誰が悪いの?

 人と仲良くなるのは難しい。

 とくにネットだと、相手の顔も仕草も見えない。

 メッセージ欄の言葉を信じるしかない。


 ところでボッチの頃は記憶力が良くて、メッセージの一つ一つをじっくり読んで空で憶えていた。

 しかし、心に刺さるできごとは、繰り返し思い返すことで記憶がいびつになる。

 思いこみも強くなってしまう。


 どうしてそうなるのかというと、わたくしは人と仲良くしたいのである。

 だから、相手の言葉をよく憶えていた。

 そして、努力の甲斐あってか、フィンディルさんとチャットでお話できるようになれた。


 フィンディルさんにはもちろんだが、他にお友達がいて、わたくしは新入りなので遠慮しなくてはならない立場なのだが、みなさんよくしてくれて、わからないことなど丁寧に教えてくれる。

 うれしかった。

 フィンディルさんのお友達に混ぜてもらえたと思ったのだ。


 しかし、それが良くなかった。

 公私の別がつかなくなって、甘えが出てしまった。

 ちゃんと一言、事情をはなしてから場を離れる、というエチケットを守らなかった。


 言い訳するとすれば、長いことボッチだったのでそういうマナーを知らなかった。

 そして、そのときは空気を読んでるつもりでいた。

 なにかというと、ゲームをしていたのだが、プレイヤーが上限を超えてしまったので、自分は外れた方がいいだろうと、手前勝手に判断してチャットルームを出てしまったのだった。


 だれが悪いかというと、わたくしだ。

 何が悪いかと言えば、勝手な行動で輪を乱したことだ。

 ゲーム運営者の都合など知らなかった。


 だから、フィンディルさんがゲーム途中で抜け出して「どうして退室したのか」と聞きにきてくれたことが少しうれしかった。

 そんな場合ではなかったというのに、フィンディルさんはわたくしのことを気にかけてくれるんだ、と思った。

 だけど、そのあとに告げられた言葉に絶望した。


「参加表明したあとで黙って退室されると処理に困るので迷惑」と言うことであった。

 心配してくれたんじゃないし、気遣ってくれたのでもない。

 文句を言いにきたんだと思った。


 迷惑……わたくしのこと、迷惑。

 迷惑なら、いらないじゃん! わたくしなんて、いらないじゃん! そう感じた。

 瞬時に心を閉ざした。


 お友達になれるかなぁ、仲良くなれるかなぁ、そんなぽわぽわした考えが吹き飛んだ。

 そしてわたくしは豹変した。

 人格破綻者のように。

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