第16話 ヴィナトの専属メイド
目が覚めると、知らない天井だった。
いや、サタンの城の一室か……
前と違うのはヴィナトが馬乗りになっていない事。
「……すぅ……すぅ……すぅ」
横を見ると、ヴィナトが居た。
白くてきめ細やかな肩がむき出しで露出しており、寝顔は年相応というか、少女らしい可愛い寝顔だった。
「……僕が気絶してた間に何があったんだ?」
ぼーっとしながら天井を見つめた。
ああ、そうか。
アスミナの血を吸ってから魔力暴走状態になってそのままか。
「そこまでは覚えてるが……」
なんでヴィナトが僕の隣で全裸もしくは半裸で寝てるんだよ……
意味がわからん。
てか僕も全裸じゃないか……
ほんとに何があった?!
「……とりあえず服を着よう」
起き出してテーブルに置いてあった真新しい男性ものの服を着た。
サイズはなぜかぴったりだが、気にしないでおこう。
ヴィナトはまだぐっすりと眠っているし、城の誰かに話を聞いてみようと、僕は部屋を出た。
「クロム様、おはようございます。お目覚めになって良かったです」
「ああ、おはよう」
部屋の前には女性メイドが控えていた。
「……君、人間?」
見た目はまるで人間のメイド。
匂いもヒトだが。
「はい。人間でございます。私、ヴィナト様にお仕えしております、ニーナと申します。クロム様のお世話もさせて頂く事になりました。よろしくお願い致します」
黒く長い髪に琥珀色の瞳、顔は小さくて幼さを残すあどけなさのある顔だ。
背丈はヴィナトより少し高いくらい。
歳は14〜5歳くらいか。
左手の中指に紫色の宝石の嵌っている指輪をしている。
サキュバスのメイドたちとは違う紫を基調としたメイド服が違和感なく似合っている。
「なぜ人間がここにいる?というか平気なのか?」
僕が魔界に来た時のあの瘴気は酷いものだった。
精神を病む瘴気は魔界には満ちている。
加えて太陽もない。
おおよそ人間が住める環境じゃない。
「ヴィナト様曰く、特殊な体質なのだそうです。精神系を護る加護を授かっているらしく、魔界でも問題なく過ごせております」
勇者のアルトなんかは様々な加護を授かっている。
聖騎士ルークやルエナ、アスミナも加護を授かっていると聞いたが、僕は知らない。
「私はヴィナト様に山賊に襲われそうになっていた所を助けて頂いたのが御縁でして、以来ヴィナト様にお仕えさせて頂く事になりました」
ヴィナトも元は人間、なにか感じるものでもあって助けたのだろうか。
そういえばなんでヴィナトは僕を眷属にしようなんて出会い頭に思ったのだろうか。
今度聞いてみるとするか。
「そうか。ニーナ、サタンと話がしたい。取り次いでくれないか?ヴィナトから話を聞けたらよかったんだが、今はぐっすり寝ててな」
「かしこまりました」
ニーナは左手の指輪を顔に近づけて手を握った。
念話だろうか?
「サタン様は玉座の間にいらっしゃるので、ご案内致します」
「ああ、頼む」
僕はニーナに着いて行った。
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