信じられないおこない

 一気に不信感にとらわれたわたくしは、フィンディルさんをブロックした。

 忌まわしい記憶がよみがえるのを防ぐためだ。

 そして、忠告をくれるえーきちさんもブロックした。


 なにもかも苦しくて、つらくて、忘れてしまいたかった。

 今までの思い出を全否定する方向へ感情がむかった。

 エッセイで毒づいた。


 えーきちさんも道連れにしてしまった。

 なのに、彼はノートに連絡をくれて、再三忠告をしてくれた。

 つねづね、そういう友達は大切にすべきと考えていたので、言うことをきこう、と思った。


 しかし、えーきちさんのブロックを解くと、連動してフィンディルさんを思い出す。

 苦しい。

 楽しかった思い出を、無にしてしまいたい。


 フィンディルさんやそのお友達との交流は楽しかった。

 えーきちさんとのつながりも大切だった。

 だけど楽しかった思い出が強いほどに、大切なほどに、絶望してしまった瞬間に闇が大きくなってしまった。


 わたくしは、いらない子なんだ……。

 どこへ行っても、つまはじきものなんだ。

 生きてるだけで迷惑なんだ。


 思い出したくもない過去を思い出す。

 おまえは存在自体が迷惑だと、父にはっきりと言われた。

 親に認められない子供が世間に受け入れられるはずがない、と。


 そんなはずはない、自分で自分を整えて、ちゃんとしてれば認めてくれる人はいる。

 親が認めてくれなくたって、努力すればちゃんと……。

 その思いが、一瞬でかき消えた。


 今までの人とのつながりが、周囲にいた人間すべてが敵に見えた。

 極端な話、バーサク状態だ。

 頭はカッカと煮えたぎり、腹には残酷な感情が渦巻いている。


 どうしようもないので、ツイッターでボロボロこぼした。

 それを見たえーきちさんが、ブロックを解かなくていいと言ってきた。

 ああ、今度こそ見捨てられたと思った。


 自業自得だ。

 だけど止められない。

 この世に味方などいないのだと思えた。

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