視界編9:先輩


私が変な武器に殺されそうになった時

好きじゃない方の先輩が現れた

「動くな」


銃を向けてるけど、発砲できるのかな

「貴女は、神を信じてますよね?」

バケモノはこんな時でも布教か……なら今のうちにもう一回刀を拾いに……


「あら?貴女この爪に興味が?綺麗でしょう?」

爪?……ああ、色々色を変えてるのね

悪趣味にも程が


……は?

いやいや……そもそもパープルが何で見えるの?

最初に何で気づかなかったのかわからないけど


「お前が不審者じゃなかったら女らしくて可愛い色合いだねって言ってただろうよ」

まさか……感染してるの?

もう視界がかわった事にも気づいてないの?

なんで抵抗しないの?受け入れたの?

目が、自分の体が自分じゃなくなるのよ?


「景雲先輩……」

貴女は弱い、神に縋る弱い人だったんですね

何でこんな弱い人が味方なんだろ……

私と一緒に戦ってくれる人は……やっぱり先輩だけ


「お前、姫川に何をした」

「さあ?私は何もしてません。貴女は何かされたのかもしれませんが」

「姫川、教えてあげたら?」

…………何かを話てたみたいだけど

話の中身が頭に入ってこない


景雲先輩はこっちに来いって目で言ってると思う

でも今まで仲間だったのに今じゃ……民間人と同じに見える。

頼るんじゃない、私が守るんだ


「私の腰に予備の銃があるから」

そう言われて腰の銃を取る

あのバケモノはニコニコしながらこっちを見てるだけ


景雲先輩は……この民間人は2対1とか言ってるけど何言ってるんだろう。

この人は民間人……そして先輩の知り合い……だから


「景雲先輩……貴女も先輩の大切な人。だから私が救ってみせます。」

戦うのは私だけで十分……民間人にそんな事させられない

何よりバケモノが見逃さないだろうし……


無音の空間に私の発砲音が響く

民間人は目を見開いたと思ったらすぐ意識を失ったみたい。

コレしか無いんです。


私の大切な者じゃないってアピールしてこの民間人を放置して貰う……コレしか……


「あらあら、仲間じゃないの?それともやっぱり私達の所に戻ってくる?歓迎するわ!!」

冗談じゃないわ、絶対嫌よ


それにさっきは撃てた……バケモノには撃てなかったのに……

なら……兆弾を当てる!


「あらあら、私を撃てないの分かってないの?」

やっぱりコイツの力だったのね

「人神様ってのはやっぱり人じゃないのね」

足元……いや天井なら……

兆弾を狙って天井を撃つ


やっぱり……当たらないか……

いや違う、この銃は薬針を撃つ銃だから兆弾しないんだ……何でこんな時に……実弾の銃は多分使えないし……

「……姫川?……人間に兆弾を狙って当てる技量が備わってると本気で思ってるの?」


ここで私は負けられない……でもどうしたら……

「無駄な事辞めたらどうかしら?」

落ちてる針を避けながらバケモノが近づいてくる


……は?


まさか……

「ねぇ、今から助けてって言ったらどうする?」

まさか…だけどね……


「神は慈悲深いですが、私はゆるしませんよ」

ニヤニヤと笑うバケモノを狙って……私はトリガーを引いた


「だから……無駄だっ……」

当たった!やっぱりそうだ

「あんたの力はよく知らないけど私達が作った人を救う針には干渉できないみたいね!」


多分アイツは銃弾に対して何かしらの防御策を持ってる。

だけど銃弾じゃなくて針だったからその策が無効になった


「随分と応用が効かない、頭の硬い人神様の力ね。お似合いよ」


「所詮針、受けても問題ないって判断しただけです」

「人じゃないのに随分人みたいな言い訳するわねバケモノ」

「黙れ、必ず殺……す」


薬が効いたみたいね……


意識は奪ったけど、どうしようか

とりあえず刀を拾って……拾うことはできる。

だけど刃を向けると急に重くなる。

「やっぱり……美少女に扱える重さじゃないわ」

意識が無くても周りに影響を与えるみたい。

銃も刀もそのへんから拾ってきた石も絶対に外れてダメだった


バケモノが武器や危険物だと設定した物はやっぱりダメっぽい


「針を撃ち出す銃までは……設定出来なかったみたいね……私でも想定出来ないけど」


「民間人……いえ景雲先輩を撃つ必要なかったじゃん……どうしよ始末書で済むかな……」

倒れたバケモノにもう1度針を向けてトリガーを引く

「針より肌が硬くなってる……硬い頭に硬い体……やっぱり人間が一番よ」

撃たれてから倒れるまでの間に設定を更新したのかしら……仕事は早いのね


とにかく。

多分今のままじゃバケモノにトドメは刺せない

景雲先輩を連れて外に出ましょう。

人を背負いながらの階段上がりはしんどい!

