第6話 ポーションを作ろう①

 私は今日も自室で『錬金術入門・上』を読んでいる。

 今日は、ちゃんと椅子に座って机に向かって本を開いている。

 だって、今日始めようと思っているのはポーション作り!自然と背筋も伸びるというものです。


「ポーションの材料は、癒し草と魔力草と水……」

 どうしたら手に入るのかしら……。


 私は庭師のいる離れの小屋までポテポテ歩いていって、庭師のダンを訪ねた。

「こんにちは、ダン」

 突然の小さな来客に驚くダン。

「おや、デイジーお嬢さま。わたくしめに何か御用ですかな?」

「癒し草と魔力草が欲しいのだけれど、どうしたら手に入るのかしら?」

 首を傾げてダンに質問する。

「それは街へ行って、薬草屋で買うのがいちばん手っ取り早いですね」

 ダンはそう教えてくれた。


 ……じゃあ、お母様の許可が必要ね。


 お母様が今居そうな居間へ行く。お母様はエリーと一緒に刺繍中だった。

「あら、デイジー。どうしたの?」

 針を動かす指を止めて、私に視線を向ける。


「ポーションを作りたいのですけれど、それには癒し草と魔力草が必要なんです。ダンに聞いたら、薬草屋で売っていると聞きました」


 それを聞いてお母様は少し困ったように首を傾ける。

「デイジーはまだ五歳。街に買い物に行くのは早いわよね……」

 うーん、と言って思案顔だ。そこへ、そばにいた侍女のエリーが言葉を挟んだ。


「奥さま、手の空いた侍女を使いに出せば良いのでは?」

 そうね、と、ぽんと手を叩いて頷く母様。


 こうして、私は六束の癒し草と三束の魔力草を手に入れることが出来た。


 ◆


「うーん、でも新鮮じゃないのよね、これ」

 実験室に移動しながら、受け取った癒し草と魔力草を眺めて呟く。

【癒し草】

 品質:普通 ー

 詳細:採取から少し経っている。少ししなびている。


【魔力草】

 品質:普通 ー

 詳細:採取から少し経っている。少ししなびている。


 ……良い素材を手に入れる方法はまた後で考えるかなあ。


 実験室に着いた。

 まずは、癒し草と魔力草をよく洗う。

『錬金術入門・上』には、癒し草と魔力草を2:1の割合で水に入れて抽出すると書いてある。


 私はビーカーに入るサイズに荒く刻んだ癒し草と魔力草と水を入れて蓋をし、一晩放置してみた。もちろんお水は蒸留水を使った。


 翌日。

 できたものを鑑定してみた。

【ポーション???】

 品質:超低品質

 詳細:薄い。有効成分がほとんど抽出されていない。これを飲んでも何も治らないだろう。


 ……まず、『???』って何。

 ちょっと待って、本のとおりに作ったのに!


 クルクルかき混ぜた方がいいのかなあ、と思って、スプーンでかき混ぜてみた。


【ポーション???】

 品質:超低品質

 詳細:やっぱり薄い。有効成分がほとんど抽出されていない。これを飲んでも何も治らないだろう。


 ……本に書いてあることだけでは足りないってこと?

 非常に困ったことになった。錬金術では、試行錯誤することが必要なのだろうか。


 葉っぱをすりつぶす?乾燥させたものを浸す?水を加熱する?

 考えるだけなら、色んな案が浮かんでくるけど……。


 そういえば私は、買ってもらった本の一冊を齧っただけよね。ちゃんと三冊読んだら答えが書いてあるかしら?

 私は一度基本に戻って、本を読破してみることにした。

 買ってもらった残りの癒し草と魔力草は、少し湿った地下に掘られた保管庫に入れておくことにした。

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