第4話 今起きている現状①

 冷たい黒い空間の中でうずくまるように眠っている。


 アオイは何かを思い出すかのようにうなされていた。


「目を醒す時が来た。ランスロット。あなたは世界を救うための最後の希望·····」


 脳裏には聖女の姿の女性が光に覆われていた。光のせいか影となっているため、顔が見えない。


「·····。なんでここに居るんだ。オレは何をしていたんだ」


 アオイは記憶がない空白を聞くために聖女に問いただすが何も答えなかった。まるでプログラムかAIのように素っ気のない声で───


「現実世界のプラグ・マティコティタ。そして仮想世界であるイデア。この世界が混合すると世界が混乱を招く·····」


「ちょ·····。それってどういう意味だ·····?」


 淡々と進められていることに戸惑うが、端的にまとめるのなら世界の危機が陥っている。


 それがわかったアオイは様々な疑問が浮かんだ。


 なぜこの世界に居て、ロボットとなり、最後の希望として聖女に託されるのか。


 色々とあげたいが大きな謎はこの3つが今でも知りたいものであった。


「あなたは目を覚まし。世界を救うのです。そしてあなたは精霊の名のもとに、私に出会えるでしょう·····」


 そう言うと聖女の身体から白い光を放つ。

「ちょっと待ってくれ! まだ聞きたいことが!」


 あまりの眩しさに腕で目元を塞ぐと聞き覚えある女性の声が耳に少しづつ入ってくる。


「·····アオイ。アオイ!」

「ん、んぅぅぅ·····」


 目を覚ますとゆっくりと身体を起こす。ぼんやりしたまま周りを見渡すと、水晶のような物から身体と言うかホログラムみたいに映し出されている。


「·····。ここは?」


 松明の光しかない薄暗い部屋にいた。丸いテーブルの周りには見覚えない人が4人居た。


 その人達はアオイ取り囲むように座っている。


「よかった! アオイ。痛みはない?!」


 ものすごく心配するように赤髪のポニーテールの少女が顔を近づける。


「ちょ?! モチモチした巨人が居る!」


 目を飛び出すほど驚くと尻もちを着く。


「ちよっと? 誰が太ってるって?」


 ニコニコと赤髪の少女は黒いオーラを出していると


「そ、そんなこと言ってねぇ! てか。その声はトウコか?!」


 改めてアオイは周辺を見直すと身体は人間の手のひらサイズくらいだった。


「あれ? オレ。小さくなった?」

「違うわよ。義体ソーマと呼ばれるもので小さくされてるだけよ」

「そ、そうか·····。よくわからないけど·····」


 頬を指でポリポリと掻く。状況が飲み込めなかったが、さっきまでの出来事のせいで慣れてしまっていた。


 すると1人の鎧を着ている男性が───


「その服装は学校制服だな?」

「え? はい? でも、何故それを·····」


 最初は松明の灯りが足りてないせいか、顔はハッキリと見えなかった。


 その質問に対してアオイはある謎が産まれた。それはトウコ達の服装は中世のような鎧や服装と言ったものになっており、その1人が“制服”を知っている。


「·····。君と同じニホン人だからね」


 鎧を着た男性がアオイに向けて少しだけ顔を近づける。


 よくよく見ていると黒い髪に緑色の瞳。そして目立つほど見える十字架のピアスを付けていた。


「ニホン人·····。あの。オレはなんでここに」


 本来は聞きたいことが山ほどあるが、言葉が頭に浮かばないほど、迷っている。


 何故ロボットになっているか。ここはどこなのか。そして何が起きたのか·····


「その顔だと目を覚ましたのが初めてみたいだな·····。その前に自己紹介しよう。オレは倉間 凖一クラマ ジュンイチだ。ジュンでいい。そして·····」


 トウコ達に目線を送ると───


「名前は分かるよね·····。改めて初めまして私はトウコ・クレハ。こう見えて東洋人のクォーターよ。右からアレックス・フレット。ルーニャ・リネンよ」


 トウコの紹介で見ていくとアレックスと言う少年は白い髪が目立つほど、綺麗なフェザーマッシュだ。そしてルーニャはメガネを掛けており、大人しそうな見た目でミカンのようなオレンジ色のショート髪だった。


「オレはアオイ。水無月 ミナヅキ アオイ。まずここはどこなんだ?」


 少し不安そうに周りを警戒していた。見知らぬところに居るためか、気を張っていた。


「オレが説明する。ここはリュケイオンと呼ばれる国だ」


 ジュンが淡々と口を開き始める。


「リュケイオン? ニホンとは違うのか?」

「ああ。ここは別の世界·····。いわゆる異世界だ」

「え? 何を言っているんだ·····?」


 突然の応えに戸惑っている。アオイは最初は夢だと思い、頬をつねる。痛みが伝わってくると正夢だとわかった。


「そんな事しなくても本当だ。ただあまり説明をするには長くなるな·····」


 ジュンは端的に説明をするために、思考を回していた。


「まぁ、それはそうとして·····。なんでオレを目覚めさせた? 理由があって呼んだよな?」


 アオイのその一言が周りの空気が冷たくなった。何かを躊躇うかのようにアオイから目線を逸らしている。


「そう·····。ね·····。突然のお願いになってしまうけど」


 柔らかな声でルーニャはどう説明をするべきなのか、少し悩んでいた。


「オレが言うよ」


 突然。アレックスは何かを決心がつくように、咳払いをすると───


「オレ達と協力してくれ。魔法騎オリジンの力を借りたい! 頼む!」


 と頭をテーブルに付けるように下げる。


「·····。は? ちょっと待て。なぜ手を借りたい?」

「簡単に言うと世界を救って欲しいの。その蒼い魔法騎アロンダイト? の力が必要なの」


少しの間が開き、アオイの思考回路が止まっていた。トウコの理由を聞いてどう飲み込むべきか悩んでいた。ただ思い付いた言葉1つ。


「はぁ?!」


 何故世界を救うためにアオイが必要なのか·····。それが真っ先に疑問が産まれると頭がショートするくらい、表情が驚いた状態のまま固まった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る