視界編6:色


教会のイメージって言えば

大きい、十字架、シスターさん。

これぐらいしか浮かばなかったけど結構合ってた

入口近くにシスターさんが倒れてた

変な気起こさなかった俺を褒めたいね。

めちゃくちゃ美人だったので俺が投薬した

後ろから凄い目線がきてる

俺も男なんだ、許してくれ。


空気を変えないと……

「こんな田舎にこんな大きな教会が

 ねぇ」

「田舎だから土地が安いんだよ、多分ね」

笑いながら景雲さんは私も土地を田舎に持ってるからと話す

「先輩」

「ん?」

後ろにいた姫川がまたあの目をしながら

「この村の他の住人が残されてないか見てきます」

って言ってるけど……何でそんな目をするんだ。


「村人はここに集まってるらしいけど、一応頼むよ姫川ちゃん」

似合わないウインクをして景雲さんが許可を出した

「いってきます、先輩」

俺に挨拶をして村の中心部に向かって歩いていった


「やっぱ何かしたでしょ、姫川に」

「心当たりはあるよ、後で謝っとくから」

この人大体笑ってるけど人とのコミュニケーション下手くそなんじゃなかろうか


教会は3階建てで、3階に村人がいるらしい

小さな村だから100人弱も収容できるここは避難先や集合先には最適なんだと思う。


「治療薬を持ってこられた役人さんですかな」

教会特有の長椅子に寝転んでいて見えなかった老人がかすれた声をかけてきた。


「はい、その服装は……神父さんで間違いないですか?」

白色で包まれた神父服は、いかにもな感じ


「ええ、ワシは神父。」

「治療薬を持ってきました、これから皆さんを助けますので……」

俺が神父に近づいたその瞬間

「まてッ!!」

景雲さんから大声が聞こえた

一瞬体が固まったが言葉を理解して神父から少し距離を取る。


「あれ、ワシは何かした?」

キョトンとした顔で俺と景雲さんの顔を見る神父


顔を……見る?

「お前、何故目が見える」

ウチの失明剤の効果がない人間がいたのか?

それはない、失明率100%と岡部さんが言ってたし……


「まあ、ワシを神が守って下さった。」

真顔でそんな事言えるのは信仰心の高さからなのか?

「おかしいね、ウチの失明剤は人間を見つけたら吸い付くようになってるから、大気に触れてる以上絶対感染するハズなんだけど?」


「ついでに私は神を信じちゃいない、神なんてクソの3神衆を私は信じてあげるつもりもない。」

「ほう、ワシら信徒をバカにするか。神の護りは偉大である。」

俺は銃を老人に構える

「お前、何故効果がないんだ?名前は?他の住人もお前と同じなのか?」


「んん、ワシはグリーン。」


「グリーン……?」

変わった名前だけど……

「ほら、ワシの緑の目から名前がきとる」

「名前はわかった、他の質問に答えろ」

「まあ、ワシとこの村は安心じゃ」

コインを弾くような、コインを落とすような発泡音が聞こえた。


「景雲……さん?」

横からグリーン神父に発砲した彼女は

「どのみち景雲さん達の話聞かれたんじゃ撃つし別にいいでしょ。」

血の流れてない言葉が流れる。


「まだ話は聞けたはずです。」

「お前さ、まだ気付かないの?」

低く、恐怖って言葉が似合うのような声で

動けなくなる、味方だってわかってるのに。

怖い、怖い、怖い。

「この建物から足音も話し声もしない、100人も村人がいるのに、こんなパニックになる事が起きてるのに何で人の気配がしないの?」

100人の中には子供もいるはずでこんな静かなのはありえない……確かに 


グリーン神父の持ち物を探りながら彼女は

「そもそもさ」

「緑?って何?目の色?黒と白でしょ普通。」

「そんな目の色が緑だからグリーンなんて意味不明な人信用出来ない。」



「グリーンさんの目は確かに緑でした、確かにふざけてるとは思いますがいきな……」


神父から何かを拾い上げポケットに素早く入れ

言い終える前に彼女は俺に銃を向ける


「景雲さんとお前は付き合い長いつもりなんだわ。そこで長い付き合いのよしみで教えてほしいんだけどさ」

「緑って何?緑だからグリーンって何?目はわかる。色が緑って何?グリーンって何?」

俺には意味がわからなかった。


彼女は緑がわからない。


彼女は緑色がわからない。


そんな事あるのか?

「緑は緑ですよ!赤青緑の緑!野菜は大体緑じゃないですか!景雲さんのバックも緑色じゃないですか!どうしたんですか!緑色をグリーンって言うんです!しっかりして下さい!」


声に力を込めて、言葉にフィルターを通さずにそのまま彼女にぶつけた。

「お前、景雲さんが好きだからってそんな意味不明なジョークで気を引こうとするのはどうかと思うよ?」

冗談を言う顔じゃない……よな



「本気で言ってますか……?」

「景雲さんが好きなほうれん草のソテー、アレは何色だったかわかりますか?」

彼女はハァ?って顔をした後に

「ほうれん草なんだから、緑色に決まってんだろ!バカにすんのも……」

…………


「……あれ?景雲さんはお前に何を聞いてたんだっけ?」

 

俺は何故彼女に向かって色々言ってたのか思い出せない。

何を話していたのかもわからない。

覚えているけど、思い出せない。

でもそれほど大した話してないだろ


「俺も何言ってたか覚えてないんですけど……」

景雲さんの好き料理の話じゃないですか?と言ってみる

「まあ会話としては、噛み合ってそうだな。しっかしよく覚えてたな〜景雲さんの大好物をさ!」


「でもでも景雲さん男性からの人気あるし倍率高いからさ、お前みたいにジャブでポイント稼ぐぐらいじゃちょ〜っと厳しいかもよ?」

ニヤニヤしながら銃をしまう景雲さん。

それを見て聞いて俺も肩の力が抜けた。


えっと……ここで何するんだっけ?

「ここの住民を探す、失明剤が間違って散布されたからその治療をする。この2つをやるんだってさ」

景雲さんは手帳を見ながら任務の確認をする。

「ウチの組織も人を守るはずが人を失明させるとは落ちたもんだねぇ〜」

と笑ってる。


笑えないけど、確かにお粗末すぎて笑える。

「さ、景雲さんも準備して下さいね、俺はこの神父を長椅子に寝かせときます。」

景雲さんは荷物を持ち、俺はグリーン神父を寝かせ、教会を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る