”緩解”の師弟の場合
「ええ!?”盗み”の人が何か企んでるって…あっもう、それは実際ありがたいです、でも本当に、本当に、ほんッッッとうになにも壊してないんですよね!?”鋼”さん!!!」
『んーマジマジ、鋼さんうそつかない』
「ウッッッッッッソ臭ェ~~~~ッ!!!」
『いや、マジですよホントホント』
「この前山一つぶっ飛ばした人の言葉とは思えぬほど軽ィィァァァァァ~ッ!!!」
”列強師伯会”開催予定地。
この世界の中心街。極聖都チュウシーン。
豪華絢爛(だが”奴ら”基準では脆い)建物が居並ぶ大通り。
そこから少し外れたぼろっちく、だが壊れたらすぐさま直せるようになっている木造の館。
『いや、
『おお、もっと言ってやれ、だが
『むー、イントネーションは同じなのになぜばれるんでしょう…』
「あ、弟子取ったんですかそれはおめでとうございますだが目の前でいちゃつくんじゃねェーッ!!!舐めてんのかこのボケナスどもがァ~ッ!」
今や”奴ら”のせいで有名無実と化した冒険者ギルド。
その二階に響き渡る通信と叫び声。
『『…?』』
「二人ともかわいらしく”こてん”とでも言いたげに首をかしげるんじゃねェーッ!舐めてんのか舐めてますね貴様らァァァ―ッ!!!こっちゃアンタらのせいで出会いもくそもねえんだよマジでよォーッ!!!」
そこで叫ぶのは一人の女ドワーフ、或いは”奴ら”の最大の被害者である――
「アァァァァァァァ~ッ!!!話は分かったから今すぐ通信を切れェーッ!こっちはベアーン村からベアーンが消えたって言われて困ってんだよァ~ッ!生態系のこと考えろって言ってんだよ~ッ!」
『ああ、あとこいつがちょっと”盗み”の手下らしき暴走族を壊滅させたけど、いいよな?俺がやったわけじゃないし、被害は荒野にクレーターだけだし』
「ンギィィィ~ッ!弟子まで強いと苦労が倍ィィーッ!!!場所だけ教えて去れェーッ!」
――もはや行き遅れまっしぐら、適齢期なぞとうに過ぎ去った。
冒険者どもの頭であり、修理人。
居並ぶ”奴ら”に歴史に残る述懐と土下座と懇願をかました女。
その修理技能だけで、強くもなんともないのに”緩解”の二つ名をもらってしまった女性である。
◆
「ゥア~ッ!!!物の見事に消し飛ばしてくれちゃってるゥーッ!」
”鋼”特製であるバイク、《ソクドデール》を駆り、教えられたクレーター発生個所、或いは”元”暴走族どもが住んでいた辺りにやって来る。
”鋼”の奴が作る製品は一級品である、それは認めざるを得ない。
先ほどまでの通信機もアイツに作ってもらったものだ。
大量にいる師匠群全員に持たせている。位置が分かって通信もできるものだ。
…壊れてたらもう知らん。
って言うか”盗み”の奴、しっかりそっちも対処してた。
もうそのうち何か起こることが確定しているのがつらい。
大体においてあいつらが動くと周りがぶっ飛ぶからである。
「…そして、それを直すのはアタシの仕事なんだよなあ、はあ…」
積んであった荷物から機材を取り出す。
平たくするためのトンボ、後はスコップかなとりあえずは。
「んーと、被害状況は…」
現場の見聞。
ぽっかり。と言う擬音が似合うほどに丸く巨大なクレーター。
これは質量兵器でも使ったか。一発でドカン、って感じだ。
盛り上がった外周から土を取って、埋める流れが基本になるか。
辺りに散乱するがらくた、ジャンクパーツ。
状態のよさそうなものが盗られてる気配がするがこれはどうせ倒したついでにギったんだろう、無視。
死体は無し。
いやマジで何でこんだけ地形破壊攻撃しておいて誰も死なせてないの…?
