奇跡編5:リリィ

はあああああ!?




え?銃が喋ってるんだけどぉ!?




「ん?何だ何だ」


いやお前だよお前




「ちょっとちょっと!博士これ何!?」


私はスピーカーにむかって少し大声で話していた




「その子は、リリィって言うの。ほら、自己紹介してあげて。」




「よお!銃はリリィってんだわ!よろしくな」




……今すぐこの気持ち悪い銃をゴミ箱にぶち込みたい


燃えるゴミかしら?それとも不燃ごみ?




「おいマッキン!こいつ銃を捨てようとしてくるんだが!?え!?こんな奴と仕事か!?」


こいつ……心でも読めるのか?




「人の心ぐらい読めるっての」


ますます気持ち悪い……




「リリィは……、話せる事は少ないけど、現人神を殺せる武器。」




「ね?」


「神でも殺してやるよ」




頼もし気持ち悪い。


「じゃあ使い方を教える。」




リロード、標準一切不要。


敵がいる方向に向けてトリガーを引くだけでオッケーとか言う、本当にチート武器だった。




「これ……どう言う仕組みで喋ってるの?」




「リリィについては、何も言えない。」


本当に大丈夫なのか、もう不安です




「リリィは貴女にしか見えない、もしリリィを見る事のできる人がいたら……現人神。」




「銃は普通の人には見えない!だから常に持っておけ!」


……銃の一人称が銃ってややこしいわね




その後も説明を受けたが、必要な所しか覚えてない




「さっきこいつ」


「リリィだ!」




「……リリィがさっき博士の事をマッキンって」


「悪いけど、話せない。全てが終わったら話す。」




……私はこの人を信じてもいいのかしら?




「大丈夫だ、銃が保証する、お前の成功と生還をな!」




「期待しない程度に期待しておくわ、手のひらサイズの騎士さん」


「騎士ではない、銃だ」




私は公園を後にして教会の裏口に着いた。


裏口って言っても関係者しか入れないとか言う扉じゃなくて、敷地内にある緑色の小屋の事。




「裏口の入口探さないとね」




私は小屋に入り、床を調べる


「何だ何だ?探しものかい?」




キモ銃が話しかけてきた


「このへんに扉があるはずなんだけど……」




「ならソコじゃね?」


いや、え?




「だーかーらー!そのバケツの下だよ」




「いや違う、何で分かるって話よ!」


まぁ助かった




教会の敷地に入って、おまけに小屋でバタバタしてたらいつ見つかってもおかしくなかったし




中はサビがひどい壁と手すり、下に降りる階段がある、ライトがついているおかげか降りる事はできそう。




「美少女がこんな所を1人で進むなんて、世の中の男性が見たら泣き叫びますよ」




「いやお前の中の男はどうなってんだよ」


うるさいな……てかこいつに性別って




「いや、無いぞ?」


あっても気持ち悪さに磨きがかかるだけ、おおキモイキモイ


「なあ、そろそろ慣れてくんない?」






階段を進む


カツーン、カツーンと音が響く


手すりは奇麗だから、まだココが使われてると思う




この階段……下が見えない


いや全然見えないとかじゃないんだけど……


大体2メートル弱先しか見えない




キモ……リリィに言われてケミカルライトを先に投げたが、2メートルを超えた辺りでライトが消えた。




私が進むとライトを見つける事ができたので多分光に関係する何かがあるんだと思う。




「理由も原理も不明だけどどうやら姫ちゃんが考えてる事は正解みたいだぜ」




姫ちゃん?私はそんな呼び方許可した覚え無いけど


「銃も光以外で先を探ってみたけどさ、なーんも見えないんだよね」




「本当にお前必要なの?」




「殺すのに特化してんだよ!器用貧乏になるよりいいだろ!」


使えないと判断したら捨てよう。




しばらく歩いて行くと、ベンチが置いてある、少し広い空間に出た


4畳ぐらい?の空間にベンチ、そしてさらに下に続く階段がある。




私が降りてきた方向にライトを向けてみるけど


やっぱり先は見えない。


試しにライトの光度を上げてみるが、むしろ見える範囲が減った




少し休憩した後に階段を下り始めた




どれぐらい歩いたかな、すこし暇だったからこの銃と話しながら進んで行くと扉がある部屋にたどり着いた。




木のような素材でできたソレは


入るなって感じのオーラを放っているように感じる




「ねえ、この先何があるかわかる?」


リリィに頼ってみる




「広い空間に繫がってるな、そこから先は……ダメだわかんね、だけど生命体はいないな」


あら、わりと使える。




扉を開く為に力を入れると


見た目に反してとても簡単に扉が開いた


絶対素材が木ではないって事がわかったし、この先は分からないことしかない場所だって事を再認識した瞬間でもあった。




扉の先は本当に広い空間だった


高さ10メートルはある天井、横幅もおなじぐらいはあるんじゃないかな?




壁には等間隔で松明があり、道を照らしている。




「松明って……全時代的ね……おかしくない?」




私の予感は当たったようで


「理由はあるっぽいな、この先は炎以外の光を吸収しちまう空間っぽいぜ」


と言う事らしい。




私は壁から松明を一本引き抜き、先の暗く細い通路にケミカルライトを投げた。




ケミカルライトは姿を消した


光がライトの外に漏れないような、そんな風に見えた。




「やっかいね」


「うむ、まあ何とかなるさ、多分!」


嫌に人間味がある返事を聞いて少し笑ってしまった




「無機物とは言え私クラスの美少女の笑顔が見れるなんて、人生の運全て使い切りましたね」




人ではない、銃だ


とか言うツッコミを受け、暗闇に足を進めた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Eniguma object:The Distorted humanity @Hidari_Kan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