第8話 突然、学園に入学する事になりました。
―――オルペリウス公爵執務室
「父様、大切なお話とは何でしょう?」
「突然の事になるが、サフィリーンは今年度から学園に入学する事になった。」
あれ…?
私、来年度入学予定よね?
愛らしい瞳をまん丸にするサフィリーン。
( 皇子が周到に根回ししており、私に話が通された時に既に決定事項だったのだ… )
公爵にとっては目に入れても痛くない大切な愛娘。
器関係で仕方なく…本当に仕方なく渋々了承するしかなかったが、本音は時期皇妃となる婚約も嫌で仕方ない。
子を愛する親にとって皇宮など伏魔殿も真っ青な策謀計略を好む化け物だらけである。
もう高位貴族に女児が誕生しても入れ替わる事の出来ない年の差になってしまい諦めたが、まだ幼い頃は毎夜の様に祈ったものだ。
一度、排卵誘発成分のあるオルペリウス領産のお茶を高位貴族夫人達に贈ろうとして、妻に必死の形相で制止されたのは残念だったが、あれを贈っていたら…と後悔したくらいには、皇子との婚約は歓迎してはいない。
「サフィリーンがとても優秀であると判断されてな。」
「父様…確か早い入学には試験がありましたよね?」
「ああ、サフィリーンは優秀過ぎて必要ないそうだ。」
事実、サフィリーンは非常に優秀であるが、どのように優秀であっても、慣例として試験はある。
「父様、殿下が…ですね?」
「…ああ。恐らくな。私に話が来た時には決定事項であったからな。」
オルペリウス公爵家は格式高く、皇国でも長い歴史を持ち、幾度か皇族とも縁を繋いでいる為に、皇族の血も入っている。
臣下としても優秀で、常に皇国の深部を担う役職を与えられてきた。
本来、かなりの力を持つオルペリウス公爵家に、令嬢の入学が決定事項として学園が伝えて来る事は有り得ない所か、公爵家から厳重な抗議の上、学園への毎年の多額の寄付金を引き上げられる事も予想され、自殺行為なのである。
そんな命知らずな暴挙が許されるとすれば、背後に公爵家以上の最高権力者がいなければ…
という流れを見ても、皇子が首謀者で間違いないと公爵もサフィリーンも行き着いている。
「決定事項であって、拒否は許されていない。明日、制服の採寸に仕立て屋が来る予定だ。」
「後、3ヶ月程度ですね…準備大丈夫でしょうか。」
「間に合わないというのはないだろう。サフィリーンが準備が終わらなければ、入学式を延期するだろうよ。」
ははっと笑った公爵は冗談めかして話したが、皇子の今までの寵愛を思えば、やりかねないだろうと思っている。
「ふふっ、それはないでしょうが、私も座学を2倍にして入学出来るレベルに間に合わせますね。」
サフィリーンの座学やその他のレベルは、入学と同時に卒業出来るレベルなのだが、その事をサフィリーンは知らない。
「父様、カリスタにも話してもいいですか?」
カリスタとはサフィリーンの専属侍女である。
「ああ、いいとも。話してきなさい。」
サフィリーンが去った後、静かになった執務室。
公爵は大きな溜息をついた。
親である陛下並に皇子を拝見する日常、サフィリーンの傍に常に居る様子、此度の学園入学の根回し。
「恐ろしい程の寵愛…いや執着か?学園でサフィリーンに何かあれば、その者の首が飛ぶな。」
公爵家のサフィリーン付きの影と護衛人数を増やすか…
息子であるレイオスがまだ在学中なのが、僥倖だ。
あいつはとても妹思いだからな。
力になってくれるだろう。
公爵は疲れたように目を瞑った。
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