”銀”の弟子と”鋼”の弟子と”毒”の弟子の場合
――その城についた時には、丁度二人が歩きだすところだった。
そしてそこに。
「おーっと、城に乗り込むのはちょっと待っておくれ。”毒”の」ドゴォン!
「ウギャアーッ!」
”銀”の師弟、つまり弟子である俺はもう見事に師匠に足場にされながらすっ飛び、そのまま地面につき刺さり。
「おうおう、なんだそのイケメン野郎は、またなんか引っ掛けたか」ボボボボボ……
「引っ掛け…?」
”鋼”の師弟は、弟子である彼女の機構チェックがてら足のジェットで空を飛び。
「ん、この子かい?この子は私の弟子さ、でーし」えっへん。
「そう言う事です、以後お見知りおきを…」
そして”毒”の師弟は何故か弟子らしきイケメンに肩車され師匠がえばっていた。
◆
「なーるほど、アンタらもあの才能無しにちょっかいかけられたわけだ」
「そう言う事になるね」
「ツーことでうちの奴らもアイツをぼこりてェ、ってことになるな」
三人の師匠が話し合い(NO暴力、驚くべきことに)をしている間、弟子である俺はと言うと。
「と言うわけで、”鋼”の弟子です、どうぞよろしく」ウィーンウィーン。
「ど、どうも”銀”の弟子です…反応する暇がなかったけど…メカだ…機械だ…凄い…」
「おやおや、これは面白いお方だ。私は不肖”毒”の弟子を名乗らせていただいております」
――弟子同士の親交を深めていた。
「あちらはまだかかりそうですし、お茶でもお入れいたしましょう。”鋼”の方はお飲みに?」
「私の機能として、食物を摂取する事は可能であります。なのでお願いします」
「畏まりました」
言うが早いが、懐から水筒とティーパックを出し、中のお湯で簡易的に紅茶を入れ始める。
「む…少々お湯がぬるいようで」
「おや、それでしたら私が温め直せますが」
”鋼”の弟子がこともなげに言う。
「えっ、そんなこと出来るの、機械凄い」
「ええ、確か先ほどチェックが終わったものが…」
そう言うと腰付近がウィーンと開く。
「この中に温めたいものを入れて、暫く電磁波で水分子を振動させます」
「言葉の意味はよくわからないけどとにかく凄そう」
「なるほど、ではお頼みします」
ガシャン、ウィーン…低い唸り音が響く。
「…いや、なんか凄いですね、お二人とも」
「?私にとっては当たり前の機能ですが」
「ふむ、そう言う貴方は”銀”でしたか、相当肉体を鍛え上げてますね…」
「あ、わかりますかそう言うの」
「私も少々齧ってはいますので、ですがこれは…」
”毒”の弟子は渋い顔を作る。
「…いったいどういう修練をすればこんな肉体になるんですか?」
「へ?どういうって…毎日毎日毎日毎日骨を折られたり……」
「ええ……」
「とりあえず岩ぐらいは砕けるようになれって足が砕けるまで蹴りの修行をしたり」
「ええ……」
「後、師匠に分投げられて足場にされたりですかね」
「もうそれ修業とは思えない何かじゃないですかね」
「あ、やっぱりそうですかそうですよねへへへっ…」
”やっぱり”と言う顔をして”銀”の弟子は遠い眼をした。
「全く不合理です、肉体を鍛え上げるより自らのパーツを組みかえて強くなる方がいいです」
「あ、そっちはそう言う感じなんですか。それはそれで興味あるかも」
「と言っても、未だ私は自らの機能を全て把握しきれていないのですが」
「ん?把握?あっちのちいちゃい師匠さんが作ったりしたんじゃないんですか」
「ああ、私は古代遺跡から発掘されたらしいので」
「発掘!ロマンがありますねそれは」
「そう言う物なのですか……」
――そうして暫くの間話していると。
「おーい、弟子やーい」
「話まとまったぞオラ」
「まとまったわよ!」
師匠たちもやって来る。
「弟子!私の分もお茶入れなさい」
「そう言うと思ってすでに準備を」
「流石ね!」
あ、なんかカップ多いと思ったらそう言う事ね。
「ツーことで共同戦線ってわけだぞ」
「共同…端子の規格が合うでしょうか」
「規格の話じゃないからな?」
あのちいちゃい師匠さんは弟子の膝に乗っている。
あっちはあっちで仲良しだなあ。
「で、共同戦線って何するんですか師匠?」
「まあ平たく言うと、弟子三人に頑張ってもらうってわけだよ、君」のしぃ。
「するっと流しそうになったけど、おっぱい乗せないでください柔くて意識がぶっ飛びます」
「やだー」
ええい揶揄われている、心頭滅却心頭滅却…
「つまり、私たちがアイツを三人でボコボコにするのは容易いけど」
「それは美学的にもルール的にもダセェってなったんでな」
「そう言うわけで
「えっ」
「ふむ?」
「ほう…」
――俺たちが、師匠と同格の奴と戦って、勝つ…?
「はっはっは、大丈夫大丈夫、多分三人がかりならまあ薄いけど勝機はある」
「そー言うわけだ、俺らは何も手出ししねえからな」
「と言うわけで、頑張りなさい!弟子!」
「ええええ…」
「了解しました、
「ええ、承りましたとも」
――こうして俺たちは城の中へと入っていったのだった。
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