日常風景:うちの場合は

”銀”の師弟の場合



「師匠、俺ばっかり飯作ってるけど師匠は作らないんですか?」

「ふっ……甘いな、我が弟子……」


キラーン。容姿端麗である”銀”の師匠は無駄にかっこよくソファーに寝転がっていた。


「――僕は作れないんじゃない、作らないのだ!面倒だから!」

「……あ、はい。今日の献立何か希望あります?」

「中華スープが飲みたいかな」

「はあーい……」


”銀”の弟子は全てを諦めた表情で茶碗を洗い、鍋を洗い、掃除洗濯もしてから料理に取り掛かり始めた。



”鋼”の師弟の場合



マスター

「ダメな方」

師匠マスター

「オッケーな方」

「……本当に、何でわかるんですかこれ……」

「何となくだよ、何となく。ニュアンスって言うかなんて言うか……言葉にルビが振られてるどうかって言うのかね…」

「……私も、そのうち分かるようになるんでしょうか……?」


のんびりメンテナンスをしながらそのような会話をしていた。



”毒”の師弟の場合



「そう言えばこのお屋敷ってどうやって手に入れたの?」

「それは修行の傍ら資産運用をして、なんとか」

「”なんとか”で手に入る規模かしらこれ……?」

「まあ、頑張りましたので……」

「……あっそう……偉いわね……」

「それはそれとしてお師匠様、そろそろ店を開く時間でございます」

「そうね、じゃあ今日もやるわよ―」


何だかんだでレセブーの町では”毒”の店が一番繁盛する薬屋となり、割と面倒見のいい”毒”の師匠は親身に患者を治したりなどしていたのであった。



”緩解”の師弟の場合



「ウオオアアアア――ッ!!!もっと吐け!土を吐け!吐けるだけ吐けーッ!!!」

「さ、流石に休ませてください親方……!」

「冗談じゃねェーぞ!なんだこのクソでかいクレーターはよォーッ!!!」

「ゲッホゴッホ……城が自爆した跡だって聞きましたけど」

「あのロケットパンチの跡の何百倍だと思ってんだあのクソッたれがアーッ!!!」


――”盗み”の城が自爆した跡を二人で必至こいて治したりなどしていた。


「どう考えてもこれ無理ィ~ッ!土の量が足りねえェェェ~ッ!!!」

「ちょっと、これ、少し地形……くぼみになったままにしましょうよ……」

「クソ~ッ、それしかねえか……仕方ねえ、地図に”クソボケ盆地”とか書いてやる」

「それじゃどのくそボケかわかりませんよ親方……」



”盗み”の師弟の場合



「ぶぇっくしょん、風邪引いたか……?……おっ、来た来た」ばっしゃん。

「おおーっ、入れ食いッスねししょー!」

「まあなー、しっかりした心でやればこんなもんだ……」

「……あれ?じゃあ何でこの前までは全然釣れなかったんッスか?」

「誰のせいだと思ってやがる……」

「……?」


その頃は膝に弟子を乗せて呑気に釣りをしていたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最強師匠列伝~うちの場合は~ @manta100

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