視界編5:作戦開始

クーパーと上の連中が決めたこの失明作戦

A55作戦が開始された。

大規模なヘリから化学物質を散布する

農薬と同じやり方だけど対象が畑から人里に変わってる。



俺達は支部地下で散布が終わるまで待ってる所だ、他の支部から来た職員も一部ここで待機してる

北海道からきてる職員もいる。お土産旨かった

今回は特別な装備が支給されている

針を撃ち込む銃と言う変わった物だ。

撃ち込むのは溶ける針、針の中に記憶消去剤が入ってる

一人一人に丁寧にする時間はないって理由だけど

民間人を失明させておまけに銃を突きつける。


俺と姫川は反発したけど

「救えなくてもいいのか?」って同僚の言葉を聞いて装備に加えた。

これは救う為、救う為なんだって姫川がブツブツ言ってたけど……

わかるよ、わかるけど頑張ろう。

「私達の組織って何でしたっけ?」

……言うな。


「あと一時間で散布が終わります。化学物質の効果は切れてるはずですが一応マスクも付けて下さい。」

針を装填した銃、防塵マスクを持った人が大挙して街に乗りだす。

ヤクザよりヤクザだな。

「はい、みなさん注目して下さい」

クーパーさんの呼びかけで彼女とモニターに注目が集まる


彼女の綺麗な声が響きわたる

周りから可愛いだの好みだの聞こえてくる

絶対渡さんぞ、俺の上司だぞ

作戦の内容が話されるが凄く簡単だ

班に別れてのローラー作戦。これが全て

後は人を見つけて撃つ、それだけ。

簡単に言うけど簡単じゃない

人を撃つのは初めてじゃないし殺す訳じゃないって分かってても、やっぱりキツイ


「さあ用意できたか、姫川」

不機嫌で不満そうな顔を見ると

「悲しいけど万端です」

苦笑いか愛想笑い、どっちかわからないけど

普段と違う笑顔が見える。

それから重い空気を押しのけて

車まで向かう

いつもみたいに運転は俺、助手席には姫川

後ろには大量の針が入ったマガジン。

俺達はこれから人を撃つ


そのために移動する


「不可思議を確保せんとな、絶対に」

自分に言い聞かせるような姫川に聞かせるような

多分前者の割合が多いだろう言葉を放つ。

不可思議の確保

この言葉に反応して頷く。

何十万人の職員も確保を目指してる

俺達の独りよがりの正義が始まる。



街に着いた時

阿鼻叫喚って言葉が似合うような

昔見た地獄草紙の一部のような

ここまで来ると笑ってしまいそうになる悲惨な世界が広がっていた。


「ははは…」

泣くか笑うか、俺は笑った

「よく来たな!」

ぼーっとしていた俺のそばに

頼れる、そして心強い人がやって来た


「景雲さん!こっち来てたんですか」

景雲は俺の先輩で、お世話になった人だ。

他にも色々と関東にいた時任務を一緒にこなしてきた。

射撃は特に得意でどこかの支部で射撃の教官をしていると聞いてたけど


彼女に関する情報は俺やクーパーさんでは見られなくなってたから、どこにいるか分からなかったから再会はとても嬉しい。

「そりゃこんな大規模な作戦なんだし呼ばれるっしょ、特にお前みたいなのがいる地区にはエリート景雲さんが来ないとね」

変わらない人で少しホッとした。

「はじめまして、姫川と申します。」


後ろにいた姫川が挨拶してる、そっか初対面か

「やあやあよろしく、可愛い後輩ちゃん」

ニコニコした景雲さんと…

何故か目の奥に光ではなく、怖い何かを光らせた姫川がいる

吸い込まれそうな、見ているとおかしくなりそうな目をしてる。こわい。

「可愛いね~姫川ちゃん景雲さんより可愛い!」

「どうもありがとうございます。可愛いってよく言われますよ」

…………

女同士の中身のない会話みたいだし今のうちにトランクから装備を出しておくか。

「ほら姫川、持ってきてやった……ぞ」

何やら空気が悪い

二人とも目が全然笑ってない。

「景雲さん、なにやらかしたんですか?」


なんで景雲さんを疑うんだよ!って言ってるけど

絶対何かあっただろ

そして姫川がなんかやらかす訳ないし。

「何でもありませんよ、装備持ってきてくれてありがとうございます。流石私の先輩です。」

銃を受け取り引っ付いてくる

普段こんなことしないのに。

「普段しないような事すんなし、普段通りにすりゃできるんやから、普段通りやろにさ」

景雲さんが何故か爆笑してる


腕に引っ付いてる姫川は表情が動いてない

目はあの目のまま。

「あ~笑った笑った」

景雲さんが涙を拭いて

「さて、仕事の話ね」

俺達は国から目の治療の為派遣されてきた公務員で治療薬を持って来たと言う事になっているらしい。

そして俺達3人は街を見回る

そして意識のある人を見つけたら治療をする

暴れたり、非協力的な場合は射撃で治療をする。

と言う事になっている

「私達が行く街は何処ですか?」

姫川が表情をいつもの笑顔に戻して聴く




「神白村に行く。」

聞かされた時、横にいた彼女は何故か笑顔が変わった気がした。

作り笑いなんだけど、何かを押し殺したような笑顔。

それを俺は可愛いと思ってしまった

聞いたことない村だけど、多分小さな集落みたいなもんだろう。

そのまま回るルートや薬の数の確認をして話は終わった。


「景雲さんは向こうのテントに装備あるから取ってくるわ~」

そう言って地獄の中のテントに向かっていく

「なあ姫川お前知ってん?神白村」

三秒ぐらいしてから

「姫川ちゃんは頭いいからどんなマイナー地域でも知ってますですよ。」

へえ、どんな所?って聞いた瞬間

「知らなくていい事です。ただの小さな村です」

と冷たい声で答えた。

それ以上質問できなかった。




「姫川っち知ってるの?神白村について」

景雲さんが戻ってきて質問してる

手にはガチャガチャと沢山の薬を持っている

「いいえ。この場にいる人の中で一番賢い姫川ちゃんですけど知りません」

ふーん、知らないのかと言ってる彼女と

何故嘘をつくのかわからない俺は地図を持って村に向かって歩きだした。

それを追いかけるように姫川も来る。



道中に景雲さんが武勇伝を語ってくれた

周りから聞こえてくる叫び声や泣き声を聞きたくないから一生懸命に話を聞いた

山道に入って少しすると古い看板を見つけた。

神白村です、と書いてある

看板に"です"は新しいな。

何故、景雲さんと姫川は看板を見てそんな難しい顔をしているんだ?

「で、この村のどこから行きますか?」


後ろから顔を出した姫川が銃を取り出しながら質問する

「この町の真ん中にでっかい教会があるんだけどそこに住民が集まってるって話だからまずはそこかな」

困った人とかを助ける教会って現実にもあるんだ。

映画とかゲームの中でしか見た事なかったから少し感動した。

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