第11話 感動の再会

「ここが魔王軍幹部、魔人レナードの城、か?」

「うぬ。……手酷くやられておるのう」


サタンに転移させてもらって来たが、レナードの城はすでにボロボロだった。

気配も近くではしない。


「最上階で戦っておるのぅ」


血の匂いが酷いな。

人間の血なら今の僕にはバターを溶かしたようないい匂いに感じるが、魔物の血の臭いは生臭くて酸っぱい。


肉の焦げた臭いもする。

ルエナの火炎魔法で城の魔物たちは焼き滅ぼされたのだろう。


「階段を上るのは面倒じゃのぅ」


そう言ってヴィナトは左手を最上階に向けて魔力を練り上げ始めた。


「『ルミノ・フレア』」


ヴィナトの左手から圧縮された上級火炎魔法が天井を突き抜けていった。


幅1メートル程の穴ができた。


「クロムよ、行ってくるがよい。妾はこっそり影から観ておるゆえ」

「ああ」


ヴィナトはあくまで加勢はしない。

幹部同士で干渉しない決まりでもあるのかもしれない。

もしくはヴィナトが手を貸す必要がない、か。


まあいい。とりあえず、アイツらへの復讐を始めようか。



☆☆☆



穴を跳躍して着地すると、こっちを凝視されていた。


「……クロム、さん?」

「新手か?もう1匹、いや、その魔力は……」


声を最初に出したのはアスミナだった。

魔人レナードらしき獣人が僕を睨みつけながら考え込んでいる。


「おいおいクロム、何しに来たんだよ?」

「クロム、悪いけど、君を守ってる余裕ないんだけど?てかなんでここにいるの?」

「ク、クロム……」


喧嘩腰のアルトにイラつき気味のルエナ。

ルークはバツの悪そうな感じだな。


「……久しぶりだね」

「ケッ。半月と経たずにお前の顔を見る事になるとはな?」


そうか……まだ半月も経ってないのか。

吸血鬼になってから時間の感覚が少し狂ったのかもしれない。

あまりにも濃い時間だったから、もっと経っているかと思った。


「ルーク」


僕がルークの名前を呼ぶと彼は動揺を見せた。


「いい炎が見れたよ。ありがとう」

「な、なんの事だ?」

「とぼけないでよ?僕の故郷の村を王国兵たちが焼いたじゃないか?」

「クロムさん!どういう事ですか?」

「どうもこうもないよ。僕の故郷の村は見せしめに焼かれて、犯されて、惨殺されたんだよ」


ルークの顔が歪んだ。


「ルーク、君のお父様にはご挨拶に行こうと思ってたんだ。……君たちを殺してから」

「アルト!魔人レナード共々クロムを殺せ!ルエナ!魔法展開しろ!」

「俺に指図するなよルークッ」

「ルーク、後で説明しないさいよっ!」


アルトの聖剣からの斬撃波とルエナの火炎魔法が僕に向かってきた。


「遅いよ」

「ッッぐぁっ!」


聖騎士ルークは反射で盾を構えて攻撃を受け止めた。

だが吹き飛ばされて部屋の壁に激突した。

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