再びすっぽんぽん! 〜ロリ巨乳だって食べられるのは嫌です!〜

 モンスターの体長は、とぐろを巻いているせいで良くは分からないけど、その頭は私とホムラちゃんをまとめて飲み込めそうなくらい大きい。しかも、モンスターの頭の上には10本近いHPバーが存在している。つまり、昨日の『アーマードスタッグ』よりも数倍は――下手するとそれ以上強いってことだ。敵わないよそんなの!


「逃げるってどこにぃぃぃぃぃ!?!?」


「どこでもいいから走れぇぇぇぇっっ!!!!」


「私、素早さ6なんだけどぉぉぉぉぉ!?!?」


 私とホムラちゃんは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。



 ――シャァァァァァァッッ!!!!



 私の身体を衝撃が襲った。さらにフワッという浮遊感が……。なに? 何が起きたの!?

 見ると、私は浮いていて……胸から膝下くらいまではすっぽりとモンスターにくわえられていた! やっぱり! 走るの遅いから捕まっちゃったんだ!


「きゃぁぁぁぁぁっ!?!? 助けてホムラちゃぁぁぁぁん!!!! 私食べられるぅぅぅぅ!!!! えっちなことされちゃうぅぅぅぅ!!!!」


「ったくしょうがねぇやつだな! 【カラミティフレイム】!!!!」



 ――ボォォォォォォッ!!!!


 ――シャァァォォォォッ!!



 あっつ! ホムラちゃん! アイツ私ごとモンスターを燃やしやがったの!? 私の身体に直撃はしなかったけど結構熱かったよ!?


 でもおかげでモンスターは私を解放して、私はドサッと地面に落とされた。


 倒れた私の目の前に、ホムラちゃんが2本の剣を構えて割り込んでくる。――後ろ姿かっこいい! でもやっぱりボディスーツがえっちで痴女だね。


「やっぱり物理も魔法もあまり通じてないか……レベルが違いすぎる。時間稼いでやるからさっさと逃げろロリ巨乳!」


 気持ちはありがたいけど……でもあれ精霊なんだよね? じゃあ契約しないと私は……

『契約の印』はもう消費しちゃったし!


「――ホムラちゃん」


「は? なんだよ?」


「何分稼げる……?」


「うーん……1分ちょい」


「十分! よろしく!」


「――って、おいっ!」



 戸惑っているホムラちゃんを置いて、私は少し距離を置いて【ディストラクション】の詠唱を開始した。と、同時にストレージから回復薬を取り出して一気に飲む。モンスターに噛まれて半分近くまで減っていたHPはたちまち満タンになった。あれ、MPもちょっと減ってる……MP回復薬も飲んで……。


 よし、あとは耐えるだけ!




「あーもう! 知らねぇぞ!」


 モンスターと対峙するホムラちゃんは、二刀を構えて一直線に駆ける。


「――【アーマーブレイク】! 【ツインスラッシュ】!」


 ホムラちゃんはモンスターの横を通り過ぎながら数回その身体を斬りつけた。が、敵のHPはそれほど減っていない。

 昨日見たホムラちゃんの物理攻撃力は相当高かったけれど、それでも通じないということは相手のレベルが高すぎるか、物理攻撃に耐性があるかだと思う。

 でも、もしかしたら私の【ディストラクション】なら通じるかもしれない。なにせダメージ4000越えてるから。

 このモンスターの耐性が【イージスの盾】と同じようなシステムだとしたら、大ダメージを与えれば突破できるかも?


 試してみる価値はあるよね……?


「クソッ!!」


 見ると、ホムラちゃんがモンスターの尻尾によって、左手の剣を吹き飛ばされていた。――あと30秒……なんとか頑張って!


「はぁ、仕方ねぇな。こいつはあまり見せたくなかったんだが……」


 ホムラちゃんは武器を失った左腕をモンスターに向ける。


「【業火(ごうか)・破砕崩(はさいほう)】!」


 すると、なんとガシャンガシャンとホムラちゃんの左腕が変形を始める。そして、腕がなんとキャノン砲のような形になった。なにあれ……かっこいい! けどどんな仕組みなの? うーん、まだまだこのゲームには謎が多すぎるね。


「食らえぇぇぇぇっ!!!!」



 ――ゴォォォォォォッ!!!!



 轟音と共にホムラちゃんの腕から火炎が放射される。モンスターはたちまち炎に包まれた。――が。



 ――シャァァァァァァッ!!!!


 ――ブワァァァァァァッ!!!!



 モンスターが吐いた紫色の炎が、逆にホムラちゃんを襲う!


「ガァァァァァッ!」


 ホムラちゃんは苦悶の声を上げて、その場に倒れ込んだ。

 早く、何とかしないと!


「えーいしょうがない! こっちだよウナギさん!」


 私はモンスターに向かって足元の小石を投げて気を引いた。案の定、モンスターはこちらに気を引かれたようだ。……あと、10秒!



 ――ブワァァァァァァッ!!



 吐かれる炎!だが、炎が私を包み込む寸前に、不自然に左右に分かれて、私に命中することは無かった。



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 スキル【幻惑】が発動しました! 攻撃を回避しました!


 スキル【自動反撃(オートカウンター)】が発動しました!


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「お返しっ!」


 私の杖から放たれる闇の攻撃。しかし、その攻撃をモンスターは身体で吸収してしまった。まるで、まとってるオーラに取り込まれたようで、HPバーは1ミリも減っていない。



 ――シャァァァァァァッ!!



 なおも咆哮するモンスター。


 なるほど、そういうことかぁ……わかった!



 私はすぐさまモンスターに近づくと、モンスターの頭部が再び私の体を捉えないうちに、こう叫んだ。


「――【完全脱衣(フルパージ)】!! 【ディストラクション】!!!!」



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 スキル【即死回避】が発動しました!


 スキル【究極背水】が発動しました!


 スキル【自爆強化】が発動しました!


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 ――ドガガガガガッ!!!!



 美しい渓谷を――4240の威力を持つ黒い光が蝕んでいく。そして私の身体を快感が貫く。うわぁぁぁ……相変わらず気が狂いそうなほど気持ちいい……! 麻薬だよぉこれ……!


 地面に突っ伏していた私が顔を上げると、周囲の絶景は綺麗に消し飛んでしまったようだ。うわぁぁぁぁぁ精霊の皆さんごめんなさい!! 許してください!!


 ていうか結局また【完全脱衣】使っちゃったよ。威力不足が怖かったからつい使ってしまった。すっぽんぽんだよどうしよう……と思いながら視線を動かすと……



「――へ?」


 私は間抜けな声を上げてしまった。

 倒れた私の隣に――



 私と同じくの女の子が一人倒れていたからだ。

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