舐めてんのかマジで…?もうわけわかんねえよアイツら…
「…はぁ~、まーじでアイツら何なんだよ…ふざけんなよマジで…」
眺めていると幾らでも愚痴が出てきてしまうので、手を動かしながら愚痴ろう。
「よっ」どすり。
地面にトンボを突き立て、土魔法を
「
ぼこりぼこぼこ。周りの土を集め、アタシが扱いやすい位まで巨大にする。
纏めて土を押し出すし、それなりに大きめだ。
「…普通こうやって準備と詠唱するんだよなあ…何なんだよアイツらァ…」
魔法一つとってもあいつらはホントおかしい。
何もしなくても突然ぶっ放すし、時間は長いし、威力は高いしで。
「…はあ、やるか…」
まあいい、落ち込んだって無限に落ち込むだけだ。
外周の土を、トンボで押し出す。ずりずりっ。
一応ドワーフ特有の怪力でアタシは飯食ってる。これぐらいは一息だ。
ばさばさ。クレーターに転がる土。
正しく池に落ちる一粒の雫がごとし。
「…よっ、はっ、よっ…」
それでもさっさとアタシは仕事を続ける。
全体なんて、見てる間なんてない。
「ぐっ、はっ…これ、絶対土の量、足んないな…次は
どうせ終わるまでやるのだ。また次壊されるにしても。
――放っておくと、一生このまんまだ。
アイツらホント…ホントさ…
「外周…ふっ、5分で終わるか…?10かな…」
――あいつら、マジでふざけやがって…!
「…しかし、弟子だからまだましだな…破壊規模的に…慣れちゃってるアタシが悲しい…単純破壊だしな今回…」
――これが、アタシのいつもの仕事。
つまり”奴ら”の後片付けである。
◆
――そして、アタシの今日の仕事は”いつもの”だけでは終わらなかった。
今日は余裕があったし、時間を多めにとって1時間30分で”緩解”を終えて。
ソクドデールでチュウシーンに戻り。
「グアアーッ!!!」ドガシャァ―ッ!!!
「ええ……」
そしてアタシが直した街の城壁が黄色い
「…………ええ……」
「ギャオーッ!!!」バキーッ!!!
しっぽが振られ、更に城壁に穴が開いていく。
踏みつぶされた辺りは爪がめり込み文字通りの爪痕が刻まれる。
――
長命で、(それなりに)強く、そして欲深い。そんな奴ら。
そんでも一応こんな事をいきなりするような奴らじゃないはずだ。
って言うかこんな唸り声しか上げないような奴らじゃない。
明らかに何かの意図を感じなくもない、けど。
「んな事よりもよォ…」
――んな事よりも、アタシの仕事が爆増している、って言う事の方がもっともっともっともっと大問題だ!!!
「ふざけんじゃねェぞ、ボケナスどもが…!」
ごそごそ。
懐からアタシの得物を取り出す。
「とりあえず…ぼてくりこかせてもらうとするぜ…!」
さっさと終わらせて修繕作業に入らせてもらう…!
◆
「ギャオーッ!!!」ドガ!グシャ!ドガァン!
「ウワーッ
「いつもの連中が収まったと思ったら立て続けに何だァーッ!?」
「でも普段より10倍ぐらいはマシよ!一振りでまとめて建物が切れたりしない!」
「本当だ!城壁程度で済んでる!でもそれはそれとして逃げろォーッ!」
――
ぼくはなにをしてたっけ。
よくわかんない。
あたまがぐるぐるする。
とりあえず、あばれよう。
――ただ沸き起こる衝動に任せ、尾を振り、爪を刺し、口から岩塊を吐き出す。
――?視界に何か変なものが移る。
おおきくて、あかいなにかがふってくる。
そしてそれはぼくのあたまにあたって――
――ピッコォォォォン!!!
