《1》彼女は隣



【著者のリアル多忙のため次回投稿は未定となります。あらかじめご了承下さい】



気づいた時から彼女はいつも彼の隣にいた。

生まれたばかりの頃から彼の隣のベッドに置かれ、彼の横で彼と一緒に眠り、彼と同時に泣き彼と同じ笑顔で母親に抱かれる。

彼の母親と同室で出産に望んだ彼女の母親は、彼の母親が彼を出産した数時間後に彼女を出産した。共に初産ということもありすぐに打ち解けあった母親たちは住まいも近所だったこともあり夫たちを説き伏せ思いきって一つのアパートに隣同士になるよう引っ越しをした。

アパートでは彼と彼女が小学校に上がるまでを過ごし、小学校に入学してからは建て売り住宅に居を移し再度隣同士として生活を始めた。

そう、彼女はいつも彼の隣だった。しかし小学校にあがってからは勝手が少し違っていた。

小学校では彼の隣は隣でも隣のクラスに六年間振り分けられた。それは中学に入ってからも同じでいつも彼の隣のクラスで学校生活を送っていた。

生まれたときから一緒だった幼なじみの強みは小・中と九年間違うクラスで過ごした永い空白の時間で見るも無惨なほどか細く脆い糸屑のような稀薄な繋がりへと変貌していた。

その間に彼は彼女とも仲の好かった女友達と関係を持ち、さらに彼女よりも強い絆をその女とつくり彼女の心を大きく重く掻き乱した。

もちろんその件で彼女と彼の親たちの仲も悪化し隣同士でありながら今は顔すら合わせていない。

しかしそれでも、それだけのことが起きても彼女の居場所は彼の隣だった。

彼女には彼の隣に拘る呪いがあった。

そしていま今度こそ彼女は彼の隣にいる。

朝の教室に彼が扉を開けて入ってくる。

彼が彼女の隣の席につくと彼女はおはようと声をかけた。彼もそれに応えるようにおはようと返す。

いまやっと彼女は彼の本当の隣にいる。

彼女は念願の同じ学校の同じ教室の初めてとなる隣の席で彼と一緒に授業を受けることが叶っていた。これ以上彼女にとって嬉しいことはない。

そして隣の彼は気づく、彼女の初々しい髪にもあの今朝これ見よがしに見た青いヘアピンが留めてあることを。

その青いヘアピンを留めている彼女の名を眞下隣といった。



―次回―


彼は知らなかった。彼女も自分と同じ高校を受けてたことを。




【以下カクヨムでの追記文】

と、このような次回予告をしていますが、この過去作品はここで終了となり完結となります。

予めご了承ください。

最後までお読みくださり誠に、ありがとうございました!



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青いヘアピン 挫刹 @wie

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