奇跡編2:幻覚


「貴女は!?誰ですか?」

声の主に問いかける


「岡部。」


確か……えっと……


「誰でしたっけ?」


「…………」 


「薬を作った人ですか!先輩物覚えいいですね!」

私が先輩と話していると

「姫川調査員、彼もいるの?。」

岡部博士が質問をしてきた

「もちろんです!私と先輩が閉じ込められてます」


「君は彼が死んだと、報告している。」


「報告が、ミスなの?」

私はそんな報告してないのに…

何の話をしているんだろ


「とりあえずここから出して下さい!」


「分かった、少し壁から離れて。」

爆音。

その中に金属音も聞こえる。


壁に人一人分、私の身長ぐらいの穴が空いた

「私の刀でも切れなかったのに!」

驚いた、この壁はただの金属ではないのに

一撃で破壊した……

「刀と一緒に、しないで。」


彼女の手にあるのは……ペン?

「何ですか、それ?」


彼女はペンにキャップをつけながら

「不可思議第966、"自殺ペン"。」 


不可思議を持ち出してる!?

不可思議の持ち出しにはある程度の権限と、許可が必要となり、普通は持ち出せない。

「とにかく助かりました、死ぬかと思いましたよ」


「先輩は美少女と二人きりじゃなくなって残念そうですね」


「いーや!そんな顔してました!」


「ね?岡部……さん?博士?」

何故彼女は……こう、不思議そうな顔をしているんだろう

こんな感じでしたっけ?

「博士でも、岡部さんでも、どっちでも。」


「で、姫川調査員、彼は?」

何言ってるんだ、私の後ろにいるじゃないか

この人……先輩の事無視してるのか?


「ほら、ここですよココ」

私は横にズレて、後ろの先輩が見えやすいようにした。


「先輩まで横に移動したら意味無いじゃないですか!」

「後、何回も言ってますけど足音を私に合わせるの辞めてくださいよ……少し不気味です


先輩は、ニシシって聞こえてくるような表情をしている。

多分、私を困らせて喜んでいるのだろう

好きな娘にちょっかいかけたくなるアレだろうか?いや、そうに違いない。

「もー!笑ってないでしゃきっとして下さいよぉ!」


「す、すまないけど。」


岡部さんがこっちに寄ってきた

「そ、それは、何か聞いてもいいか?。」


「私には、人間の死体に見える、けど。」


…………ああ、偶に見えるアレか


「さあ、知りません」

「外に出てもいいですか」


「いや、だから、それは」


「知らないって言ってんだろ!」


「答えろ!」

岡部さんはアレに触れていた


「これは、真縅の制服」

イヤ、言わないで


「タグには……」

聞きたくないの、お願いだから

「……とある、彼の物だ。」


あああああああああああぁぁあぁあああぁ!!!

やめろ!だまれ!先輩は死んでない!


「お前、彼の死体に何をした?。」

私の体温がスッと下るのが感じ取れた。

多分、青い顔をしていたと思う

手、足も震えていて止まらない


ふざけんな!ここで震えたらだめだろ!

私の一部でしかない癖に!所有者の指示に従えよ!私が!私のだぞ!!!

「言いたくないのか、でも、これは。」

考えろ、考えろ

そもそも何でこうなったんだ

……私のが見つけた時からこうだったと話すか?


そうだ、それなら問題ないだろうし、バレやしないだろう。

「見つけた時には、そんな感じでしたね」

「そう、そうなの。」

やった!何が博士だ!私のこんな適当な言い訳で

「貴女が、食べたのね。」




彼の死体はバラバラにされていた

彼の死体の切り口はとても奇麗で、現在人類が使える技術では再現不可能な物であった。


腕やふくらはぎ部分の肉が不自然に無くなっていたが

[セキュリティレベル5以上で閲覧可能]であると思われる。

これは推測では無く、[消去済]調査員の[セキュリティレベル5以上で閲覧可能]事からも、考えられる事であり、確定だと思われる。


[消去済]調査員には幻覚症状が見られ、幻聴も聞こえている。

不思議な事に記憶を処理しても、投薬しても、完治は見られず、10分程で症状が戻ってくるらしい。

[消去済]調査員は幻聴幻覚に対して以下の反応を示している。


症状初期


・酷く怯え、暴れる、時折、刀を振るうなどの行動が見られる為、ひどい混乱に陥る模様。


症状中期


・幻聴幻覚に対して怯えつつも、暴れなくなる

しかし常に症状に意識が向けられており、人間としての機能を一部停止している

※停止した機能については別紙参照


症状末期


・幻聴幻覚を恐れず、会話を始める。

話しの内容から先輩職員の[消去済]調査員と会話していると考えられる。

幻覚幻聴の正体は[消去済]調査員であると考えられる。

現在[消去済]調査員は記憶処理を望まず、現状維持を望んでいる。


一番の問題点は


[消去済]調査員が知り得ない情報を知っている事である。

この調査員は幻聴が教えてくれると言っているが根拠がない為、不明瞭な物となっている

報告されている幻覚が[消去済]調査員の姿をしている物だけな事を含めて考えると、可能性としては極めて高いと考えられる。


私は調査を続行する。

最悪の事態として、私が考えるのは

[ここから先の閲覧には東縅、情報秘匿技術班の班長、この両方の許可が必要であり、許可無く内容にアクセスした場合、速やかに処理されます。]

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る