視界編7:赤い小屋

「この辺村人いませんね」

教会を出た後、俺達2人は民家を訪ねたり

公民館や公園、学校に行ったりしたけど誰もいない

この村には確かに人がいた跡がある

だけど集まりそうな所にはいない


「スピーカーで呼びかけますか?」

持ってきてねーよと頭を小突かれた

「とりあえず姫川ちゃんと合流するかね」

俺もそれには賛成。

あらかた探したけど人はいないし

一度集まって今後どうするか考えるべきだろ

「じゃあ今から1時間探してきてね、景雲さんは教会に戻ってきた時の為に教会付近にいるから」

あ、楽な方選んだなこの人。


持ってきた荷物からトランシーバーを取り出して

お互いに装備する

「何かあったら知らせてね!助けると思うから、多分!」

なんて頼りがいのある、心温まる言葉なんだろう

いっぱつ殴りたい。

姫川を見つけたら報告する

見つけなくても2時間したら集合地点の教会に集まる

20分毎に連絡を入れあう。

これらを決め事にして姫川を捜索する事にした


「あ、私はレッドね!コードネーム!」

子供みたいにはしゃぐ景雲さんがとても可愛く感じる

「じゃあ俺はブルーにします。姫川はオレンジにしましょう」

姫川を見つけたら“オレンジを発見“と言う決まりもできた。


これでも真剣に探すつもり、いやマジで。

では早速教会の北側にある商店街を見てみるかな。




 


「レッド……なんか景雲さんワクワクするよ」

私は何故か楽しかった

レッドなんて言葉を使うのがたまらなく楽しかった

子供っぽいかな……アイツは受け入れてくれるかな?

「さてさて、可愛い可愛い私の後輩を探しますかね」

よっこいしょって言いながら、おっさんみたいだなと思いながら立ち上がると

ポケットから何かが落ちた。


正方形の厚紙、そこには光の三原色が描かれてる

こんなの持って来てたっけ?

装備と手帳を確認してみると


「ナニカが発生して人の視界を変える、ねぇ」

そのナニカを見分ける為の道具なのかもしれない

確証は無いけど、私は無駄な物は持ち歩かないからね。

「こんな綺麗な厚紙……私どこで買ったんだろ?」

アイツからのプレゼントかな?

とか考えたり、元々装備品だったのだろうか

なんて思いながら教会の周りをウロウロする。


「あっ」

教会の左、少し行った所に赤色の小屋がある。

屋根壁ドアすべて赤色で塗られたソレは

窓もなく中身がわからない作りで

明らかに「入るな」って言葉を四方八方に投げかけてる。


普通の女の子だったら入ろうとしないだろうね

「調査、しないとね」 

薬針の銃しかないけど意識は奪えるし

民間人相手だからこれで十分。


ロックは解除されてる?いや……

よく見ると何かでこじ開けた跡がある

そのおかげで簡単に入れそう、先駆者様に感謝だね

「こちらレッド、怪しい小屋を見つけたので調査に入る」

かっこいいな!私!

「ブルー了解です、20分後に連絡します」

あいつもノリノリじゃん!」

ドアを開けると地下へ進む階段が、いや階段しかない

持ってきたフラッシュライトを点けて階段を降りる


昔こんな暗い階段を下るお化け屋敷あったなぁって事を思い出しながら、足元注意して進む。

「こんなので怖がってたらこの仕事やってないっての」

私もキャーとか言ってみたいよ

下から声?のような物が聞える

音は聞えるけど中身は理解できない

降りるほど大きく、話が聞こえてくる。


「死ね!裏切り者が!感覚の神の裁きを!」

下に降りきった時、姫川と見た事のない武器が彼女に向けられていた。

「動くな」


私は武器を持った女に銃を向ける。

「貴女は、神を信じてますよね?」

満面の笑みで左手をこちらに向ける

爪の色が一つ一つ違う……どうなってるんだ?

「あら?貴女この爪に興味が?綺麗でしょう?」


「お前が不審者じゃなかったら女らしい可愛い色合いだねって言ってただろうよ」

ありがとうございますとクスクス笑う女

残念ながら隙がまったくない。


「景雲先輩……」

姫川は何故味方に対してそんな憎悪を孕んだ表情を向けるんだ?

「お前姫川に何をした」

女に銃を突きつけて質問する

答えなかったり動いたら撃つ。


「私は何もしてません。貴女は何かされたのかもしれませんが」

いちいちイライラする笑い方をしやがる

「姫川、説明してあげたら?」


「景雲先輩……」

姫川が近くに来た、私の後ろに隠れように。

「私の腰に予備の銃があるから」

そう言うと腰が軽くなって、後輩が銃を装備したのがわかった。


「さあ、これで2対1じゃん?諦めろ」

2人で出口も塞いでるし、圧倒的に有利だ

「景雲先輩……貴女も先輩の大切な人。だから私が救ってみせます。」


高い高い金属音がした。

私が大嫌いな音に近い音。

さらに私の背中が痛い。

私が嫌いな状況だ。

わかりきってるけど認めたくない

後ろを見れば犯人がわかる。

目も表情も殺して私を撃った彼女は

何かを話していた。


ダメ……意識が引きずりこまれる。

何故……?姫川……

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