「重い!愛と懐は重い方がいいけど体重はダメでしょ!乙女なのよ乙女!」

身長も高いし……この体重が普通なの?

胸も……私よりある……


「先輩は小さくて可愛らしい美少女な姫川ちゃんが好きなはず!胸で人を選びません!」

独り言?いや自己暗示ですよ、わかってます。


階段の途中で休憩してると左側の壁にスイッチを見つけた


「何……これ?財宝とか貰えるの?」

スイッチを押すと左側の壁が下に落ちて部屋が現れた

「財宝はなくても今回の力について情報があるかもだし、姫川調査員がんばります!」

景雲先輩を階段に置いて部屋に入る。


緑色のランプがいくつもあるその部屋に


見慣れた顔があった


私の大好きなあの顔があった


だけど体と顔がまったく違う所にあった


頭と体と手足がバラバラにされた"大好き"は


見てるだけで今までとは違った気持ち悪さを呼ぶ


「……は?いやいや……え?」

これは何?バケモノの力で幻覚でも見てるの?


オェッ……気持ち悪さに押し切られた

嘘でしょ?夢なら早く現実に戻して!


「そっか、夢……だよね。なら調査しなきゃ」

大好きに近づくたびに吐いて、足が重くなって、目を逸したくなる。


赤い液体に塗れた大好きのポケットが膨らんでるのが見える


顔は……今は見たくないわ……夢でも先輩の死体の顔は……


ポケットにはボイスレコーダーと1通の手紙が入ってた

胴体には……ドックダグが先輩本人だと主張している

胴体には大きな穴があいてる……

私……疲れてるのかな……

ありえない、もんね。


「あれー?何でこの部屋に入れたのー?」

小さな女の子が壁をすり抜けて現れた

「君は……この人がどうしてこんな事になってるのか知ってるのかな」

銃を素早く抜いて構える


「あー!お兄ちゃんと同じ武器使うんだ!じゃあ外の人だね!」

外?何言ってんのよ

「お兄ちゃんのコアがどうしても必要だったんだー!お兄ちゃんに謝っといて!」

意味がわからない


「詳しく話を聞かせてもらいたいんだけど?お姉さんに話てくれるかな?」


鉄が擦れる大きな音がして

まさかと思って通ってきた扉を見ると閉じられていた


「ごめんねー!話せないの!私も神様に言われた事をしてるだけって事は言っとくね!」


「ふざけんな!殺されたくなかったらさっさと質問に答えて扉を開けろ!」

足元まである青い髪……ここのメンバーっぽいね

「ほんとーにごめん!でもでも!外にいるおねーさんは地上に戻しとくから!それもおねーさん達の支部に、さ!」


コイツどこまで知ってるんだ

「じゃあ僕仕事があるから!ここで死んでね!」

発砲したが針がすり抜けていった


「あ、それ弾が針なんだ!自殺しにくいね!飢えはキツイけど食料は目の前にいーっぱいあるもんね!」

お前だけは殺す。絶対殺す。

刀を抜いて構える、頭から真っ二つにしてやる 


「その刀!すっごいレア物だよ!なんだ自殺カンタンだね!」

「じゃあ、ごゆっくり!ばいばい!」

私が斬った瞬間、壁に溶けていった。


……これは夢だもの、そう、変な夢ね。

「さて、そろそろ目覚めないと……」

刀で腕に傷を入れる

血液が赤に見えるのがムカつくけど時々白に戻る


人間って証拠が見れてホッとする。


痛いのに、血は流れてるのに、嘘でしょ?


これが現実だと訴えてくる。


きっと夢だよ、とても深い夢。


私は太腿に銃を向けてトリガーを引いた


刺す痛みが走る


確かに先輩と2人きりで狭い部屋に閉じ込められるとか夢のシチュエーションだけど……生きてる先輩がいいな


薬が私の意識を沈める。


さぁ、現実に戻ろう。


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