指先のうみを舐めた
不溶性
アリエ
どうしても文章が書きたい、そんなときがある。
まとまりのない文章、ただ文字と文字を本能的に、でもほんの少しだけ、指先でスマートフォンをスワイプするくらいのかすかな理性を働かせて、単語と単語とを組み合わせる。堤防の先から海に飛び込むように着地点は見つからないままどんどんしずんでいって、内容のないままパソコンのフォルダにしまわれて死んじゃう。
そんな文章ばかりを書いている。でも、それじゃいけないんだって、最近気づいたの。
アリエはひとり、決意する。早朝5時、眠れないまま到来した朝。
昨晩の仕事終わりからとつとつと、漂流して岸に上がることのできなかったただの文のつながりをいつものようにフォルダにしまって、伸びをした。
昨月から、アリエの住むアパートは改修工事が始まって、防音のための囲いがついた。窓を見たっていつまでも暗いままだから、まるで白夜が来たみたいだねって、お隣のとうじくんと話していた。
今日はひとに会う予定がある。よく眠らなければ頭が回らないし、会話も適当に済ましてしまうとわかっていながら、眠らなければならないという焦りで眠れなくなるときがたまにある。
もういいや。と諦めた。
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