえ露出度の高い衣装が余計にえっちだ。


「……どうして」


「魔法が発動する直前に全力で逃げてなんとか爆発の範囲から出ることができました。素早さに極振りしてなかったらやられちゃってましたね」


 素早さ極振りで爆発から逃げた……? そんなめちゃくちゃな。


「あはは……私の負けだよ」


 もう反撃する力は残されていない。くそぅ、勝てると思ったんだけどなぁ……。

 ユキノちゃんは頷くとにっこり笑った。


「ありがとうございますココアさん。いい試合でした」


 隣にしゃがみこんだユキノちゃんが、私の頭をコツンと叩いて――わずか1だけ残っていた私のHPは消え去った。



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 第4回戦 敗北しました。


 街に転送いたします。


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 そんなメッセージが目の前に浮かんで、私の視界は暗闇に包まれた。




 目を開けると、そこはいつもの噴水広場で、私の前にはクラウスさんとアオイちゃん、そして――


「てかなんでそこにあんたがいるのよ!?」


「開口一番それですか!? みんなでココアさんを応援してたんですよ!?」


「えっ、キモッ! やめてよ!」


 そこにいたのは黒髪に赤メッシュの少年――キラくんだった。昨日の試合のせいで、この子についてはあまりいい印象がないんだけど!


「まあまあ、こいつうちのパーティに参加したいらしくてさ」


「断☆固☆拒☆否!」


 クラウスさんの言葉に、私の背後からミルクちゃんがすかさず抗議の声を上げる。あ、よかった。ミルクちゃんは死んでも契約が解除されるとかそういうことはないらしい。とはいえ、痛い思いをさせてしまったのは事実なので、後でたくさんなでなでしてあげないと!


「そんな事言わないでくださいよ! 僕だってココアさんのお役に立ちたいんです!」


「え、なんかキモい」


 私がジト目で睨みつけながら言うと、キラくんは「ありがとうございますありがとうございます」とブツブツ言い始めた。これは軽く恐怖すら覚える。



「こいつの【ランダムサモン】はかなり使えると思うぞ。『輝龍 ファフニール』が召喚できれば戦略の幅はかなり広がる」


「そういうことです」


 クラウスさんに褒められて得意げなキラくん。まあこいつに関しては変態なこと以外は別に文句はないんだけどさ!


「クラウスさんがそこまで言うなら……」


「やった! ありがとうございます!」


 心底気に食わないけれど、キラくんのパーティ加入は承認されてしまったらしい。私は露骨に嫌そうな顔をしてミルクちゃんをうかがうと、彼女も全く同じような顔をしてこちらを見ていたのでちょっと笑いそうになってしまった。



「――で、皆さん見てたならわかってると思いますけど、私負けちゃいました。どうします? これからダンジョンにでも潜りますか?」


「いや、もう少しあのユキノって子を研究したいかな。あわよくば勧誘したいけど」


 クラウスさんの声に、キラくんが手を挙げた。


「それなら、大体予想はついています。あのローブの刺繍はソラさんの『蒼空騎士(そうくうきし)』のエンブレムですね。別ゲーで見た事あります」


「やっぱりソラかぁ……」



「ちょっと待って、そうくう? って何? ソラって誰?」


「ん、あぁ。ソラはベータテスター最強と言われているプレイヤーだよ。他のゲームでも活躍していて、彼のパーティは常に攻略の第一線を率いる立ち位置にいる。抜群のセンスと頭脳で、強いプレイヤーを率いるのもそうだが、初心者の面倒もよく見て短期間でトッププレイヤーに仕立て上げてしまうその手腕はもはや――」


 あー、はいはい。とりあえずめちゃくちゃ強い人ってことね。その人にユキノちゃんは弟子入りしてたんだ。そりゃあ敵わないわけだよ。

 お兄ちゃんが言っていた「強くなるには強い人に弟子入りするのがいい」というのはこのことに違いない。私のお師匠さんはベータテスター最弱のクラウスさんだし……うーん、もういっそホムラちゃんかセレナちゃんに弟子入りしちゃおうかな?


 ソラさんについて語っていたクラウスさんは、「今試合やってるからとりあえず見てみろ」と言ってウィンドウを操作する。私もイベントのボタンからリアルタイム配信のページに飛んでソラさんの試合を探してみる――あった。




 リアルタイム配信の画面には、二人の男が激しく剣を交えている。私はその内の一人に見覚えがあった。私と決闘したあの金ピカ騎士のたろうまるだ。たろうまる、ここまで勝ち上がっているということは結構強かったのかもしれない。――まあ私あいつに勝っちゃったんだけどね。


 もう一人は光り輝く剣を振り回す剣士。青い髪と同じく青いマントが特徴だ。そしてイケメン! ゲームだと、女の子はみんな美少女だし男の子はみんなイケメンなので目の保養になるよね!



 消去法で考えてあの光る剣を振り回しているのがソラさんだろう。ソラさんはスピードで上回っているのか、次第にたろうまるを追い詰めていく。


 やがて、ソラさんがたろうまるの武器を吹き飛ばして勝負あり。圧倒的な強さというわけではないけれど、危なげのない勝利といった感じだった。


「――相手によって戦い方を変えているんですかね?」


「おぉ、分かるかお嬢ちゃん!」


 なんとなく口にした言葉にクラウスさんが感嘆の声を上げた。キラくんもうんうんと頷く。


「まさにって感じですよね」


「あー、ユキノちゃんもそんな感じでした。こう……なかなか隙がないというか」


「てことはやっぱり、指導しているのはソラだなぁ……」


 クラウスさんは顎に手を当てて考え込む。



「使っている魔法は『エンチャンター』、武器は『格闘家』、装備は『アサシン』。そもそも『エンチャンター』が後衛職なのに、素早さ極振りで接近戦を仕掛けてくるっていうのもなかなか尖っているな……考えれば考えるほどわからん」


「もしかして、スキルかもしれません」


 キラくんが口を挟んだ。



「スキルで他職種の装備を身につけることを可能にしているのかも……!」

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