《1》離婚の理由
【そんなにハーレムものがお好きなんですね?】
新しい家で生活を始めて数日が経った。
引っ越しの荷物は母の方が多かったぐらいだから今はもう片づいている。
新しい部屋には一人部屋をあてがってもらった。他の子供部屋は長女の部屋と双子姉妹の部屋。そして四女と五女で一つの部屋があるようだ。
何気に広い家だと思う。
少しの違和感はあったがそれももう少し落ち着けば無くなるだろう。
いまは朝の支度の時間だ。
二階への階段を上がると双子の片方が降りてこようとしていた。それを察して途中の踊り場で道を開けて待つ。
「ありがと」
すれ違い様に礼を言って通りすぎていく。
揺れる短い髪は双子の妹の方だろう姉の方は長髪だったはずだ。
「全然」
特に当たり障りのない返答だけして二階に上がろうとするとそこでねえと呼び止められた。振り向くと三女である双子の妹がこちらを見上げている。
「お義母さんとあなたの本当のお父さんが別れたのはあなたの所為だってほんと?」
他意のない素朴な疑問だというのは表情を見て分かったので素直に答えておいた。
「そう」
三女はふーんとだけいってダイニングの方へ消えていった。
改めて二階へ向き直すと今度は双子の姉の次女が腕を組んで待っていた。
「本当にそうなんだ」
急いで二階に上がると次女の視線を感じたまま目も合わせずにすれ違う。
「私たちのお母さんのことは知ってるでしょ?」
背中越しからそんな言葉をかけてきた。むこうの実母のことだろう。
「同じ離婚だって聞いてる」
「そう。育児に、旦那の世話にと疲れたんだって」
呆れて言うからこう返した。
「五人も娘がいればそう思うかもね」
それを聞いて次女はクスリと口許で笑う。
「良いこと教えてあげる」
「なにを?」
それは嫌な予感だった。
「私たちのお母さんは今、お母さんの実家で暮らしてるわ」
間を空けてきたので次の言葉を待つ。
「私たちの……残り二人の妹たちと一緒にね。可愛いわよ。二人ともまだ小学生だもの」
次女は軽く手を振って階段を降りていく。
「私たちはね。ほんとうは7人姉妹なの」
それだけを言い残して。
気づくとそれを見送ってから心の中で呟いていた。
マジでか……?と。
―次回―
新しい家を外から見たときから感じていた違和感は収まるどころかさらに強くなっていた。しかしその原因に気付いたときには全てが遅かった……。
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