とっても甲高い音を立てた。
――すこしあたまがハッとした。
「おう、おうおうおう。」
それを振りぬいた人が目の前に降りてくる。
薄汚れた風体。ぼっさぼさの長髪。
柔らかな素材の風除け帽。付随してゴーグル。
不機嫌で寝不足な三白眼。鼻に張り付いた絆創膏。
小さい身体。褐色の肌。
へそが出るぐらい短いシャツと短いホットパンツ。
指ぬきグローブに安全靴。
そして肩に担ぎ、振り抜かれたそれはとっても大きなピコピコハンマー。
「テメェ~なんか盛られてるな?だがそれはどーでもいい」
そう言うと彼女は、そのピコピコハンマーを両手で振りかぶって――
「――とりあえず、気がすむまでぶっ叩くッッッ!!!」
そして振り下ろした。
――ピコォン!またもや僕の頭で甲高い音を立てるピコピコハンマー。
不思議なことに、叩かれるたびに頭がすっきりする。
ピコォン!ピコォン!ピコンピコンピコンピコンッ!!!
あー。なんだかだいぶ治ってきた気がする。
ピコピコピコピコピコピコッ!!!
10年ぐらいの悪酔いが覚めてくるみたいな…
ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ…
…叩きすぎじゃない?
「あ、あのー…ぼく、もう治って…」
「ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ!!!」
「ちょっ、待って、痛くはないけどその」
「ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ!!!」
――あっダメだこれ、聞く耳もってないや。
「うはははははは!どいつもこいつもアタシを舐め腐りやがってよォ~ッ!奴らをこうしてやれたらどんだけ気持ちいいんだろうなァーッ!!!」
ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ!!!
「ふざけんじゃねェーぞどいつもこいつもよお!!!アタシらが直すのにどんだけ苦労してると思ってんだあのバーたれどもがァ~ッ!」
ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ!!!
「腕ばっかりいいからって社会性もくそもねェ奴しかいねェーのかアイツらはァ~ッ!マージで腕はいいからこんなふざけた武器も作りゃがるしィ~ッ!」
ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ…………
――こうして僕は見ず知らずの人が発する恨み辛みと大量のピコピコハンマーを食らい続けたのでした。まる。
◆
「は~…んで…?何?覚えてねェ―って?」
――正気に戻った竜を引きずり、事務所でとりあえず事情を聴く。
そしたらこれだ。
「はい…えーと…なんかすみません…」
「『すみません』で済むと思ってんのかアァ?」
「ヒッ…えーと、その…」
…ちっと威圧しただけでビビってくれる、ヤバイ楽しい。
アイツら絶対ビビったりしねえもん。
「しっかし、曲がりなりにも竜をラリらせ、暴走させ、アタシの仕事を増やせる毒…か…”毒”の奴が作った……んだったらコイツ程度で治せるわけないしな…」
指先でくるくるとアタシの得物を回す。
基本構造”鋼”、
持ち主認証式、呼べばやって来る。
”銀”、”拳”辺りが適当に使っても壊れないという圧倒的に無駄感溢れる堅牢さ。
叩けば大概の毒・汚染・現象・概念は吹っ飛び、しかして破壊力はまるでない。
世界最強のピコピコハンマーとか言うふざけた代物、その名も”ピコ助”。
『絶対に間違ってると思ったら何が何でもてめえらをぶん殴ってやるからな…』
――と。懇願と土下座の際に零したら。
『じゃあその時が来たらこれでぶっ叩いてもらうか』
ってノリで全員集まって作ってきやがった。
お前ら本当マジで本当さあ?
