奇跡編4:はじめまして


 


「先輩は死んでません!死んでない!」


私の後ろからうめき声が聞こえる


振り向けばそこにいる、振り向く気なんておきないけど




「認めないならそれでもいい、だけど」


「彼を生き返らせないと、その幻覚は消えないよ。」




幻覚?幻覚なの??


幻覚なら記憶消去剤で消せたはず!




「消去剤を下さい!アレがあれば!」




「このやり取りも二回目なんだよ。」


……は?いや、え?




「君の要望通りに、記憶を消してみたけど、君がもとに戻る事はなかなった。」




そんなバカな話があるか!


ふざけんな!




「私を巻き込みたいからってそんな嘘つかないで下さい!」


早くこの状況から抜け出したい、この幻覚を早く何とかしたい!




「話は変わるんだけど、君はあの部屋にどれだけの期間、あの部屋にいたと思う?」




…………思い出せない




え、まって、どれだけいたっけ?




「一ヶ月間、あの部屋にいたんだ。」




そんなに長く!?


私の記憶では……三日間ぐらいしか覚えがない




「その間、水や食料はどうしてたんだい?」




「そ、それは非常ポーチの」




「確かに、あのポーチには一週間分のカロリービスケット、圧縮水など、サバイバルにも対応みぢきる物が入ってる。」




「君と彼、2つのポーチがあるが、あと二週間どうしたんだと思う?」




そ、そんなの!節約して食べてたから乗り切れたに決まってるじゃない!


「それは、多分先輩と支え合いながら、励まし合って生きていたんですよ」






「君はそうしなかった」


な、何を、言って




「君は、食べたんだよ」




「彼の肉を。」




そんな事……ありえない!


「そんなふざけた事!ありえない!」




「私が先輩を食べた!?訳のわからない事言わないで下さい!」


私が?そんな事する訳ない……はず




「別に、私は攻めてない。」


「本当は君を殺してやりたいけど、今はもういい。」


「彼を生き返らせる、そうすればその幻覚は消えるし、私も君を許す。」




「何で生き返らせれば幻覚が消えるんですか!?」


でもそれが本当なら


いや、食べたとかそれは認めないし、うん、認めない。


だけどこの幻覚が消えて、先輩にまた会えるなら


協力してもいい。




「いいから、生き返らせるの。」


「じゃ、これ見て」




結局説明される事はなかった。




黒いファイルには不可思議第55について書かれていた。


「この世界は元々白黒だった?」




「そう。」




「それ以外の色ってのはこの不可思議の影響で見えるようになったって事?」




「そう。」




「こんなバカな不可思議ありませんよ!」




「でも、真縅の公式文書だから、信憑性はあるでしょ。」


確かに、内容は信じられないけど


これを作った真縅がこんな嘘文書を作るの訳がない




……いや、嘘文書を作るにしても黒に分類ははしないハズ。




内容はとても壮大なもので、複雑怪奇な物だった


最初は1枚の写真から始まったとか


人から人へと感染するとか……何が何やら。




まぁ、神成教が関わってるってのだけはわかる




「これを見てどうしろって言うんです?わぁ!神成教凄い!ってリアクションを求めてる訳じゃないですよね?」




「詳しくは話せないけど、これ神の力。」


神ぃ?


「神の力を利用する方法、それが地下にある。」




「神ね……もう関わりたくないんですけどね」




「今のままじゃ、また返り討ちに会う。」




また?え?私負けたの?


「現人神に、負けたでしょ?」


「パープル、グリーン、ブルー。聞き覚えは?」




「残念ながらありますよ」


そっか、あいつらにね……




「さて、私は地下に姫川調査員……いや、姫川を送り出すだけじゃない」


「現人神すら殺せるアイテム、それを渡すよ。」




 




こんにちは、姫川です


今日は神戸の教会に行きたいと思います。




可愛い可愛い女の子であるこの私が単身潜入、そして技術の盗み出しをしなければならないこの現実が辛くて、泣きそうです。




今私の代わりに仕事をしてくれる男性がいたら一瞬だけ好きになってあげます、誰かいませんか?




……女の涙は男を振り向かせる力があるけど




涙を見せる男性がいない!!!




「先輩は……手伝ってくれないですよね?」




「あはは……偽物とは思えないリアクションですね」




「ええ、分かってますよ」




先輩……いえ、先輩の幻覚は本当に人間っぽくて


ずっと私の後ろにいる事を除けば普通だ。




そうだ、仕事始める前に


岡部博士に連絡しなくちゃ……


「あーあー、聞こえますかー?」




「聞こえてる、真面目にやって。」




「もう上司と部下でもない、お互いに情報秘匿班に殺されるかもしれない身なんですし、楽しんでいきましょう!やっほー!」




「……まあいい、じゃあ渡した箱を開けて。」




背負ったリュックから銃ぐらいの大きさの箱を出す


『これ、中に凄いものが入ってる。私が許可出すまで開けちゃだめ。』




そんな風に言われて持って来たけど


普通に渡して欲しかった。




何で同性からこんなプレゼントみたいな……


「な、なんです?これは?」




中にはどこかで見たことのある


……そう!光線銃みたいな物が入ってた




「スピーカーにしてくれる?。」




「へんな美少女だと思われるじゃないですか」


まあ誰もいない公園だけど……




しぶしぶスピーカーにする


しましたよーって返事をすると




「さあ仕事よ、リリィ」


え?電波属性でも追加してきた?


男受け悪いわよそれ、恋愛したこと無いけど。




「ふむ、銃は久々に仕事ができて嬉しいな」




……は?


銃が、喋った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る