1001

しろ

そんな所も好き




例えば私の大切な人が死んじゃって鬱状態になって、夜眠れなくて呼んだとしてもあなたは来てくれないと思う。



相談したってぼーっと聞いてるだけだろうし、まともな意見なんて聞けないよね。




それでもそんな彼が好きで、そしてそんな所も好きになった一つだと思うの。





「まいはいっつもそれ言うけどさ、まいが思ってるよりテンはまいのこと好きだよ」


「嘘つき。だってテンが好きなのは女の子じゃなくて…」




テンからその事をはっきりと聞いた訳じゃない。

聞いた訳じゃないけど、物心ついた時からなんとなく分かっていた。





「じゃあ私とキスできる?」



キャンパスから移された視線は、驚きもせずいつも通りぼーっとしたものだった。



「できるよ」



少し微笑んだその表情に緊張感なんて全然感じなかった。

まるでそう言われると分かっていたかのように。






「誰かとキスしたことあるの?」


「ないよ、まいが初めて」




立ち上がり私の目の前にかがみ込むと、そっと私の頬に触れた。




自分でお願いしておきながらもその仕草に何故か少し怖いと思った。テンだって一応男の人だし。



だって本当にすると思わなかったもん。





「目瞑らないの?」


「テンの顔みてたい」



どんな顔でキスするのか絶対に見たいと思った。

しかも初めてのキス。




ゆっくり顔が近づいてきて、視界に影ができる。

結局私は目を瞑ってしまって、テンの表情を見れなかった。


でもそんな事考えられないくらい心臓が早く鼓動を打っていた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

1001 しろ @sirolchoco

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る