第9話 ポーションを作ろう④
お父様のことを【鑑定】した時、なにか増えたと思ったら、「賞罰」という項目が増えたらしい。私の能力も少し変わっていた。
【デイジー・フォン・プレスラリア】
子爵家次女
体力:10/10
魔力:150/150
職業:錬金術師
スキル:錬金術(2/10)、鑑定(4/10)
賞罰:なし
職業が、錬金術師になってる!多分ポーションの代金をお父様から頂いたからだろう。そして、鑑定スキルが上がっていた。
◆
そして、問題はポーションの苦みについてである。
苦いと言ったらお野菜よね。
厨房に行ってみることにした。
厨房には料理長のボブがいた。
「こんにちは、ボブ。少し教えてもらいたいことがあるのだけれど」
コクリと首を傾げて話しかける。
「おや、お嬢様が俺に質問ですかい?なんでしょう?」
エプロンで手を綺麗にしながら、私の顔を覗き込む。
そこで、ポーションを作るのに葉っぱをすり潰したり、みじん切りにしたりしたら苦くなってしまったことを話した。そして、苦いといえば野菜なので、ボブに聞いたのだという事情を話す。
「そうですねえ……ああいう葉物類にはえぐみや苦味があるんですよ。だから、そういう葉っぱは、何もしないですり潰したりみじん切りにするのはダメなんですよ」
うんうん、と私は頷き、メモをとる。
「そういう場合は、塩で揉むとか、あとは塩で揉んでお湯でサッと下茹でしてから使うとえぐみが取れるものもあります。下茹でしたら水で冷やしてあげてくださいね。あ、長く茹でちゃダメですよ!」
……長く茹でちゃダメ、と最後までメモをした。
「とっても参考になったわ、ボブ!ありがとう!」
そうして、またお母様の許可を得る為にお母様の元へ走った。
「女の子があんまり走るものではありませんよ」
少しお母様に窘められてしまった。
ごめんなさい、とお母様に謝ってから、苦味を除くために塩が必要なこと、湯で茹でる必要があるかもしれないので、ザルが欲しいことを伝えた。
お母様は、エリーに言って、倉庫の塩と、厨房の余っているザルを譲って来てもらって、私に渡してくれた。
◆
塩とザルをケイトに持ってもらって、私は実験室に向かった。
「下茹では、お嬢様はいきなり出来ないでしょうから、私がやりましょう。見ていてくださいね」
そう言ってにっこり笑ってくれた。とてもありがたい申し出だ。
そういえば、お父様とお母様の考えで、私の実験の時の見守りとお手伝いについては、基本的にケイトだけが担当することになった。そして、彼女だけには、私の【鑑定】の能力を知ってもらうことになったのだ。
……と、説明は置いといて。
「そういえば、どちらかの葉っぱだけが苦いのであれば、そちらだけを処理すればいいのよね」
ぽっと思いついて、それぞれの葉っぱを齧ってみた。
「……差はあるけれど、どちらも苦いわね」
私はその苦味に顔を顰めながら呟いた。齧った葉はお行儀が悪いかもしれないが、ゴミ入れにぺっとした。
「じゃあ両方とも処理しましょうか」
ケイトに言われて、うん、と頷いた。
私は塩揉みしてから水で洗ったものを作り、ケイトには塩揉みしてからサッと湯掻いて水で冷やしたものを用意してもらった。当然下処理した葉は水気をしっかり切ってからみじん切りしてある。
まずは、塩揉みしただけの葉から試すことにした。
癒し草と魔力草を分量通りビーカーの中の水に入れる。
そして、魔法具の加熱器の上にビーカーを乗せて、加熱し始めた。
ビーカーの内側に小さな気泡が付き始めた。
【ポーション】
品質:普通 ー
詳細:有効成分は薄め。
もう少したつと、気泡が大きくなってきた。
【ポーション】
品質:普通 ー
詳細:有効成分はやや薄め。
さらに経つと、時々ポコポコし始めた。
一応、棒で優しく撹拌をした。
【ポーション】
品質:普通
詳細:有効成分は十分抽出されている。若干苦い。
やった!苦さがだいぶ減っている!
私は、そのちょっと苦いポーションを布で漉して、瓶に入れた。
次は、塩もみしてサッと湯掻いたものを使う。
癒し草と魔力草を分量通りビーカーの中の水に入れる。
そして、魔法具の加熱器の上にビーカーを乗せて、加熱し始めた。
ビーカーの周りに気泡ができて、小さな気泡が付き始めた。
【ポーション】
品質:普通 ー
詳細:有効成分は薄め。
もう少したつと、気泡が大きくなってきた。
【ポーション】
品質:普通 ー
詳細:有効成分はやや薄め。
さらに経つと、時々ポコポコし始めた。
今度も、一応、棒で優しく撹拌をした。
【ポーション】
品質:普通
詳細:有効成分は十分抽出されている。若干甘味を感じる。
「やった!苦味が取れたわ!ケイト、普通で少し甘いポーションが完成したわ!」
私は、普通の品質の苦味のないポーションを作ることに成功した。
そうだ、と思って、ケイトの指先を見てみた。すると、やはり日々の仕事で手が荒れているようだった。
ポーションを漉した布にも有効成分は残っているはず。
「ねえケイト、この濡れた布で指先を拭ってみて」
私がお願いすると、ケイトが、私に言われた通りにポーション浸しの布で荒れた指先を拭う。
「あ、手荒れが治っていきます……」
驚いたように目を見張るケイト。
「うふふ。お嬢様のお供に、こんな役得があるなんて」
やはり女性だ。綺麗になった自分の指先を嬉しそうに眺めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。