三人の師匠と三人の弟子の場合
「――つまり、これはけっこう由々しき事態なわけですよ!」
「はあ、そう言う事らしいですね…」
――チュウシーンの町、その一角、冒険者ギルド。
そこに”銀”の師弟、”鋼”の師弟が”緩解”に呼ばれて集められていた。
「…いや、まず突っ込んでいいですか」
「うむ、発言を許可するそこの弟子!偉ぶれるって最高…」
銀の弟子、つまり俺がまず聞いたことは――
「――何でずっとドラゴンさんに乗っかってるんです…?」
「あ、あまり気にしないでいいですよ…いつものことなので…」
「いつもこうなんだ…?どこの師匠もこんななのかな…」(仲良くなれそう…)
”緩解”の弟子である土の竜はすっかり
”銀”の弟子である青年もすっかり師匠からの
二人はシンパシーを感じていた…
「で、そんなことは良い。態々僕らを呼びつけたのは何だい”緩解”」
「あーうん、それだよそれ…わかるだろ…厄介事の気配だぁい…」
ぐでー。”緩解”は弟子の頭上で身を投げ出す。色々投げやりになっている。
「先日、そこのアホ…じゃない、”鋼”の二人組がぶっ飛ばした暴走族、知ってます?」
「……いたような、いなかったような…」
「ああ、あの不埒極まる連中ですね、私の重力変換ロケットパンチでまとめてどーんと」
”鋼”の弟子、古代遺跡から発掘された女性型の機械である彼女が”どーん”って感じの握り拳を作り伸ばす。
「はいその”どーん”とやったクレーター、アタシが直したんですけど何か言う事は」
「?…いつもお仕事ご苦労様です、これからもご健勝をお祈り…」
「びっくりするほど事務的ィーッ!!!…はあ、まあいいです期待してなかったし」
「あ、お茶でも入れますか?俺、普段から入れさせられてるし」
「そっちのお弟子さんは優しいですねェェェ…」
「で」
ずずー。入れてもらったお茶をすすりながら説明が続く。
「そのアタシが直したクレーターの上にどどーんと、凄い見覚えのあるセンスの悪い城が立てられてたって報告があったんですよ」
「「ああ……アイツか…」」
師匠二人組が遠い眼をする。
「あれ、師匠のお知り合いですか?」
「まあ、知り合いと言えば知り合いだし、足ふきマットと言えば足ふきマットだな」
「足ふきマット!?それノしてから足ふいてますよね師匠ーッ!」
「…
「アー、あいつは…びっくりするぐらい才能のねェ野郎、って言うのが正しいか…」
「才能…つまりそれは弱い?」
「アー、それは断じて違う、否だ」
「「で、つまりあの才能無しが喧嘩売ってきてると」」
師匠二人の声がハモる。
「まあ平たく言うならそう言う事、そしてアタシの仕事がさらに増えることがほぼ確定してる情報まである。ほら、弟子出番だぞ」
「あ、私が作るんですね…はーい…」
もこもこもこ…
テーブル下から乗っかられていた竜が息を吐けば、その上に見る見るうちにミニチュアの地形が出来上がっていく。
土魔法系かな…などと俺は見て考える。
「大体この辺に城、でこっちの風下にレセブーの町があって…」
指で指示すればすぐそこにミニチュアとして地形が出来上がっていく。
見事な技術だ。
…でも、何故ミニチュアの城に”しろ”と旗を立てられて書かれているのだろう。
レセブーの町の方にはしっかり”まち・かねもち”と旗が翻っている。
「まあ見ての通り、この城から風下に、バーッと毒っぽいの撒いてるらしいのよね」
「毒か……………………」
「毒か……………………」
「しかも最悪なことに、って言うか多分狙ってだけど…そっちには”毒”の奴がいるってこと」
「うわあ…………………ええ……」
「うわあ…………………嘘だろ……」
その場にいた全師匠がもうこれはってぐらい”うわあ”って顔をしていた。
「そ、そんな顔をするほどなんですか」
「あいつの毒、広範に広がるし種類が多彩だしで、僕は苦手なんだよね特に…」
「
「あいつの毒、普通に腐食系も使えるから精密機械は割とキッツイんだよ…」
「被害を直すという観点からはどうなんですか」
「クソ最悪。建物は溶けるわ、地面はぬかるむわ、風向きでかなり広がるわで滅茶苦茶。もうすでに憂鬱になってきてるよアタシは」
三者三様の理由で皆凄い顔になっていた。
コンコン。そこに扉がノックされ――
――レセブーの町から”毒”の二人組が城に向かって出発したと情報が齎されたのだった。
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