第6話 勇者side 王女の想い
勇者一行は魔王軍幹部が1人、魔人レナードの漆黒の城を攻め入っていた。
「やっぱり魔王軍幹部の城の魔物は強いね〜」
「そう言いながらもルエナは魔法の火力は凄まじいな。殲滅しまくってるじゃないか」
「アルトだってさっきからギガントゴーレム相手にバッザバッザ倒しまくってるじゃん」
「ルークとのスイッチが上手くいってるから楽に倒せるってはあるな」
「アルト、俺の分も残しておいてくれよ。アルトばかり楽しそうではないか」
「皆さま、ここは魔王軍幹部の城、気を抜いてはなりませんよ」
結界の聖女アスミナは心配だった。
回復術師のいない勇者パーティー。
アルトさんとルークさんは戦う術のないクロムさんを案じてあえて追い出したと言っていた。
その為にキツく当たったとも言っていた。
「クロムさんがいないのです。致命傷を受けてしまえば助かりません。気を引き締めなければいけません」
「大丈夫だぜアスミナ様、俺もルークもアスミナ様も治癒魔法を使えるんだぜ?」
「そうでございます、アスミナ様。エスティアナ家の支援による物資もありますし」
「そうそう。ルークの鉄壁の防御力もあるし、アスミナ様の結界魔法も凄いんだから〜」
「ですが相手は世界を滅ぼさんとする魔王軍なのです」
確かにバランスがよく、個々の力もかなりのもの。
しかしそれでも、アスミナはクロムがいない事が非常に不安だった。
「それにいざって時はアスミナ様の転移結界で逃げれば何とかなるじゃん。攻撃も防御も治癒もできるパーティーなんだよ?大丈夫だよアスミナ様」
クロムさんは最初、血を見るのも辛そうな人だった。
なにより、仲間が傷付くのを嫌う心の優しい方だった。
商人の街アルニーテを襲ったモンスターパレードでの戦闘では私たち全員に回復魔法を掛け続ける事で戦闘の最前線を維持し続けた。
ポーションを取り出すヒマすらない乱戦で戦えたのはひとえにクロムさんのおかげだった。
そうでなければ1万の魔物の軍勢を私たち勇者パーティーのみでの討伐は出来なかった。
傷はおろか体力すら一瞬で回復させる事のできる魔法に支えられた私たちは結果的に無傷での完全勝利を勝ち取った。
クロムさんは魔力の枯渇寸前で今にも倒れそうな程に一心不乱だった。
「さぁみんな!ついに最上階だ。まずは魔人レナードを倒すぞ!俺たちは最強だって事を知らしめてやるぜ!」
優しくで純粋な少年の悲しげな顔を今でも思い出す。
クロムには死んで欲しくなかった。
だから、アルトさん達の提案を受け入れた。
本当は、私が護ると言いたかった。
だから、これからもみんなを助けてほしいと言いたかった。
この気持ちを言えなかった私は誰よりも臆病だ。
「……クロムさん」
結界の聖女の寂しげな祈りはしかし届かなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます