第13話 復讐に燃える回復術師
「まずはアルト、君からかな」
「ふざけッ」
アルトはセリフを言い終わるまでもなく腹に拳がめり込んだ。
勇者の鎧が簡単に凹み、腹筋がただの肉のように感じられた。
「内臓大丈夫?アルトぉ?」
アルトは口から血を吐き散らかして蹲っている。
そのままアルトの頭を踏んでいるとルエナが火炎魔法を僕目掛けて放ってきた。
レーザーのように細く鋭い超圧縮火炎魔法だ。
「おっと」
僕はアルトの腹を足で引っ掛けて放り投げ、ルエナの火炎魔法を当ててやった。
「アルト!」
「ルエナ、危ないでしょぉ?」
泣き叫ぶルエナ。
罪悪感でいっぱいのようだ。
「アルト……ごめん、なざぃ……わだじぃ……」
ああ……
そうか。ルエナはアルトの事が好きなのか。
そういえば幼馴染って言ってた気がするな。
「アルト、ルエナが泣いてるよ。ほら、起きてよ」
アルトの指を1本逆方向に向かせてみた。
「あああぁぁぁ!……」
「やっと起きた」
ついでにアルトの左足首と右肩も曲げてみた。
悲鳴を上げて気絶してを繰り返している。
すごい方向向いてるよね……
ルエナの動きもそのまま封じておくか。
泣き叫んでるけど。
「いやぁぁぁぁ!いだいぃ……」
両腕を折ると一際うるさく叫んだ。
女の悲鳴は耳に悪いな。
「ふたりともすごい方向に曲がってるな」
「……」
「……鬼畜やろぅ」
ルエナは割と可愛い系の顔をしていると評判だったけど、今や鬼の形相だ。
アルトがまだ死んではいないのになんて酷い顔をしているんだ。
殺したらもっと歪むのだろう。おぞましいな。
「ルーク、伸びてないでアルトたちのケガ治したら?ほら、治癒魔法使えるんでしょ?」
「……う、うぅぅ」
ルークの髪を掴んで引きずってアルト達の傍まで連れていく。
連れていく?犬の散歩?
床で顔が削れてるから、散歩じゃないか。まあいいか。
「せっかく貴族生まれのイケメンさんなのに、酷い顔じゃないかルーク。どうしたの?」
「……あふまめ」
「悪魔って罵るヒマあったら治癒してあげたら?」
ルークは頑張って腕を出してアルトに治癒魔法を掛けている。
しかし、どれだけ掛けても、骨折もルエナの火炎魔法で空いた穴も治らない。
「……クソッ。クソッ。クソッ」
どれだけやっても治らないアルトに焦るルーク。
「治療患者にクソクソ言って治す奴がいるかよっ」
あまりにムカついてルークにも腹を思いっきり殴ってしまった。
「患者にクソクソ言った次には自分の血を吹き付けるのか?」
これだけ見るとアルトすんごい重症じゃん。
いやすでに内臓破裂してるから重症か。
ま、まず吐血した時点で重症だ。うん。分かりやすい。
「まだまだ余興は終わってないよ?寝ないでね」
僕は彼らの目の前に意識が朦朧としているアスミナを引き摺ってきた。
少し服がはだけていて、白く綺麗な首元がいやらしく地肌を晒していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます