第2話 魔導師になるはずだった
私はデイジー・フォン・プレスラリア。ザルテンブルグ王国の子爵家の次女、もうすぐ五歳。アップルグリーンの髪に、アクアマリンの瞳。プレスラリア子爵家の王都の屋敷に住み、暇があれば植物図鑑や薬草図鑑を読み耽り、時には我が家の庭師にくっついて歩いている。私は、きちんと問いかければ答えてくれる、植物というものが大好きだった。
「今年の薔薇はとても花の数が多いし、色も美しいわ。見事ね」
お母様が、庭のバラをほめていた。
「恐れながら、今年はお嬢様も薔薇の世話にご興味をお持ちになられ、それは丁寧に薔薇の生育の様子を見守り、手当てなさってらっしゃいました。きっとそれにバラも応えたのでしょう」
お母様は微笑んで私の頭を撫でてくれた。
実は私は、植物好きが高じて、まだあまり高レベルのものでは無いが、後天的に【鑑定】スキルが芽生えた。だから、植物の様子を見て効率的にケアができるのだ。
例えばこんな感じ。
【薔薇】
植物
元気がない。小さな芋虫に若葉を食べられている。
人間だったらこんな感じ。
【デイジー・フォン・プレスラリア】
子爵家次女
体力:10/10
魔力:150/150
職業:なし
スキル:鑑定(3/10)
でも、みんなスキルを見られて嬉しいことは無いだろうと思って、覗き見をすることは滅多にないけれど。
◆
話は変わって私はもうすぐ五歳。
私たちの国には国民全員が五歳になる年に、洗礼式を受けることが義務付けられている。その時に、みな神に職業を与えていただくからだ。
ちなみに、私たち貴族にとって洗礼式は、将来の職業や結婚の優劣に至るまで影響がある大事な儀式である。望まれるのは剣聖や魔術師などの国を守る力を持つ職業や、優秀な文官職。こういった職に当たると親も喜ぶし、こういう職業は親から子へ遺伝することも多いので、本人も就職に有利かつ結婚相手として引く手数多になるのだ。
そして私の家は優秀な魔法使いを輩出してきた家柄である。お父様は、魔導師団の副魔導師長をしていて、お母様も、魔力の才能がかなり高かったそうだ(直ぐに結婚してしまったが)。一人ずついる兄様、姉様も、職業は魔導師を与えられ、将来を期待されている。
……私も、当然『魔導師』を与えられるだろうと期待されていた。
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