視界編3:投薬

今わかっている事。

"カメラとして正しい使い方をした55から出来る写真を見る事で視界変化が起こる。"と言うこと。


そして"変わってしまった視界の内容について人に数分以上話すと感染してしまう"

この内容について話す事の定義は定まっていない。


「にしても先輩、不可思議の影響とは言え私を化け物扱いとかひどくないですか!?」

桑名についた時、そういえばと一言発して姫川が騒ぎ始める。

「こんな可愛い姫川ちゃんが化け物に見えるなんて、どんな効果があったんですかね。」

俺も知りたいわ


「まぁ…姫川お前見た目だけはレベル高いもんな」

確かに気になる。俺がそんなに取り乱すほどの何かがあったんだろうし……


「へ?い、今何て?」

もしあのまま薬がなかったとしたら……

いや、そう考えると桑名の感染者は……その地獄のような視界の中で今も生きているのか?


「話きけぇ!!」

後ろからバッグが飛んできた。


「痛い!めちゃんこ痛い!」

頭はダメだろ頭は。


「なぁ姫川ちゃん、元気だそ?」

姫川は顔を白黒させて騒いだり静かになったりしている。

いきなり不機嫌に……女はわからん。


不機嫌な姫川と気まずい空気を味わいながら目的地に着いた。

公民館。

ここに視界変化にあった民間人が数人いると報告を受けた。

「姫川、忘れるなよ」


クーパーさんに言われた事を思い出しながら

自分にも言い聞かせる用に繰り返す。

「感染者の話を聞くな、いくら可哀想でも俺達まで話から感染してやる必要はないで。」

姫川は優しい所がある、その優しさは弱味になる。

可哀想でも感染者本人と会話する事はできない。


「心配してくれてるんですか?」

ニヤニヤしながら答える姫川


「私だって自分の身ぐらい守ります。同情して一緒になってあげても意味ないって知ってますから。」

満面の笑みで答えた。

公民館には子供が二人、その母親が一人、拘束されていた。

この家族を知っている人曰わく

ある日から子供が"常識ではない事"を話し始めた。

その母親もある日から子供同じ事を言い始めた。

との事。


一応公民館にいた他の人にも対して記憶消去剤を投与する。

「先輩、ちょっとおかしくないですか?」

姫川が何かを気づいたようだ。

「この病気に感染したらら視界がおかしくなる。それはわかってます」

ですけど……と続く

「視界変化の度合いには個人差があると思ってましたが、この親子は同じ事を言い出したんですよね?」

確かに……

見えている物が変わる、その変わった後は同じ。

もしかしたら

今の視界を視界A、感染すると視界Bになる。

みたいな変化があるのかもしれない。


少し考えてた後、俺達は記憶消去を行うべく親子がいる部屋に行き、投薬した。


最後にこの親子の近所の住人から話を聞くため、姫川が聞き取りをする事となった。

今は別室で話をしている。

念の為二人分の薬を用意しておく


「先輩……残念なお知らせがあります。」


「まて、この手袋がどう見える?」

感染したかもしれない、確認をする


「大丈夫です、綺麗な白に見えます。」

俺は薬をしまって話を聞くことにした。

すまんかった確認や、と謝り話を促す。


「それよりも、多分、災害がおこってます。」

なんだ?あの姫川がこんなに真剣な表情

「あの母親は教師をしています。学校で視界について話をした可能性が高いです。」


な…


俺は言葉を失った。

これは……確かに災害だ。

あの母親から学校の生徒に

生徒からその親に、親から職場の同僚、そしてその家族に…

頭が真っ白になりそうで、意識が持っていかれそうな酷い、酷すぎる頭痛がした。


しかし疑問がある

「しかし妙ちゃう?俺や姫川が感染した時にはあんなにパニックになってたのに……」

あれだけパニックになればちょっとした事件になるだろう、しかもこれだけの規模となると……

「個人差があるんですかね……」

この病気の謎は深そうだ。


「姫川、車に戻るぞ」

ここにいては感染する可能性が高い、誰が感染しているのかわからない。

公民館最後の一人に投薬し、車に戻ってきた。

「クーパーさん、姫川です」

無線で連絡する。


「こんにちは姫川さん」


ああ、声も美しい。


「実はとんでもない事が起こってます……」

そこからあったことを報告する。

仮説の事も含めて。


感染拡大、この言葉でクーパーさんの声色が変わった。

「今回の不可思議を封じ込める事は難しそうね」


素直な気持ちに素直に答える。

「どうしたらいいのかわかりません…」

姫川もクーパーさんも暗い。

「だからと言って!このまま野放しには出来ないの!私達の世界を変える訳にはいかない!」


きっと真剣、だけど怒りや憎悪の気持ちも混じったような表情で言ってるんだろう。


「それは俺達もわかっています。ですが……どうしたら……」

今この瞬間も感染は広がってるだろう。

これから感染者を一人一人対処するのは不可能に近い


「一番怖いのは感染者が多くなって、"常識じゃない事を言ってる、狂ってる!"って報告が上がらなくなる事よ。」

仮説では感染者は視界がBに変わる、非感染者の視界Aとは違う。

だけどこの感染者が多過ぎて、"Bこそが正しく、Aは狂ってる"なんて言われた日には終わりだ。


そんな終わりを迎える訳にはいかない。

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