第32話 女子はパフェを食べがち

変態冒険者たちの見物を終えて、昼間はショッピングをした。


珍しい食材から魔道具、武器から素材に至るまで何でもかんでもを買った。


ニーナは貴重な収納バックを持っており、荷物を持つこともなく楽に買い物を続けた。


ヴィナトが作った魔道具らしいが、どうやったらあんなバックを創れるのだろうか。


「グラルバニア王国に来たのならなんと言ってもスイーツじゃ!パフェなるものが最近流行っておるらしいぞ!ニーナ」

「なんですかその可愛い響き!是非食べましょ!」


ノリノリだな。

僕らは何をしに来たんだったのか……

しかしふたりの勢いは止まらず、僕らは喫茶店に入っていった。


席について思い思いのメニューを注文する女性陣ふたり。


「クロム様は甘い物はお好きではありませんでしたか?」

「いや、腹が減ってなくてな。コーヒーだけでいい」


数分後、テーブルには手を置く場所もない程に置かれたスイーツが並んだ。

テーブルの木目はどこに……


ひたすら食べ続けるヴィナトとニーナをよそ目に僕はコーヒーを啜る。


不意に店に入ってきた客と目が合った。


アスミナだった。

ローブを着てアスミナだと気付かれないようにしていた。


顔を変えているから僕だと気づ……かれてるな、あれ。

ヴィナトも姿は変わってるが雰囲気まで誤魔化せてない……


僕は一瞬でアスミナの捕まえて脅すように呟いた。


「……ここで暴れられなくなかったらこっちに来い……」


アスミナは息を飲んで頷いた。

そのまま座っていた僕の隣の奥の席に押し込んだ。


「クロムがナンパ……ではないのぅ」

「クロム様、そちらの方はどなたですか?」


(勇者パーティーの結界の聖女、アスミナだ)

(ああ……そういうことですか)


ニーナに念話で簡単な説明だけ済ませた。


「なぜお前がここにいる?」

「……そ、それは私のセリフ、です……」

「お前ひとりか?」

「……はい」


暗い顔をしているアスミナ。

半殺しにされて回復して数日でなぜ街をフラフラしている?


「まあクロムよ、落ち着こうではないか。たくさんスイーツもあるしのぅ。ほれ、お主も食べるかの?というか食べに来たのであろう?」


アスミナは恐る恐るヴィナトを見た。

酷く怯えているが、ヴィナトはにこやかに話しかけている。


「さしずめ勇者パーティーの陰険な空気に耐えきれずにふらっと出てきたのであろうて」

「……はい。クロムさんにやられて以降、荒れておりまして……」

「逃げてきて気分転換にスイーツ、ね」

「それにしてもお主、なぜわかった?妾も一応姿は変えておるし、クロムの顔とて変えてあるというのに?」


ニーナはパフェを食べながらじーっとアスミナを見ている。


「……それは、だって……」

「ヴィナト様、この者もクロム様に惚れているのでしょう?であれば多少の変身くらいでは意味はないでしょう」

「え!あ!その……はぃ……目が合って、直感的に……」

「とりあえず、バレたから殺すか」

「まあクロム、まだよい」

「ヴィナトの気分の話じゃない。僕の復讐心的な話だ」

「クロムよ、今のお前さんの実力なら何時でも殺せるじゃろ?こやつは使えそうじゃ。なにか言いたい事もありそうじゃしのぅ」


ヴィナトは口に付いたクリームを舐め取りながらニヤついていた。


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