第10話 ポーションの品質向上対策
私は、出来上がったポーションの小瓶と、今までメモを取ってきた反古紙をソファのテーブルの上に並べて頭をひねっていた。
一応、いちばんよく出来た「普通で少し甘い」ポーションを作る工程に、「すぐにろ過しないで、葉を少し漬け込んでおく」とか、「漬け込んでおくときに棒で撹拌する」などの手間を加えてみたが、「普通」の品質が上がることは無かった。
そんなメモ書きがバラバラと散らばった状態なのを、通りかかったお母様が目にとめた。
「あら、こんなに試行錯誤して作っているのね。感心だわ。でも、このまま書き溜めていくと、調べた成果がバラバラになってしまうわね。ノートが必要かしら」
そう言って、家の中を探してきて未使用のノートを数冊くださった。
私にやっと専用の研究ノートができたのだ!
◆
そして話は戻って、ポーションの品質向上についてだ。色々手を変えても品質が変わらないということは、そもそも、材料が『しおれた』葉っぱだったからじゃないだろうか?……そう、最初に気になっていた点だ。
厨房へ行って、ボブに質問してみた。
「ねえボブ、しおれた葉っぱを材料にして美味しい料理はできるかしら?」
「うーん、それは無いんじゃないですかね。俺は朝早くに市へ行って採れたての野菜を買ってきますよ。一番いいのは自分の畑で栽培した取りたてが一番でしょうがねえ……」
お屋敷に畑も作れませんしね、と笑って答えてくれた。
「畑、かぁ」
私は自室に戻り、『錬金術入門』を読みに戻った。確か、良い土作りの項目があったはずなのだ。
うーん、うーん。私はパラパラとページをめくる。
あった、『豊かな土』。
……なになに、『肥やし』『栄養剤』『土』を魔力で温めながらかき混ぜる(これを錬金発酵という)と、植物の育成に有効な『豊かな土』が作れる。
『肥やし』は、馬糞や人糞など(ええっ!)
『栄養剤』は錬金術で作成する(別項参照)
『土』は、森などにあるふんわりとした『腐葉土』が望ましい。
『栄養剤』のページはっと……。
『栄養剤』は、植物類と水と魔力草を混ぜて作る。
……栄養剤だけ随分書きぶりが適当じゃない?
ここまで調べた手順をお母様に説明して、ゆくゆくは自分の薬草畑を持ちたいと交渉してみた。
実際に畑の場所が必要になるまでに時間がかかるので、その間に場所の手配はお父様と相談してくれるそうだ。
あとは、庭師のダンにも畑作りの段階になったら手ほどきをしてくれるよう、依頼しておいてくれるらしい。
「……それにしても……肥やしを温かくして混ぜるの?臭いそうね」
そう言ってお母様はハンカチで鼻を覆って行ってしまった。
……私だってそれは思ったわよ……。錬金術って臭いのもあるのかあ……。
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