第7話 ポーションを作ろう②

 一度基本に戻って、本を読破してみることにした私。

 やっと二冊までは読み終わったのだけれど、まだ目的の内容は書かれていなかった。

 だけど、なかなか三冊を読み切るのも大変で、私は今日は三冊目の本を持って、居間で読むことにした。


「紅茶をご用意いたしますか?」

 ケイトという名のよく私の実験に立ち会ってくれる侍女だ。彼女が気を利かせて声をかけてくれた。

「でも、手を滑らせて大切な本を濡らしてしまったら困るわ。ケイト、気持ちだけありがとう」

 ニッコリ笑って申し出を断ると、ケイトも笑顔で一礼して去っていった。


「……うーん、ずっと色んなものの作り方のレシピが書いてあるだけねえ……」

 こんを詰めて読むのにも、さすがに五歳の身には堪えてきたので、ついついパラパラとページを流し読みしながらめくってしまっていた。


 あれ。『抽出とは』と題されたページで手が止まった。

 なになに……。

『植物など原料中に含まれている成分を選択的に分離する操作のことを言う』

 これだわ!


『固体からの成分を抽出する場合、一般的にはその原料を水などに漬け込み、可能であれば加熱・攪拌します。また、場合に応じて、原料を事前に細かく砕きます』


「足りなかったのはこれだわ!」


 私はケイトを伴って、実験室に急いだ。


 ◆


「植物を砕くのには……」

 私は実験室にある器具を見回す。

「すり鉢じゃないですか?お料理でも使いますよ。あとは、包丁でみじん切りにするのもいいかもしれませんね」

 そう言って、ケイトが陶器製の器具を指さしながら教えてくれた。


「じゃあ、両方を比べてみるわ!」

 私がそう言うと、「じゃあ私がみじん切りを担当しましょう」と申し出てくれた。

 うん、お料理したこと無かったから、ケイトがみじん切りするのを見て、初めてみじん切りのやり方を知った……。


 まずは、私がすり鉢ですった、癒し草と魔力草を分量通りビーカーの中の水に入れる。

 そして、魔法具の加熱器の上にビーカーを乗せて、加熱し始めた。

 ビーカーの周りに気泡ができて、小さな気泡が付き始めた。


【ポーション】

 品質:普通 ー

 詳細:有効成分は薄め。だが、やや苦い。


 もう少したつと、気泡が大きくなってきた。

【ポーション】

 品質:普通 ー

 詳細:有効成分はやや薄め。だが、苦い。


 ……あれ。苦いのは困るんだけど。


 さらに経つと、時々ポコポコし始めた。


【ポーション】

 品質:普通

 詳細:有効成分は十分抽出されている。だが、その分苦い。すごく苦い。


 ……良薬口に苦しとは言っても、すごく苦いのはちょっと……


 そして沸騰し始める。

【ポーション】

 品質:低品質 +

 詳細:有効成分が一部失われている。苦味も薄れている。


 私は、近くにあった反古紙の裏を使って、この経過をメモにとる。

「品質としていいのは、沸騰前ぐらいで止めるのが良さそうね。……でも苦いのかあ」


 とりあえず、すり鉢ですった方は結果が取れたから、みじん切りを試してみよう。


 癒し草と魔力草を分量通りビーカーの中の水に入れる。

 そして、魔法具の加熱器の上にビーカーを乗せて、加熱し始めた。

 ビーカーの周りに気泡ができて、小さな気泡が付き始めた。


【ポーション】

 品質:普通 ー

 詳細:有効成分は薄め。だが、少し苦い。


 もう少したつと、気泡が大きくなってきた。

【ポーション】

 品質:普通 ー

 詳細:有効成分はやや薄め。だが、やや苦い。


 さらに経つと、時々ポコポコし始めた。


【ポーション】

 品質:普通

 詳細:有効成分は十分抽出されている。だが、その分苦い。


 ……やっぱり苦いのかあ……

 でも、すった時よりみじん切りの方が苦味が少ないらしい。どうしてだろう?


 私はひとまず、みじん切りした材料を元に、沸騰前で加熱を止めた液体を、布で漉し、ガラス瓶に入れた。

 苦いけど、一応完成……なのかなあ?


「ねえ、ケイト。普通の品質のポーションはできたけれど、苦いのよね。こまったなあ」


 私の実験を見守っていたケイトが、私の言葉に首を傾げる。

「お嬢様はどうして使ってもいないその液体が普通で苦いポーションだとわかるんですか?」


 あ、そうだ!私誰にも鑑定のスキルのことを話してなかったわ!

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