第17話 ヴィナトとサタン
「クロムよ、体調は良さそうだな」
「サタンも、ぴんぴんしてるじゃないか」
サタンと殺す気で戦っていた。
しかしこうして普通に玉座にでっぷり座っている様を見ていると、何事も無かったかのような姿だ。
「死にかけたがな。最後に死にかけたのはヴィナトとの特訓以降だったが、100年ほど前だったか……」
魔王サタンの遠い目って中々見る機会はないだろう。
ある意味レアな魔王様を拝んだな。
というか、特訓ってどういうこと?
ヴィナトってサタンより強いのか?
「ヴィナトはまだ寝ておるのか?」
「ああ、なぜか僕の横に半裸でな」
「クロム様、ヴィナト様は一糸まとわぬお姿でクロム様のお隣に寄り添っておられましたわ」
なぜニコニコしながらそんな事を報告するのだろうか……
「まあ良いではないか、クロムよ。お主の魔力を吸い出すのにヴィナトも少し苦労したのだろう。服のひとつやふたつは気にするな」
「大事なのは服の有無じゃないんだがな……」
それはまあいいか。
「それにしても、ヴィナトはそんな事もできるのか」
「吸血鬼とは血を吸うだけではないからな。血を吸うのは生きるためであるし、自身の再生能力や生命力を得る為に必要な事。魔力単体を吸い出す事も出来なくはない」
ドレイン系の魔法はサキュバスやアンデットも使えるし、吸血鬼も出来るのだろう。
「その後の勇者たちの情報はなにかあるか?」
「とくにめぼしい情報はないな。死んだという報告もないしな。既にグラルバニア王国に戻っておるのだろう。王国の結界がある以上魔族は潜伏できんから、情報は不足しておるが」
グラルバニア王国は王国全土を囲む巨大な結界によって守られている。
魔族の類いは侵入する事ができない。
だからこっそり忍び込んで情報収集をしたり、王国壊滅の手引きをするのが困難なのだろう。
「ときおりヴィナトは王国に忍び込んで遊んでおるがな」
「ヴィナトは入れるのか?」
どういう事だ?
元人間だからか?
それなら僕も入れる?
「ヴィナトは元々人間、加えて、ヴィナトはかつて王女の1人であった。それ故に完全な吸血鬼となっても結界に干渉する事ができるのだろう。おそらくだがクロム、お主も半分は人間だ。入れるかもしれんぞ?」
その辺はヴィナトに聞かねば確信はできんがな。とサタンは言った。
「他にも聞きたい事があるかもしれんが、後はヴィナトから聞いた方がよかろう」
ヴィナトには聞かなければいけない事が多いな。
仕方ないか。
「それよりもクロムよ、少し顔色が悪いぞ。ヴィナトに魔力を吸われ過ぎたかもしれん。ニーナ、後でクロムに少し血を吸わせてやれ」
「かしこまりました」
「まだ魔力の暴走が完全に収まった訳ではないかもしれん、暴れるなよ」
「ああ、わかった」
「それではクロム様、行きましょう」
僕はニーナに連れられて玉座の間を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます