完全脱衣! 〜ロリ巨乳だってすっぽんぽんは恥ずかしい!〜

「【セイントウォール】! 【鉄壁の構え】!」


 たろうまるの身体を黄色い光、そして青い光が包み、すぐに消えた。多分スキルで魔法防御力でも上げたのだろう。対する私は決闘が始まっても何もしない……いや、何もすることがない。たろうまるはすぐに襲いかかってくることはなく、私に声をかけた。


「それでお前、レベルはいくつなんだ?」


「……7ですけど」


「ななァ!? ぶははははッ! まァ初心者にしては頑張ッてるよォだが、うちのたろうまるの相手ではねェよ!」


 私が答えると、観戦していたルークと、周りの数人が大きな笑い声を上げた。きーっ! ムカつく! ちょーしにのりやがってぇ!


「ちなみに俺は45だ」


 と、たろうまる。なるほど私の6倍以上ですね。これは辛い。普通なら勝てない。普通ならね! でも私には『自爆魔法(これ)』がある。当たれば絶大なダメージを与えられる自爆魔法が! レベル45のイケメン騎士がどの程度のHPなのか知らないけれど、2000以上のダメージを与えたら死ぬでしょ! 調子に乗ってられるのも今のうちだよ!


「構わねェたろうまる! やッちまえ!」


「いけっ!」


「ボコせ!」


「散々に痛めつけて殺せ!」


 ルークとその仲間たちから声援が飛ぶと、たろうまるは私の身長よりも長そうなロングソードを構えてこちらに駆け寄ろうとしてきた! 待って! まだ詠唱が終わってないの! ――時間を! 時間を稼がないと!



「待って! 一つだけ教えて?」


「なんだ? どうせ勝ちは揺るがないんだ。いいだろう教えてやろう」


 たろうまるは駆け寄ろうとするその姿勢のまま器用に停止した。――そうこなくっちゃね!


「さっきルークさんが言ってた相性のことだけど、なんで『精霊使い』は『聖騎士』に勝てないの?」


 私がそう尋ねると、また観戦していたルークたちから、ぶははははっと爆笑の嵐が巻き起こった。――もう、笑うな! こっちは必死なんだから!


「うむ、『精霊使い』は基本的に魔法攻撃しかできないのに対して、『聖騎士』は魔法防御に優れている。さらには『聖騎士』の固有魔法【イージスの盾】は、威力3000以下の魔法を全て無効化する力がある。つまりお前は俺に1ダメージも与えることができない」


 な、なんだってー!? 威力3000以下の魔法を無効!? ってことは【ディストラクション】も無効? くぅぅ、威力がまだ足りないというの?


「威力3000より高い魔法なンて、まず無いだろォ? てかないわ。ベータテスター最強の『ソーサラー』でもそンな魔法使えないわ。ハイ終わり、オレらの勝ちィ!」


 煽ってくるルーク。ムカつくけど……そんな魔法は私も使えない。打つ手なし。これは負けたかなぁ……。

 でも諦めない。――なにか、なにか手はないの?

 私はたろうまるの話を聞くふりをしながらウィンドウを操作してスキルを再確認する。なにか、上手く威力を上げる方法は……。


 ん? ちょっと待てよ……これなら? ――いや、でも上手くいくかなぁ。――時間が、もう少し時間が欲しいよ。



「そろそろいいか。殺すぞ?」


「ちょっと待って! この決闘で私が勝ったらあなたたちはどうするの?」


 頭を使え、時間を稼げぇぇぇっ! お兄ちゃんとのやり取りで磨いたこの話術スキルでぇぇぇっ!



「そうだな。万に一つそのようなことがあったら、大人しくお前たちから手を引くと約束しよう」


「じゃあ、私が負けたら……?」



 ……ん? このスキルもしかしてこう使ったら……?



「クラウスから有り金を奪い、お前を連れていく」


 で、えっちなことするんですね! そんなの嫌だ! 当たり前じゃん!


「お嬢ちゃん! こんなヤツらの言うことなんか聞かなくてもいい! 今すぐ決闘は中断だ! 中断しろ!」


「おい、うるせェぞクラウスくん! 大人しく見てろや!」


「ぐはっ……!」


 叫んだクラウスさんが、ルークと仲間たちに押さえ込まれる。でも――中断する気はないよ! だって

 稼いだ時間で何とか見つけられたよ! ! 恥ずかしいけど!


 私はチラッと【ディストラクション】の詠唱時間を確認する。よし、こちらも残り20秒を切っている。



「話しすぎたな。じゃあ死ね」


 たろうまるが私に駆け寄り、剣を素早く私の脳天に振り下ろす。でも大丈夫、



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 スキル【幻惑】が発動しました! 攻撃を回避しました!


 スキル【自動反撃】が発動しました!


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「そこだぁぁぁぁっ!!」


 私はたろうまるの攻撃を回避し、杖から影の攻撃を放つ。が――


「【イージスの盾】!」


 たろうまるが魔法を発動すると、光り輝く2メートル四方ほどの大きな盾が出現し、私の攻撃を音もなく吸収してしまった。あれが【イージスの盾】。うーん、強そう。


「ゼァァッ!!」


 盾の背後からたろうまるが強襲してくる。大振りの、首を狙った一撃。ある程度予測していた私は、身を屈めて何とかその攻撃を回避した。



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 スキル【自動反撃】が発動しました!


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「はぁっ!」


 私の二度目の反撃も、吸い込まれるようにしてたろうまるの背後の【イージスの盾】へと消えていく。なるほど、そういう仕様だったのね……。放たれてくる魔法を無差別に吸収する盾のようだ。


「何度やッても無駄だッての! 大人しくおっぱい揉ませろよ」


「うるさぁぁぁぁいっ!!!!」


 本性を表したなルーク、このクズヤロー! 欲望丸出しにしやがってぇ! プンプン丸だぞ!




 私はまっすぐに【イージスの盾】へと走った。後からたろうまるが追いかけてくる気配がする。――そう、そのままおいで!


 私が【イージスの盾】に抱きつくように飛びついた時、ちょうど【ディストラクション】の詠唱が終了した。私はそのまま【ディストラクション】を発動待機状態にして、スキルウィンドウを操作し、別の魔法を選択する。



「出☆血☆大サービス!! 冥土の土産に持ってけ!! 【完全脱衣(フルパージ)】!!」


 絶対に使わないと思っていた【完全脱衣】。使用すると、詠唱時間は無しにすぐさま魔法が発動した。



 ――バシンッ!!



 という音ともに私の装備が全て弾け飛ぶように消える。ぽよんと揺れるおっぱいの感覚……ん?

 なんと驚いたことに私は生まれたままのになっていた! なんで! 装備全部外したら下着姿じゃないの!? いや確かに下着姿は『完全』脱衣とは言えないけれど!


 しかもご丁寧なことに、私の胸と股間の大事なところは不自然な白い光で隠されていた。これならテレビで放送しても大丈夫! 無修正版はDVDを買ってね! ――じゃなくてぇ!!!!


「「……は?」」


 止まる時間、集まる視線、血が上って赤くなる顔。うわぁぁぁぁぁっ!! もう耐えられない!!



「見ないでぇぇぇぇっ!! ――【ディストラクション】ッッッ!!!!!!」

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