「……はあ……」
「ど、どうしたんですか…」
――いや、それは良い。何もよくないが良い。
問題はこいつの対毒
つまり、アタシがこんなものを持って、これを使って解毒できる。
その時点で犯人が”毒”のはずはない。
アイツがやるとしたら絶対こんなおもちゃで解毒できない毒を作ってくるからだ。
「あ~…あんだよまじでよ~…クソがよァ…」
分かんないことが増えたし、とりあえず城壁は直さないとならないし。
疲れた体と頭に鞭打って、何とか立ち上がる。
「あ、あのう…」
「んー、ああ、まだいたんだっけ…君もう帰っていいよ…アタシはこれから仕事だから…」
「ええ…いや、そんな死んだ瞳で言われても…」
おろおろしている竜を尻目に
そしたらなんとなくついてきやがった。
「…あんだよ、見世物じゃねーぞ。いや、そうでもないか…」
「いや、ええと…貴女、疲れてそうですし…なんかできないかって…」
「ア~ン?」
街の連中が”また修理か”、”早業が見られるぞ”とか言いながら野次馬として集結してくる。
このうちの10分の1でも労働力になってくれりゃァよ…
角を曲がれば崩れた城壁、刻まれた爪痕、転がる瓦礫が見えてくる。
「じゃあテメェ、あれ直せんのかアァ?やれるもんならやってみてもらいてえもんだぜマジでよォ…」
「えっ、ええっと、そのぅ…あれぐらいなら…何とか…」
「な、ど~せ出来ねえんだろみんなそう言って始めは…何だって?」
今とても聞き捨てならない言葉が聞こえた気が。
「ええっと、あの、僕が壊した城壁ですよね…隙間を埋めて、直すぐらいなら…」
「…………えー?マジか?」
じとーっとこの黄色い竜を見る。
ぼんやりした眼とおどおどした態度。
図体ばっかり大きくて暴れるだけであの始末。
「え、ええ…その…やってみても…」
「ふーん、ふーん、ふーん…?」じぃぃぃ~っ。
――ま、ミスったらアタシがやり直せばいいだけか。
ダメで元々、上手く行ったらもうけものだ。
「ん、じゃあやってみな。アタシはそこらへんから見てっから」
「は、はい…」
近場にあった家の屋根に飛び乗り、寝転がる。
奴らみたいに高速で動くなんてできないがまあこれぐらいなら余裕だ。
「さーて、どんなもんかねェ…ふあぁ…」
そのままアタシは見物人に混ざって見物を…………
◆
「…あのー…、……その……」
身体が揺さぶられる。あんだよ…もっと寝かせて…
「……ん、あ…ふがっ…」
…なんだよ、人が心地よく寝てるって時に…
…ん?寝てる…?何でアタシ寝て…
「……やっべ!全然見てなかったァ!?」がばっ!
「うわああ!?あぎゃっ!」ゴッチン!
アタシの頭上にあったでかい頭…
つまり竜の顎にアタシの頭が思いっきりぶつかる。
「ぅあ痛ったぁ!!!いてててて…」
「おごごごご…あ、顎に…って言うか凄い硬いこの人の頭…」
「うおお…すまんすまん…」
頭を抑えながら城壁の方を見る。
――城壁は、見事に壊れた箇所だけ、色の違う土と岩で補修されていた。
「んー、おー、おおー…?」
ごそごそとポーチから丈夫さばかりが売りの目覚まし時計を出す。
確か始まったのがこの辺で……3時間、って所か。
……ふむ、なるほどな。
「あ、あのう…何か間違ってたり…」
「……よっと」
屋根から降りて、補修された城壁に向かう。
ぴこん。軽くピコ助で叩いて補修箇所を指す。
「ふむ、土魔法…いや、違うか…お前の属性、土か」
「あ、はいそうです、って言うか色でわかると思うんですが…黄色ですよ…」
「いや、アタシそんなの知らないし、ふーむふむ」ぴこんぴこん。
「ええ……」
細かくピコ助で見聞していく。強度、剛性、接合面の処理、そう言った所をだ。
「あーなるほどなるほど、お前のブレス、岩吐いてたっけ…あれを使ったのか」
