アリエ

 どうせお互い早く起きれないんだし、昼頃から会おうよ。

 約束したはいいけれど、一睡もできなかったのだから会うなら朝方でよかったなあと、アリエは重い瞼を擦りながら思った。

昼過ぎ、約束の集合時間から10分がすぎた。人通りの多い、駅の近くの交差点にあるチェーンのカフェ前で立っている。

アリエちゃーん。大学以来の、懐かしい快活な声がした。

「おまたせ、ごめんねえ」

「ううん、久しぶり。てかぜんぜん待ってないよ」

 10分遅れてやってきたイトリは、淡いピンク色のフリルワンピースにレースの薄い上着を羽織っている。丸顔に合わせたボブカットはイトリの小さな顔にある、正確な形のパーツをより美しく際立たせる。足元の赤いハイヒールで、今日のイトリは女の子として完成していた。

「かわいいね」

「ええ〜そんなことないよ〜。アリエちゃんだってかわいい」

両手をひらひらさせながらイトリは言った。彼女の視線は私のロングスカートのシワを見ているんだ、とアリエは卑屈になる。本当のところはわからない。

「でも、気合いれて来たっていうのは、まじ。だってあの人に会えるんだもん」

あの人、とイトリが言ったとき、彼女の頬が紅くなるのをアリエは見逃さなかった。

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