奇跡編3:準備

いつまでこんな所にいればいいんですか?」


私は真縅の施設ではない、別の施設に連れてこられた

あの場所から助け出された事は覚えているが、それ以外の記憶が曖昧で……何がなんだか


「先輩にもわかりませんか?」

「そうですか、でも!博士は仲間ですし、今までよりずっとマシですよね!」

「まあ、先輩が言う程前が酷かったのかどうか覚えてないんですけどね」


「もー!意地悪しないで教えて下さいよぉ!」

「知りません!もう姫川ちゃんは口きいてあげません」

先輩とお喋りしてると博士が部屋に来た

「さて、これからの事だけど。」

彼女は手元の書類を見ながら

「真縅には戻れないよ、姫川調査員。」

……は?いやいや、え?


「君は隠している、いや、隠していた事がある、違うか?。」

……どれの事だ?私が話してない事なんて……

正直な話、話してある事の方が少ないからどれなのかさっぱりわからない。

「何の事ですか?」


「神成教のお姫様、天草姫川君。」

「神成教は敵対組織、正体不明、神に成ろうとしてる事以外不明。」

「その組織にいた経歴が、君の書類には書かれていない。」


ああ、その事か……

「これはジャックも知らなかった、私しか気づかなかった、組織を欺いた者は、処理される。」

「だから戻れない。」


ジャック……?誰?

真縅の偉い人かな?

いや、そんな事はどうでもいい、どう言い訳するかな

「信仰の事ですし、プライベートな物を含むので真縅には報告しませんでした」

「それに、もう過去の話でしたし……申し訳ありませんでした」


「わかってたはず、真縅は普通の会社ではない、そんな事、言い訳にはならない。」

やらかしたか?答え方としては普通過ぎたか?

「でも、秘密があるのは普通だから。」

え?……いやマジ?イケんの?


「私にも、話せない事は多々ある、問題は君が隠し通す事が出来なかった点にある。」

ラッキーちょろすぎ!

……じゃなくて

「なら、岡部博士が黙ってくれてたら戻れてたんですか?」


そこまで思ってくれるなら

ジャックって人に報告しないでくれてもよかったのに

「いや、いずれバレてたよ。」

「神成教は今回の件で世界中の敵になった、捜索や調査が強化される事になってる。」


今回の件?

「その話と私が閉じ込められてたのには関係があるんですか?」

博士は鞄から黒いファイルを取り出し、私に見るように促した。


黒いファイルは機密文書であり、セキュリティレベル5の物だ

「こんなの勝手に見たら私処理されちゃいますよ!」

私のセキュリティレベルは3、これでは……

「どうせ戻れない、私も貴女も。」

……え?いやいや

「な、博士?今なんて?」


博士は私の顔を見て

「私のやらなきゃいけない事、それは真縅では禁止されてる事だから。」

「全てを敵に回しても、幸せの為に生きたい。」


「今回私のせいで、多くの民間人を傷つけた……どのみち私も処理されてただろうし。」

英雄ジャックは大丈夫だろうけど

と少し小さな声が聞こえた。


禁止されてる事でやりたい事?


「よかったら教えて下さいよ、そのやりたい事」

「死人の復活。」

ファンタジーな物語やゲームでしか聞いたことの無い単語が聞こえてきたが……マジ?


「そ、そんな事が可能なんですか!?」

「可能、私ならできる」


「だって、私は博士、博士だから。」

組織を抜けるって事は簡単にはできない。

仮に抜ける事が出来ても記憶消去を受けなければならず、資料の持ち出しは処理の対象だ


って事は……まさか

「博士、まさかとは思いますけど……無断で抜け出したんですか?」

「そう、だから仲間だよ。」

私は今とんでもなくヤバい橋を渡らされてるんじゃないだろうか

いや、私一人でいても情報秘匿班にすぐ処理されてしまうだろうし……


どっちにしろ、ヤバい橋なら一人より二人の方がいい、間違いない。

「仲間にする為に助けてくれたんですか?」

「そう。」

「……私に何か出来るんですか?言っておきますが私は可愛いだけの女の子ですよ?」


「可愛いかどうかはおいておいて、貴女にしか出来ない、いや知らない事がある。」

私しか知らない事?

何にせよ、私が神成教の元メンバーって事まで突き詰めた博士が調べられない事だから


多分、神成教の事だろうなぁ

「神成教には死者復活の秘密がある」  

「いや聞いたことありませんよそんなの」

これは本当に知らないし、噂すら聞いたことがない

「関西の、神成教会地下って、聞いたことは?」


……そこか

「残念ながら聞いたことありますよ」

教会は苦手なんですよ、本当に。

「その地下に、秘密がある」


「そこから秘密盗み出す。」

さらに博士は恐ろしい事を言い出した

「貴女が、盗み出してきて。」


いやいやいやいや無理無理無理無理

「私は運動、出来ないから。」

他の人に頼んでくれ、お願いですから

「運動無理でも頑張ればいけますよ!姫川ちゃんがトレーニングを」


「そんなの意味無い!!」


……そんな怒らなくてもいいのに

目が心から、100%のマジだと語っている

運動嫌いにも程があるでしょ

「嫌だって言ったら?」


残念な事に刀は別の部屋にあるので素手になるが

私と先輩の二人ならこんな見た目中学生女ぐらい楽勝のはず!

「もう二度と、君の先輩に会えないかもね。」


「……は?」

その時銃声がした

なんだか足が冷たい、何これ

「かなり薄めた記憶消去剤だから、初期症状に戻すぐらいしか効果ない、だけど十分でしょ?。」


「た、助けて先」

いままで先輩がいた場所には

一部の肉が無くなったゾンビ、そんな表現が似合う

先輩に似た何かがいた。


「ひっ!」

私の足は機能を止め、その場に座り込んでしまった。

「いや!助けて!助けてよ先輩!」

そのゾンビは私の後ろに移動し、動きを止めた。


私が動いても、それについてくる

一定の距離を保ち、視界のぎりぎり端に映るぐらいの後ろにいる。

「君が先輩と呼ぶ男を、生き返らせる。」

「そのために、協力して。」

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