第3話 反撃
3対1と言う不利の状況にも関わらず。1本の剣を敵に向けている。まるで背後は崖に追い込まれている状態に近かった。
そしてアオイは初めての戦闘経験に体が固まるように緊張が襲われていく。
「いくわよ!」
トウコの合図と共に一蹴りで前進する。
「撃て! やつを落とせ!」
白い騎士達は魔法の矢を放つ。接近するまで半分の距離に到達すると剣で矢を振り払った。
「凄い·····。これならいける!」
彼女に操られるまま、身体が自然に動く。無茶のない動きがアオイの
「クソ! なら! 円卓の地盤として死ね!」
中央に居た白い騎士が背中に背負っていた長柄の斧に持ち替えた。先端にある槍のように鋭い刃で一突き。
するとそれを見切るように身体を捻らせて、白い騎士に近づく。
「な、なに?! ギリギリのところで避けただと?!」
わずかな距離になると、急いで背後に下がろうとするが────
「てぇああああ!」
トウコの掛け声と共に白い騎士の喉元に向けて剣を突く。すると隙間から白い煙が漏れ始めた。
「しまっ?! うわぁ!!」
刺した状態のまま右に払うと頭部が取れる。そして切断部から心臓部に向けて剣でもう一度差し込む。
奥深くまで行くとぐったりと白い騎士が倒れ始め、刺し口から煙が勢いよく吹き出た。
「た、倒したのか?」
アオイは今までの出来事に状況が飲み込めずにいた。あまりにも拍子抜けしている彼にトウコは───
「まだ敵が居るから気を抜かないで!」
それを聞いて「ハッ」とさせて、アオイは残りの2体の白い騎士の方向に身体を向ける。
「クソ! 小国の分際で! 円卓の名のもとに! 我らは世界の真理を果たすために!」
やられたことに対して1体が長柄の斧を構える。
アオイ達に向けて一振。剣で塞ぐとその衝撃か周りの建物の窓が割れた。
「お、重めぇ! パワー負けしそう」
「ふん! やっぱ小国だな! このまま切られろ!」
足を踏ん張っていくがみるみると足が沈み始めてくる。
「少しだけ耐えて! タイミングは私が!」
「わかった。急いでぐれぇ!」
歯を食いしばるようにトウコの指示を従う。
だが、少しづつ斧の刃が顔までに近づき、「死ぬ」という焦りと恐怖がアオイの本能が襲われていた。
そして。それを見切るようにトウコが剣を斜めに傾けた。力を入れた反動により、斧が流されるように地面に吸い込まれる。
「や、やばい!」
白い騎士は急いで長柄の斧を引き抜こうとするが気づいた瞬間。トウコが振り払った剣によって腕が切断されていた。
「逃がさない!」
「やめろぉぉぉ!」
トウコは体を時計回りに身体を捻らせて、腹部を真っ二つに横で切った。
剣術を慣れた手つきで倒しているアオイ達の姿が最後に生き残った白い騎士は戸惑っていた。
「クソ。あいつは何者なんだよ·····」
前進してくる蒼い
「お、思い出した。お前は裏切り者の·····」
「は?」
アオイは「裏切り者」という言葉を聞くと足が止まった。自身の存在を知っているとわかると───
「どういう意味だ? オレはお前のことは·····」
「うるさい! 裏切り者のランスロットが!」
白い騎士は憤怒を見せつけるように、勢いよく背負っていた長柄の斧で振りかざしてくる。
「なんだよ! なんでこんな目に」
スレスレの所で斧が横側に振り落とされた。身の覚えがないことに戸惑っていたアオイは───
「おい。質問に応えろ! オレは何者なんだ!」
「お前は
振り降ろした斧で足元を水面切りをされる尻もちをつく。
「しまっ!」
「くっ! 1回引くわよ!」
崩された隙を突いて、斧を横に振りに来るが上手い具合に身体を寝かせて攻撃を避ける。
急いで横に転がったあとすぐに起こす。
「裏切り者ってなんだよ。意味わからねぇ·····」
事実を受け止めることはできなかった。ランスロットと言う名前を聞いて違和感を抱いていた。