「わ、そんな所までわかるんですか」
「まあ、”残り方”に癖があるからな」
魔法でも闘気でも、各個人ごとの”癖”ってのはある。
その辺を消してどうこうするのがいいだとか、何だとか言うがアタシにゃどうでもいい。勝手にやれ。
だが、そう言う”技術”的な方面の物ならともかく、種族ごとの”特性”では、ほぼ確実にこの”癖”が強く出る。
「…ふ~ん?なるほどなァ…」にやり。
「な、何ですかその笑顔…」
――その点で言うなら、こいつのそれは”闘う”のには向いていない、が。
――補修素材としては一級品だと断言出来た。
「…おい、お前。この城壁よーく見ろ」
「は、はい…?」
ぴこん。刻まれた爪の跡、そこに詰まった濃い、色の違う土。
「お前は、”直した”と思ってるかもしれんが、それは少しだけ違う」
「…?」
ぴこんぴこん。その継ぎ目を叩く。
「”直って”も、”完全に同じ”にはならないんだ。わかるな?」
「…ああ、はい、視覚的に凄い分かり易いです…」
しょんぼりしている。何を落ち込んでんだこのタコ助。
「なに落ち込んでんだこのタコ助、いいか、これは大事なことだ」
「は、はい…?」
ぴっこんぴっこん音を立てつつ。
「アタシは”緩解”なんて呼ばれてる、『一時的に良くなる』ッてな意味合いだ」
「はあ…」
「つまりまたぶっ壊れると思われてるし、それは否定しない。わかるな?」
「はい…つまり…?」
「つまりだな」
「――永遠に壊れてるもんはねえし、どんなもんでも同じ風には直らねェ、けどな」
ピコォン!こいつが直した部分をぶっ叩き。
「――もっと強くは出来るんだ、わかるな?」
「――」
アタシのずっと抱えている思い。
それをまず教える。
「…ま、そんなわけで”初仕事”、ごくろーさんってこった」
よじよじとこいつの背中に跨る。
「え、ってことはこれでいいってことですか」
「あァ、初にしちゃ十分だ」
「わあい………………え?”初”?」
そしてアタシはこいつの小さい翼を掴み、握る。
メキッ。
「あ痛たたたた!?」
「君ィ、就職とか興味ないかい?あるよね?あるって言えやァ…!」
――気が小さくて、ビビってくれて、しかも人出にもなる。
――こんな野郎を逃がすわけねえだろ…!
「うわああああ!?僕とんでもない人に捕まった可能性!?」
「うるせェ~ッ!お前にはアタシの技術を教え込んで現場に放り込んでやっからなァ~ッ!!!逃がさねえぞーッ!!!」
「ギャアアアーッ!?」
――とりあえず、対外的にもあのボケナスどもに習って、アタシも弟子ってもんを取ってみるってことにしよう、うん。
そう言うわけで、本日の業務内容。
午前・クレーターの後処理。
午後・暴れドラゴン退治と新人研修。
そして、うちの人出が一人増えたのだった。めでたしめでたし。
◆
「…しかし、まあ”毒”の奴じゃないにしても、とりあえず話位は聞いておくか…」
そう思い、戻ってから携帯端末”デレルンデス”にコールをかける。
プルルルル…ガチャ。
「はーいもしも」
『おかけになった電話番号は現在使われておりません、我が師匠のお手を煩わせることは許しませんので…では』
ガチャン。ツーツーツー…
…………え?今知らない男がコール取って、ふざけたこと抜かして、しかも切った?
――って言うか、”我が師匠”って言ったな、ってことは……?
「…え、”毒”の奴、弟子取ったの?しかもなんかイケメンボイスの?執事っぽい?」
――あの、他の奴らが弟子を取ったとしても絶対に最後まで残ると思ってた。
――”あの”毒の奴が…!?!?!?
「…………ええーっ!!!???!!!???」
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