第2話 飛行機

 日曜日になると、ハヤトはさっそく隣町の図書館に出かけました。そして、図書館から飛行機のことが書いてある本を借りてくると、夜遅くまでその本を読みました。


「長老さんの行ったことは本当だ。この飛行機というものに乗れば、空を自由に飛べるんだ」


 それからというもの、ハヤトは飛行機のことばかり考えていました。


「僕も飛行機に乗ってみたい。でも飛行機は遠い外国にあるものらしい」


 そんなある日、ハヤトがいつものように丘の上で空を眺めていると、再び長老さんが現れました。


「こんにちは、ハヤト君」


「ああ、長老さん、こんにちは。今日も隣町に行ってきたのですか?」


「いいや、実はわしもここから眺める景色が好きでのう、たまにこうしてここにやってきているのじゃ」


 長老さんは、何かうれしそうに村の方を眺めていた。


「ところで、ハヤト君、飛行機のことは何か分かったかね?」


「ええ、長老さんの言ったとおりです。飛行機というものに乗れば空を自由に飛べることが分かりました。でも……」


「でもどうしたのかね?」


「飛行機は、遠い外国にしかないのです。だから僕は空を飛ぶことはできません」


「ふーむ、それなら自分で飛行機を作ってみてはどうかね?」


「自分で作る?」


「そうじゃ、無いものは自分で作るしかないじゃろう」


「でも、どうやって作ればいいのですか?」


「それはわしには分からない。だが、たしか隣の町にいろいろなことを研究しているポール博士という科学者がいるというのを聞いたことがある。その人に聞けば何か分かるかもしれんな」


「分かりました。ありがとう、長老さん」


 飛行機を自分で作る。そんなことが果たして本当にできるのか。ハヤトの中に、期待と不安が同時に生まれていました。

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