「お取り込み中で悪いけど、奴を抑えないと街が·····」
トウコの言う通り、白い騎士は我を失ったかのように斧を振り回していた。
まるで裏切りに対して酷く打たれたかのように、自暴自棄をしている。
「くっ、だけど·····」
「でも。話は聞いてくれるないわ·····。パイロットを取り押さえる以外はない·····」
「·····」
彼女の意見は筋を通っているため、アオイは心の中では頷くほど納得していた。
もし出生のことが分かれば何かしらのヒントになるからだ。
「わかった。頼む·····」
息を飲み込むように彼女に託す。
「任せなさい! あなたが何者かはわからないけど、取り押さえるわ!」
トウコが承諾するように
迷うが無いような前進に白い騎士は怒り狂わせている。
「アロンダイトめぇ! このハルバードで倒してやる! アーサー王を裏切ったことに後悔するといい!!」
白い騎士であるハルバードが斧をハンマー投げのように飛ばす。
回転する斧が草刈りをするように屋根を削っていた。
アロンダイトは膝を深く沈めるとバネのように跳ね上がる。そして落下が始まるとハルバードに向けて剣を上げていた。
「これで!」
トウコは剣を真上に引き上げ、斬る体勢でいた。
「この野郎! 空中で避けられるわけないだろ!」
急いで弓に持ち替えるとアロンダイトに向けてマシンガンのように魔法の矢を放つ。だが、冷静さを失っているせいか標準が合わずに外れてしまう。1発も当たらなかったことで白い騎士のパイロットが死を悟ると物乞いをするように────
「あ、当たらない?! うわぁぁぁぁぁ!」
「 おりゃぁぁぁぁぁ」
トウコは落下を利用して胸の辺りを切りつけた。その反動で胸の中にあった、宝石のように輝いた物が半分ほど埋まった。
するとハルバードの目元が輝きを失い、まるで人形のように魂が抜けたかのように、煙が勢いよく噴出したあと、ゆっくりと崩れていった。
「·····。やったのか?」
呆然としているアオイは唾を飲み込む。生きた心地を味わうことはできなかったが、心臓の鼓動が弱まるように、剣を握ったまま肩をおろした。
「ええ。マルスコアを潰したから、動かないわ」
剣を離すと1歩後ろに下がる。人を殺してないと願うばかりのアオイは急いでハルバードのパイロットを確保をするために───
「中の人をどうしたらいい?」
「私が降りて探すわ。少し待っ·····?!」
切り口からパイロットが導火線に火をつける様子が目に映っていた。
ハルバードの周りにはガソリンのような匂いがツンっとテレパシーによって鼻にくすぶられると。
「やばい! 逃げるよ!」
急いで離れようとするがハルバードから白い光が放たれる。
それを気づいたアオイは両腕で胸元をガードすると、自爆に巻き込まれる。
「ぐぁ!!」
数百メートルほど吹き飛ばされると、肩や太もも、そして顔の装甲が凹んでいた。その凹みがアオイに向けて痛覚が走り出し、身体を起こすにも限界を感じるほどだった。
「アオイ! な、なんで庇うの?!」
トウコが言うのも無理もなかった。操作の権限があると本来はパイロットにも痛みが入る仕組みになっていたが、アオイが彼女を守るために自身の方に変えていた。
「へへ·····。命の恩人だからね·····。がはぁ·····」
人間で言えば今は重体に近い状態だった。仮に生身の身体であれば、ほぼ即死だった。
「バカ! 早くデッキに行かないと! こちらトウコ・クレハ! 蒼い
テレパシーで本部に向けてトウコが状況報告すると、少しずつ意識を失うようにアオイは目を閉じる。
(戦いは切り抜けた·····。けど、ここはどこなんだ·····)
心の中で呟くとガクッと首を下に向く。
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