第12話 仲間想い
「なんなんだ!あのパワーは?!」
「てかクロムってあんなに速くなかったでしょ?!意味わかんない?!」
リミッター解除無しでもルークを吹き飛ばせるくらいにはパワー負けしてない、か。
十分だな。
「まずは……」
ルエナに狙いを定めてトップスピードで一気に迫る。
火力の強いルエナだが、近距離では無能に等しい。
うっかり自滅してくれると楽だけどね。
なんなら味方を焼いてしまってもいい。
「クロムさん!」
「っち」
僕の狙いに気付いたのかアスミナが結界を展開したか。
しかもびくともしないとは。
なら……
「っうぅ……」
「全力の拳も防ぐか。流石は結界の聖女」
展開速度は僕より遅いが、危機回避能力が速い。
僕の拳が届くより先読みして受け止めた。
リミッター解除すれば結界は簡単に壊せそうだけど、ヴィナトに怒られそうだから止めるとして。
「……アスミナ様ぁ、気を抜くと、みんな殺しちゃうよ?」
「どうしてしまったのですか?!クロムさん!」
アスミナが叫んだ時には僕はもういない。
背後から迫っていたアルトに肉薄し拳を叩き込む。
しかし意味に気付いたのかアルトを守る結界を展開した。
そして次はルーク。ルエナ、アスミナとランダムに次々に拳を奮っていく。
段々とアスミナの展開が間に合わなくなっていく。
「この勇者パーティーはアスミナ様以外役立たずだなぁ」
防御力の高い聖騎士ルークですら耐えられない攻撃。
それを拳ひとつで繰り出す僕にとって、アルトやルエナはもはやただの雑魚だった。
「死ねぇぇ田舎者がぁ!」
「勇者くんはその田舎者より頭が悪いみたいだなぁ」
アルトが放った特大の斬撃波を僕は避けたままアスミナに接近した。
そして斬撃波を射線上には足元のおぼつかないルークがいた。
「しまっ」
「ルークッ!」
アスミナはルークに結界を展開し、同時に自分にも展開した。
ルークを守るように斜めに展開された結界は斬撃波を受けて破壊されるも軌道を逸らした。
同時展開したアスミナは魔力の流れを2つに分けた事によって自身を守る結界の強度が下がった。
そしてそれを僕は狙っていた。
「うっ!」
アスミナの腹に蹴りが見事に入り、アスミナは壁にめり込んだ。
「「「アスミナ様」」」
砂埃が舞い、アスミナの魔力が極端に減ったの確認した。
「アルト、ルーク、ルエナ。お前たちがザコなせいで愛しのアスミナ様が死ぬぞ?」
アスミナが僕に対して好意を持っていたかどうかどうでもいい。
アスミナを好きなアルト、そして政略結婚をしたいルーク、パーティーで女同士で仲もよかったルエナ。
こいつの弱さのせいで、憎い田舎者君に想い人、あるいは友人、それを殺される悲しみ。
だが、簡単には殺さないさ。
「お前ら、簡単に死ねるなんて幸せは絶対にないと思ってね?」
苦しんで、苦しんで、絶望して死んで欲しい。
幼馴染や家族を殺され、犯され、生きたまま焼かれて死んだ同郷の人達の為に、ちゃんと殺すから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます