第10話 禁術の影響

目が覚めるとベッドで眠っていた。


「起きたか、クロムよ」

「……ああ」

「身体に異常はないかの?」

「ない。ないけど……」


僕の目の前には知らない天井ではなく、馬乗りになっているヴィナトが見えるのだ。


「ヴィナト、どい……っンヌ」


ヴィナトに頬を掴まれてそのまま強引にキスをされる。


ヴィナトの唇の柔らかい感触と、口の中に入ってくる舌がうねって絡まっていく。

ヴィナトの小さな胸が僕に押し付けるように主張して離さない。


段々と気持ちよくなってくる自分の欲求に負けそうになる。


「……って!なに起き抜けに窒息死させようとしてんだぁ!」


強引にヴィナトの頬を掴み引き離す。

糸を引く互いの唇はまだ物欲しそうに見つめている。


「しょーがないじゃろ!7日も起きずにずっと寝ておる眷属を夜這いもせずに傍におってみよ!好き過ぎておかしくもなるじゃろ?!」

「すでにおかしいだろうが頭が!」


互いに息を切らして罵り合っているが、ヴィナトに関してはただの欲求不満発言でしかない。


「クロム!」


ヴィナトは説教でもし始めそうな勢いで僕を睨みつけた。


「もっかいだけ口づk」

「とりあえず退け!」

「……クロムのいけず。愛をはぐはぐしたいという妾の気持ちを」

「うるさい淫乱吸血鬼、状況を説明しろ。速やかに!的確に!」

「妾がクロムを襲った」

「そこはもういい!サタンや勇者達の動きとかなんかないのか?!」

「妾が欲求不満じゃ」

「そんな報告いらん」


……寝起きだけあって身体がだるい。

リミッター解除の影響もあるだろうな。

戦っている時間自体は長くなかったが、無理し過ぎたのもあるだろう。

王国兵の時より酷い。


「あーー……幹部の城が1つ勇者たちに襲われておるの」

「アイツらが……ヴィナト、そこに行かせてくれ」

「とりあえず食事でもするか、クロムよ」

「駄目なのか?」

「駄目じゃな。禁術の影響が残っておる。いくら回復術師で吸血鬼のお前さんとて禁術の連発は身体がもたん。そもそも禁術じゃぞ?言っておる意味が分かっておるか?」


……なぜ僕は寝起きの患者に窒息接吻をさせた吸血鬼に説教されないといけないんだ。


「リミッター解除は使わない」

「それでも駄目じゃ。それに今行ってどうするんじゃ?復讐を始めるか?」

「ああ。絶好のチャンスじゃないか。仮にも幹部の城ならこっちの庭だ」


城に攻め入っているとすれば勇者パーティーだけ。

王国兵などの足でまといが役に立つはずがない。

必ずパーティーだけで攻めているはずだ。


「……わかったのじゃ。しかし妾も同伴する。危険と判断すればすぐにでも妾はお前さんの復讐を止めるぞ?良いな?」

「……それでいい。今の身体で無理が出来るとも思っていない」


それに、確かめないといけない事もある。

会えばわかると思う。とくにルークには。


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