視界編8:パープル

「いってきます、先輩」

先輩2人に教会は任せましょう。

あの景雲って女、実力はありそうですけど女としての魅力が無さそうですし2人きりにしても大丈夫でしょうし。


私はこの村でやる事があります。

「今の視界なら道具が無くても……」

やっぱり赤色、見えた。

この小屋の地下に奴らの支教があったはず……


この村に奴ら

"神を崇めよ、神となれ"の支教、つまり支部がある

私はここのメンバーだったから知ってる

この赤い小屋の鍵は持ってないけど……

「刀をバールみたいに使った美少女って私ぐらいかも」

流石我が家の家宝、……折れなくてよかった。


「一応ドア閉めとかないとね、赤色だから先輩達気づけないでしょうけど、一応ね」

中に入ってドアを閉める

そして階段を下る


「こんなジメジメした所にいるのはモグラかミミズか宗教家ぐらいよね」

先輩とのデートには最悪の環境ね


アイツら用に実弾入りの銃もあるし刀もある

それに最悪……ううん、そんな最悪なんて起こさせない

私が先輩と皆を守ります。


しばらく階段を降りると広い空間に出た

長方形で床も天井も壁も赤錆の付いた鉄の部屋

黄色いランプがあるけど薄暗い

そんな趣味激悪な部屋に女が1人。

「パープル、でいいのよね」

見た事はなかったけど今の私なら……

感染した私には見える。

パープルの髪に同色の服を着た女


ココでは人神って呼ばれてたっけ


「あら、私が見えるの?修行したのね!私嬉しいわ!姫川ならやってくれると信じてましたよ。」

修行?バカバカしい

「私はもう神にすがるのも神を目指すのも辞めたの。今は想い人の恋人になる事の方が大切よ」


「あら……それは残念……姫川のお父様はそれはそれは修行に熱心でしたのに……」

知るかそんな事

「さて、姫川。何の用ですか?」

決まってる

「外の事知らないって言うつもり?」


「ああ、私達が神の力を世界に分けてあげたの!素敵でしょ!」

神の力……?

「確かに最初は視界に上手く馴染まなくって視界が壊れるけど、すぐに馴れるはずよ」

「姫川も……半分力を受け取ってるみたいね」


「この力はね、力を受け取った者同士が力について1分以上話をした時に定着するの。」


「神の力もあっけないわね。私達の記憶消去剤で感染した記憶まで消せば元に戻るわ」

神の力も科学には勝てないのよ

「確かにそうね、一時的には消せるかもね」


……は?


「何?負け惜しみ?」


「この力は遺伝子まで染み渡ります。例え忘れても本能的に思い出すはずよ。」


「でも先輩は……私は確かに視界が戻ったのを確認しました」

先輩は赤の手袋を白って認識してた……だから間違いないはず

「だから……姫川って頭悪いのね。」


「1回でも力を受け取ったら最後、一生離れません。我らの神を甘く見ないで下さいね。」

この見てるだけで不愉快になるこの笑顔

これも人神の技かしら?


「私達はね、人にわかって欲しいの。神は白黒じゃない、何色もの色で世界を見てるの、未来を感じる青色の空、希望を感じる緑色の森、命を感じる水色の海、素晴らしいとは思わない?でも私達人に与えられたのは白黒だけ。あまりにも可愛そうじゃない?哀れじゃない?だから私達は神に頼んで力を分けて貰ったの」


人は人よ、神なんて人離れした者になりたくは無いわ

「神と人は違う!人に神の力?中途半端に力を貰ってどうするの?人間でもない神でもない、中途半端なナニカが生まれるだけよ!」


確かに私も神を目指した事がある。

神は完璧で弱点がないって、憧れたから


でも人は弱点もあるし不完全な者。それでいいって私はわかったの。

「大丈夫よ姫川。きっとわかる日が来ます。」

コイツから対処法を聞き出さないとね


「もう話す事は無いみたいね、さあおとなしくこの力とやらの対処法を教えなさい」 

持ってきた銃を左手に、刀を右手に構える

「昔から武道は得意なのよね」

人神だか何だか知らないけど生き物なら殺せる。

私なら殺せる。

「あら怖い、私怖いわ」

「でもね、私達は力を授かって広めただけよ。封じ込め方?対処法?知ってると思うの?」


気持ち悪い目をして気持ち悪い事言わないで欲しいわ

「だけど1つ教えてあげる。記憶消去剤で視界を戻せるって言ってたけど……記憶が無いだけで力を受け取ってる事には違いないのよ。」


「それにね、確かに神の力は偉大だけど姫川みたいに受け入れを拒否していれば半分は人間でいられるのよ」

「視界が神と同じになるのは力を受け入れたって事なんだし、自業自得でしょ?」

何言ってんのよ、元々はあんたらが悪いんじゃない


「でも力に溺れた人間もダメだと思わない?」


煩い、煩い煩い、煩い煩い煩い


「とりあえず人神サマを生かしておいて良いことは1つも無さそうね」

「あんたも殺して必ず神も殺す」

僅かに体がが動いた瞬間


「私の前で神を殺す発言はヤバいわね」

笑顔がやっと消えて棺桶が似合いそうな表情になった


「あんたみたいなバケモノにも晴れ舞台を用意してあげるわ!葬式の主役だけどね!」

それにムカつくからこれだけは言っとく


「神の力を受入れる?むりやり押し付けた癖に!私の愛しい先輩や仲間はそんな力に屈しないし、受け入れない!なめんなバケモノ!」

私の仲間はそんなに弱くない。


左手の銃で発砲しようとすると

トリガーが引けない

「昔から刃物で殺すのがセオリーだって知ってんのよ!」

左手の銃を捨て、刀を両手持ちにして斬りかかる


「哀れね、人の能力では私は、私達は倒せないのに……」

確実に斬ったのに手応えがない

「あんた生き物でもないの?本物のバケモノね」


「ありがとうございます。さて、少しは抵抗させてあげましたので……そろそろいいですか?」


バケモノがそう言い終ると刀が急に重く感じて

右手と左手では持てなくなった

何?この力は……

一瞬考え込んだ隙に

鉄扇と槍と木の枝が混じったような見たことない物

おそらく人を殺せる武器が私に向けられた


「死ね!裏切り者が!感覚の神の裁きを!」


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